食の雑誌「dancyu」の元編集長・植野広生さんが求め続ける、ずっと食べ続けたい“日本一ふつうで美味しい”レシピ。

植野さんが紹介するのは「メンチカツ」。足立区・綾瀬にある、毎日豊洲市場から仕入れた旬の魚をお手頃価格で提供する「駅前酒場」を訪れ、なぜか注文する人が続出する人気メニューを紹介。

肉の温度管理から混ぜ方まで、すぐに実践できるメンチカツのコツを学ぶ。

綾瀬駅近くにあるコの字の酒場

「駅前酒場」があるのは、足立区・綾瀬駅。「あまり来たことはないですね。ただ駅前はいろいろな店があって賑やかな感じ」と植野さん。

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JR常磐線と東京メトロ千代田線が乗り入れる綾瀬駅は、都心へのアクセスも良く、駅前には商業施設やスーパー、商店街も充実し、利便性の高い街だ。

駅前から一本路地に入ると「あら、すてきな路地があるじゃない。中華料理からラーメンからちょっと渋い店もあって、住みやすそうな街」と植野さんもご満悦の綾瀬。

午前は豊洲市場、午後は酒場店主

綾瀬駅からガード下をくぐって徒歩1分の場所にある「駅前酒場」は、1977年に開店。

店内はコの字型のカウンター席のみの、昔ながらの大衆酒場。伝統の自家製焼酎ハイボールを片手に、新鮮な魚介を使った料理をつまんで楽しめる店だ。

店を切り盛りするのは、金野昌也さん。

お客さんおすすめのメニューのひとつ
お客さんおすすめのメニューのひとつ

午前中は豊洲市場で働き、掘り出し物の魚介を仕入れ、午後は駅前酒場で腕を奮っている。

お客さんのおすすめは「お刺身系はなんでも美味しい」「きのこのあん温やっこ、あんかけですし温かくて美味しいです」とのこと。駅前で約50年続ける、綾瀬を代表する大衆酒場。

勇気を持ってのれんをくぐって

金野さんの日課は、豊洲市場でその日仕入れた選りすぐりの魚介を店に持ち込んで始まる。

「今日はイワシと赤貝、黒い点々がしっかり残っているのが鮮度の良い証拠」と金野さん。

「イワシはここ(腹)に取り切れない、うろこや硬い骨があるので、ここの部分を切り落とす。それで内臓だけをとりあえず出す」とさばく際のコツを教えてくれた。

綾瀬駅前で約50年続く「駅前酒場」。なじみのない人は、ちゅうちょしてしまいがちな大衆酒場だが「まず、のれんを勇気を持ってくぐってくる。その勇気を持って入ってくれば、きっと居心地の良い場所があるはず」と金野さん。

初めての人も、ひとり飲みも、もちろん大歓迎。マイペースで楽しむ客の中には女性の姿もあった。「多い時は1週間に1回」来るという女性客もいるとのこと。

そしてお酒は焼酎ハイボール。ドライできりっとした味わいが特徴だ。

常連客が作るいい雰囲気の大衆酒場

料理はメニューからお好きなものを選ぶことができる。その日のおすすめを聞くのも一つの手。

そこで常連客に大衆酒場のたしなみを聞いてみた。「とにかくベロベロにならない、適度にたしなんで適度な時間で帰る。待っている人がいたら早めに切り上げて席を回転させる」「一人で飲みたい人には話しかけない。話が合いそうな人とは会話を楽しむ」と常連客は語った。

金野さんは、「うちはそういった良いお客さんに支えられている。“お客さんがお店を作ってくれている”と感じています。若い方も入るには勇気がいるかもしれないけど、そのしびれる空気感を体験して、もっと深みのある大人になって貰えたら」と、大衆酒場の魅力を話した。

本日のお目当て、駅前酒場の「メンチカツ」。 

一口食べた植野さんは「肉のうまみ、玉ねぎの甘み、スパイスがブワーッと広がる」と感動していた。

駅前酒場「メンチカツ」のレシピを紹介する。