能登で復興に向けて前を向く人々を訪ねる特集「能登人を訪ねて」。今回は、さいはての地・珠洲市で、地震の被害や復旧の状況を肌で感じられるツアーを企画した女性を訪ねた。

観光の力で「能登を再起動」

この記事の画像(19枚)

珠洲市宝立町で会う約束をしていたのは、観光の力によって町を再起動しようと奮闘している女性だ。彼女は「ここ2年が勝負」だと話していた。その考えに至るまでに、どんな経験があったのだろうか…。実際に珠洲市で行われている「復興支援ガイドツアー」の集合場所で稲垣アナウンサーを迎えてくれたのはリブート珠洲の宮口智美さんだ。

稲垣アナウンサー:
石川テレビの稲垣です。よろしくお願いします!

リブート珠洲 宮口智美さん:
よろしくお願いします。

宮口さんは、観光の仕事に携わること約20年。珠洲市をはじめ、能登の魅力を伝えてきた。現在は珠洲市内の巡る復興支援ガイドツアーを企画し、案内役も務めている。

「復興支援ガイドツアー」を企画した理由を聞いた。

宮口さん:
能登に行ってもいいのかなって思われている方が本当にたくさんいらっしゃって、ぜひ来ていただくきっかけになればと思って始めました。

ツアーは7月からスタートし、11月13日までに398人が参加。宮口さんはツアー参加者へ向けて、震災発生の様子や現状を紹介している。

復興支援ガイドツアー、その内容は…

復興支援ガイドツアーは珠洲市のシンボル・見附島からスタートする。見附島は島の形が軍艦に似ていることから「軍艦島」と呼ばれる珠洲市のシンボルとも言える名勝で、震災前は人気スポットだった。しかし、元旦の能登半島地震など、ここ数年相次いだ地震で斜面が崩落し、大きく姿を変えた。

宮口さん:
やっぱり、昔からの姿を知っている方は、もうこんなになってしまったと言われます。「元の形はこういう姿でした」というのを写真でお見せしてますね。「島まで近づけたんですよ」ってお話ししています。

稲垣アナウンサー:
本当や、両サイドが崩れて上の木もなくなって…ずっと昔から見てきたシンボル・見附島ですけど、現在の姿をご覧になって改めてどう思います?

宮口さん:
そうですね。形は変わってしまったんですけど、でも「よく、この地震に耐えてくれたな」っていう思いがしてますね。

稲垣アナウンサー:
本当にそうですね。何か、失ったものばっかり探してしまいがちですけど、「残ってる」っていうところの希望があるんですね。

復旧途中の「ありのままの能登」を発信

続いて訪れたのは、宝立町の住宅街。倒壊した家屋が無残な姿をさらしていた。

稲垣アナウンサー:
もう10ヶ月経ったんですよ。街並みがそんなに変わりないように見えるんですけど…

宮口さん:
このあたりはまだ解体が進んでないですね…ツアーでは大谷小中学校の駐輪場へもご案内しています。この駐輪場が仮設の焚き出し場として、8月の末に避難所が閉鎖されるまで使われていました。

稲垣アナウンサー:
ここが命をつなぎ、絆をつなぐ源だったわけですね。

宮口さん:
発災当初、ボランティアの方に「能登に来ないでください」という規制がかかったので、私たちも炊き出しボランティアの方を呼びたかったけど、呼べなかったんですね。ちょっと我慢して作ってたんですけども、1月10日に他の避難所に炊き出しが来たよっていうのをSNSで見て、『私たちも呼んでもいいよね』っていうので、そこから呼びかけるようになって…

宮口さんは、当時の写真と共に、発災時の苦労や被災者の葛藤などを赤裸々に語っていく。

稲垣アナ:
知られざる話がいっぱいあるな…

宮口さん:
6月にモニターツアーをしたんですが、その時「前に進んでいくような、珠洲の未来が見えたような感じがして、すごい良かった」って言われたんです。いま、ツアーの方々に励まされてます。「これだけ能登のことを思ってくれる人たちがおいでるんや…」っていう。

珠洲市飯田町にある道の駅すずなりでは、ツアー客の多くが「買って応援しよう」と能登のお土産を買い求めていた。実は宮口さんは元はここの職員で、元日も道の駅で被災した。しかし、ある思いから3月に退職した。

宮口さん:
復旧が終わってから、「どうぞ珠洲に来てください」と言っても遅いなと私は思ったんですね。いま皆さん注目頂いているうちに、珠洲のことを知ってファンになって頂きたいなという思いで…

稲垣アナウンサー:
その勝負の年って、どれぐらいだと考えていますか。

宮口さん:
この2年のうちに、何とか私は観光につながるような動きをしていきたいですね。2年後から始めていては、もう遅いかなと思っています。

待っているだけでは、忘れられてしまう…。その前に観光の力で珠洲を再起させたいと、宮口さんは志を同じにする仲間と出会い、「Reboot(りぶーと)珠洲」を立ち上げた。Rebootとは『再起動させる』という意味だ。

続いてツアーで訪ねたのは、奥能登国際芸術祭の拠点の場としても知られている「さいはてのキャバレー」だ。この場所は津波の被害にも遭い、解体が決まっている。アーティストと市民、来場者が心を通わせた絆の場でもあった。

最後に、2018年に全国のボーイスカウトが集まるイベント「日本スカウトジャンボリー」が開かれた跡地を訪ねた。そこには、大量の瓦礫…。

宮口さん:
こちらは市内に3カ所ある災害ごみの仮置き場のうちの一つです。9月の豪雨の後にかなりがれきが増えてきてますね。

稲垣アナウンサー:
家や家財を失った皆さんのことを考えると、辛いなとやっぱり思いますね…

珠洲市内に住む宮口さんも、自宅が被災した。

宮口さん:
私も自宅は全壊して夏に更地になりましたので、解体され、ここに運ばれたと思います。置いておく場所がないので、諦めざるを得なかったというものもやっぱりあって、必要最低限のものだけ取り出して、後はもう諦めたっていうのもありましたね…

宮口さんが思い描く再起動後の珠洲

稲垣アナウンサー:
再起動した後の珠洲で宮口さんが望むことってどんなことですか?

宮口さん:
能登に来られる方に珠洲のファンになって頂いて、本当にまた再び皆さんが訪れてくれる街になってくれたらいいなと思っています。

稲垣アナウンサー:
今種をまくためにも、宮口さん達の活動は大切ですよね。

宮口さん:
そう思って少しずつですけれども動いています。

7月に始まった「復興支援ガイドツアー」には、すでに約400人が参加している。今回のコースの他にも、希望に応じてアレンジすることも可能だそうだ。復興までには息の長い支援が必要だ。能登支援ガイドツアーの問い合わせは「リブート珠洲」電話090-2111-1785まで。

(石川テレビ)

石川テレビ
石川テレビ

石川の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。