小泉進次郎環境大臣への単独インタビュー後編は、自民党総裁選に向けてその去就に注目が集まる政治家小泉進次郎氏の今後だ。
国会改革や仲間、そしてマスコミや世間のバッシングをどう受け止めているのか。普段聞くことの出来ない小泉進次郎氏の本音トークだ。
【前編】総理候補No.1から一転してバッシング 大臣として父として...小泉進次郎が今を語る
マイボトル持ち込みを議決する国会はおかしい
今回のコロナで、この国の多くの問題が顕在化した。その中で、特に遅れているなと感じたのが国会だ。
ーーこれまで国会改革に取り組んできた小泉大臣から見て、今後国会の改革にどう取り組んでいきたいですか?
小泉氏:
大臣の立場ですから発言しにくいところもありますが、私が党に関わらなくても自民党内ではいま、国会改革に取り組んでいる鈴木隼人議員をはじめ様々な方がいますから。国会は国会のことを決める前提でいうと、衆議院ではマイボトルはいまだにダメだという、全く理解不可能な状況が続いていますが、参議院はその風穴を議運からあけて下さって、マイボトルを持っていく動きが出たわけですよね。
――国会でのマイボトルの議論は、みていて正直ウンザリしました。
小泉氏:
一方で本来だったら持ち込んではいけないタブレットや雑誌を、国会の委員会中に読んだり見たりする議員の姿が散見されると。これだけでマイボトルがいいかどうかという議論が、全く不毛だということがよく分かりますよね。タブレットはなし崩し的に持ち込まれている中、環境も考え自分が飲みたいものを持って行く行為を、議決しなければ認められない国会は本当におかしいと思います。国民が選んだ国会議員を、なぜそんなことまで議決をしなければ行動出来ないようにするのか。これは議員を信頼していないのではなくて、国民を信頼していないということですからね。
国会を変えることが日本を変えることだ
――たしかに議論が幼稚すぎます。
小泉氏:
大臣になってから環境省で「クールビズの期間なんか関係ない。暑いとき寒いとき、何月から何月までといったことまで決めるのではなく、大人なんだから『ネクタイをする、しない』、『何を着る、着ない』は自分で決めていい」といいました。その根底にある想いは、日本の社会はもっと自分のことは自分で決める社会、成熟した社会にしていかなくてはいけないと。周りがこうだからこうしか動けないという社会を、僕は変えていきたいと思っているんです。
――国会にはまだまだ不可解なルールがたくさんありますね。
小泉氏:
コロナで3密を回避しましょうといいながら、3密なのは国会ですよ。
さらにこういう状況下でも、委員会で質問が無いのに、大臣が7時間もずっと座り続けなければいけないこともまだ変わらない。これだけ変わらない国会をどれだけ変えるか、今後僕はどんな立場であっても、全力を尽くしてやってきたいと思います。国会が変わらなければ、デジタル化も本当に進まないし、国会を変えることは日本を変えることだと、多くの方に理解して頂けるんじゃないですかね。
改革マインドをもった仲間達と政治をやっていきたい
――さらに答えづらい質問になりますが、拙著『小泉進次郎 日本の未来をつくる言葉』の中で、小泉大臣が総理になるために必要な最低条件として3つ挙げたんです。その1つが結婚、もう1つが閣僚経験。
小泉氏:
うん(笑)。
――で、もう1つが自分の派閥を持つ、と書いたんですが、そうしたら何とこの1年で既に2つ達成したんです。
小泉氏:
ははは。
――3つめの条件ですが、党に戻ったときに小泉派なのか、どこかの派閥に入るのか。これはどうするつもりですか。
小泉氏:
うん。まあこれは、総理になるかならないは別にして、この人を支えようと思ってくれる仲間がいるかいないかは、政治家として政策をしっかり実現出来るかにとって、死活的に重要なことです。ありがたいのは、様々な活動でいままで一緒に戦ってきた戦友がいます。その戦友と共有しているのは、改革できる、風穴を開けられるところはどこだろうと、常に探しているんですよ。このマインドを持った仲間達とは、どんな立場であれ、改革マインドを持った政治をやっていきたいと思っています。
話すことが無くても一緒にいられる仲間が大事
――仲間、ですか。
小泉氏:
皆が万事不満無く、調整できる範囲しか動かないところは全く興味がありません。この風穴を開ければ、ボーリングのセンターピンを倒すように政策が次々と動き、社会が変わっていく。こういったところを見定めて、戦っていきたいと思いますね。石炭火力発電は、環境大臣としてまさにエネルギー政策のセンターピンだと。そう見据えて徹底的に戦った結果、風穴が空いてエネルギー政策全体が動いた、1つのわかりやすい例だったと思います。今後デジタル化など様々な分野において、こういうところが必要だと思うので、想いを同じくするメンバー達と頑張りたいと思いますね。
――ちなみに「2020年以降の経済社会構想会議(※)」は、まだやっていますね。最近はオンラインでやっていると聞いたのですが。
(※)2018年に小泉氏を中心に発足された私的勉強会。若手議員ら30名程度で構成され、「チーム小泉」とも呼ばれている。
小泉氏:
ああ、ずっとやっていますよ。このコロナの間はリアルで会うのがなかなか難しかったので、メンバーのうち4,5人を1つのグループにして、1日多いときは3、4コマ入れて。30分1グループでそれぞれの近況を聞いて、「あーなるほど。いまこういうことを考えているんだな」と皆で共有していましたね。
――小林史明議員、村井英樹議員や福田達夫議員らがいましたね。
小泉氏:
なんかいいですよ。何も話すことが無くても一緒にいられる、そういう仲間が大事じゃないですか。用件が無ければ会えない相手じゃなくて。うん。それをオンラインでも出来ましたね。
――オンラインだと我々は取材しづらいですけどね(笑)。
小泉氏:
あー、出入りが外から分からないからですか。そういった意味でも政治家にとってオンラインは、今後かなり隠密行動を取るのにもいいですね(笑)。
「そういうモードになると、マスコミは止まらないね」
インタビュー終了後、筆者は小泉氏に「正直ちょっと心配していたんですよ。セクシーとか結構バッシングがありましたからね」と声をかけてみた。
対して小泉氏は、「まあ、そういうモードになると、マスコミは止まらないね」と苦笑した。
振り返れば2009年の初出馬の際、小泉氏には世襲批判が浴びせられた。選挙期間中小泉氏は、「横須賀から出て行け」と罵倒され、足を踏まれ、ペットボトルを投げつけられた。
この時のことに触れると小泉氏は、「いや、(今回は)あの時に似ているなあと思いましたよ。その時はしょうがないと思って、淡々とやっていくしかないと思っていたから。でも面白いのは、人って叩き続けると飽きるんですよ」と答えた。
マスコミや世間の熱しやすく冷めやすい性質を、小泉氏はすでに身を持って知っており、今回のバッシングも冷静に見ているのだ。
別れ際に筆者は「でもいまは勢いが戻ってきた感じですね」と、インタビューで得た印象を率直に伝えた。
「まあ相当叩かれましたからね。でも批判が収まるのを待っていたんじゃなくて、戦い続けていましたよ。次の戦いは、政府の(温室効果ガスの国内削減)目標を引き上げさせる。トライします。まあ見ていてください」
そう語って部屋を出ていった小泉氏の後ろ姿を見ながら、筆者は確信した。
「小泉進次郎は復活し、さらなる高みに向けて発進した」ことを。
【執筆:フジテレビ 解説委員 鈴木款】
【撮影:山田大輔】