パラ陸上の1600メートルリレーで世界記録を更新したランナーが愛媛にいる。一気に才能が覚醒した若干二十歳のランナーは、感謝の気持ちを胸に進化を続けている。

選抜チームで世界記録を更新

愛媛のパラアスリート・岡田和輝選手は、10月に東京・国立競技場で行われた全国大会で知的障がいクラス(T20)の日本パラ陸上競技連盟選抜チームの一員として1600メートルリレーに出場し、第二走者として力走した。

パラ陸上・岡田和輝選手(愛アスリートクラブ)
パラ陸上・岡田和輝選手(愛アスリートクラブ)
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愛アスリートクラブ・岡田和輝選手:
自分らもどうなるか分かってなかったので、世界新記録が出た時はやった~!って、みんな嬉しがっていました。

3分22秒05で、国際知的障がい者スポーツ連盟の世界記録を更新!
3分22秒05で、国際知的障がい者スポーツ連盟の世界記録を更新!

走る前からいい雰囲気があり、記録を狙っていたというJPA選抜チームが出したタイムは3分22秒05。国際知的障がい者スポーツ連盟の世界記録を更新した。

“ペース走”が急成長を後押し

社会人3年目、20歳の岡田選手は仕事を終えると、高校生の頃から所属する愛アスリートクラブで練習をしている。大会での走りを見た監督が声をかけたのがきっかけだった。

愛アスリートクラブ・宮崎靖監督が語る「岡田選手の走り」
愛アスリートクラブ・宮崎靖監督が語る「岡田選手の走り」

愛アスリートクラブ・宮崎靖監督:
(今治市立)伯方中の3年生だったのを覚えているんですけど、中学生とは思えないダイナミックな走りがとても印象的で。愛媛にはパラ陸上の選手、特に400メートルを走る選手で彼のような走りをする選手は見たことがなかったので、それが強烈な印象でしたね。

コロナ禍による練習停止やけがなどもあり記録が伸びない時期が長く続いたが、この1年で宮崎監督が「底知れない」と評価している潜在能力が一気に引き出された。2023年、日本パラ陸上競技連盟から育成選手に選ばれ、強化合宿に参加するようになったことも才能を刺激した。

上り調子で迎えた9月のジャパンパラ陸上で、岡田選手は400メートルに出場。予選から調子がよかったという岡田選手が仲間からの大きな声援を受けて出したタイムは49秒95。このクラスの日本記録(50秒02)を更新する新記録だった。

愛アスリートクラブ・岡田和輝選手:
49秒台出す1カ月ぐらい前まで51秒台だったので、急に伸びたなという感じがありました。

この急成長を後押ししたのは、障がいの特性に沿って工夫した練習メニューだった。
400メートルを走るペース配分を感覚でつかむために取り入れたのが、250メートルを基準にして、決められた秒数で走るペース走だ。

愛アスリートクラブ・宮崎靖監督:
彼がやっている400メートルは短距離の中で一番難しい。特にパラの選手はゴールまでの自分の力の出し方がわからない。100メートル、200メートルだとゴールが見えるので感覚で「あそこまで」と練習できるが、400メートルを全力で走ったら最後はバテて走れない。究極の難しさがあるところで、初めて50秒を切ったというのは、すごく価値のあることだと思っています。

「100分の1秒で勝負が決まるのが陸上の魅力」と語る岡田選手。
支えてくれる周りの人への「感謝」の気持ちを胸に、さらに大きな目標を見据えている。

愛アスリートクラブ・岡田和輝選手:
将来の夢は、パラリンピックに出場することです。48秒台、48秒5くらいを目指していきたい。パワー、持久力、経験が大事。パラリンピックまでまだ時間はあるので、たくさん経験を積んでいけたらと思っています。

48秒台は、パラリンピックでメダルが狙える好記録。底知れぬ能力が花開きつつある二十歳の若武者には、世界の舞台がはっきりと見えている。

(テレビ愛媛)

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