28日、安倍総理が辞意を表明したのを受け、ポスト安倍に向けた動きが加速している。小泉進次郎環境相は、長らく「総理にしたい政治家」を、石破茂元幹事長と分け合ってきた。
ポスト安倍に向け小泉氏はどうでるのか?「小泉進次郎 日本の未来をつくる言葉」の著者である、鈴木款解説委員が解説する。
自身の総裁選出馬の可能性は否定
果たしてポスト安倍は誰になるのか。そのカギとなるのは総裁選のやり方だ。
「コロナ禍の中、政治空白をつくらない」のを重視すれば、両院議員総会で総裁を決める。そうすれば議員票が勝敗を大きく左右し、菅官房長官の総裁就任が現実味を帯びることになるだろう。
一方、党員投票を行うことになれば、地方で人気の高い石破氏がポスト安倍に近づく。
党員投票を行うことを強く主張しているのが小泉氏だ。
28日の会見で小泉氏は、自身の総裁選出馬の可能性について訊ねられると、こう答えた。
「総理というのは1人ではできる仕事ではありません。仲間が必要です。そういう仲間が支えてくれなければスタート地点には立てません」

レースのスタート地点に立っていない
これについて記者から、「推薦人が集まらないから出馬できないということか」と再度確認されると、小泉氏はこう返した。
「まず総裁選のルールは20人の推薦ということです。ただ総理になるということは、自分がなりたいという以上に、この人にさせたいという思いが、政治家の仲間、党員、国民の皆さんからあることが大事だと思っています。そういう環境が作られることが、スタート地点に立つということではないでしょうか」
実は今月小泉氏にインタビューした際、筆者は、「総理になるために自身の派閥をつくる気があるのか」を訊ねたところ、小泉氏はこう答えた。
「この人を支えようと思ってくれる仲間がいるかいないかは、政治家として政策をしっかり実現出来るかにとって、死活的に重要なことです。ありがたいのは、様々な活動でいままで一緒に戦ってきた戦友がいます」
「戦友」をたとえ20人集められても、今回は自身が出馬する環境に無いということだろう。
党員投票は政治の信頼回復にプラスになる
そのうえで小泉氏が主張したのは、党員投票を行うことだった。
「次の総裁が誰であっても、全党員に投票の機会があることが一番いいと思います。選ばれる過程を党員だけで無く、国民の皆さんにそのプロセスを共有して頂く。そのことが自民党だけでなくて、政治の信頼回復にプラスになると思います。全党員が(政策の)選択肢を提示されたうえで、選択の機会を示される。全党員が投票をしたということは、誰が次の総裁になっても力となって返ってくると思う」
前述の通り、党員投票となれば、総裁の椅子に近づくのは石破氏だ。小泉氏は前回の総裁選の際、石破氏に投票した。
そこでこの記者会見の最後に筆者は、「党員投票をやれば石破氏が有利になるといわれている中で、党員投票を呼びかけるのは石破氏を支持していると受け止められるが」と聞いた。

「石破さんに有利だから求めている」は誤解
この問いに対して小泉氏は、「まず全党員投票をやることが石破さんに有利だから、私が全党員投票を求めているというのはまったくの誤解です」と否定した上でこう続けた。
「次の総裁を選ぶチャンスが、本来なら党員の皆さんにあるはずなのに、それが仮に行使できないかたちで行われるなら、ますます党員の中の分断が進みます。党員が1つになって次の体制を支える、自分たちの総裁であるという思いが持てなくなれば、誰が選ばれたってプラスにはならないのではないでしょうか」
「党員投票が無ければ党員の分断が進む」
筆者は久々に歯切れの良い小泉節を聞いた気がした。小泉氏はやはり“物言う”ポジションがよく似合う。
幸いにもコロナは、感染者数こそ増えているが何とか抑え込まれている。
いま国民に見えるかたちで総裁を選ぶことは、安倍政権の負の遺産であった政治不信にピリオドを打つ絶好の機会では無いか。
【執筆:フジテレビ 解説委員 鈴木款】