2021年に大分県大分市で起きた時速194キロの車による死亡事故の裁判員裁判が、5日大分地裁で始まった。「危険運転致死罪が成立するか」が最大の争点である今回の裁判。初公判のあとに遺族が会見を開き心境を語った。

遺族の会見
遺族の会見
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この事故は2021年2月、大分市大在の県道交差点で市内に住む小柳憲さんが右折しようとしたところ、時速194キロで直進してきた車と衝突し亡くなったものである。
大分地検は車を運転していた当時19歳の男を当初、過失運転致死罪(懲役7年以下)で起訴したが、遺族の署名活動などの後、より刑の重い危険運転致死罪(懲役20年以下)に変更。そして裁判員裁判が行われることになった。

最高速度194キロの事故が過失なわけがない

事故現場(2021年)
事故現場(2021年)

亡くなった小柳憲さんの姉・長文恵さんーー
「長い月日がかかって、この日を迎えた。どのような感じなのか全然分からなくて初めて裁判に臨んでいる。実際、自分が今まで検事から聞いていた以上に知ることもあった。

私たちは本人の遺体を見ているが、損傷の詳細を自分たちの目で確認していない。死亡診断書を見て、どのくらいの衝撃が体にあったのか知るくらいだったが、割と細かく説明があった。例えば、腰の部分から足にかけては、粉砕状態だったと改めて確認した。当時、車の中に残されて搬送されたと思っていたが、あとで車外に放り出されていると知った。

交通事故で腰から下が粉砕されているような事故があるかなと。一瞬の事故でシートベルトがちぎれて、腰から下は粉砕。どれだけ痛かっただろうか。意識があったのか無かったのか、声が出せないだけで、すごく痛かったんじゃないかとか家族は想像する。

そういった弟の状態を改めて知ることが出来た。彼は悔しい、とても痛い思いとか、何も言えずに私たち家族のもとからいなくなった。私が代わりに声をあげていること、あげてきて良かったと思う。あのまま黙っていたら、誰にも苦しみを分かってもらうことなく終わっていたと思う。

体の損傷の原因は高速度以外に何ものでもない。シートベルトがちぎれるような速度って何キロからか。ましてや、飛ばされて路上に叩き付けられるような事故って、何キロの衝撃からそうなるのかと。
私の知る最高速度194キロの事故が過失なわけがない。遺族が感情だけで声をあげているわけではなく、こんなおかしなことがあってはならない。
今後、被害者だけでなく加害者もうまないことを望んで、裁判に臨んでいる。そして弟に少しでも私の思いが通じたらいいなと思う」

被告は私たちの方をまったく見ていない

初公判
初公判

(Q被告に対してどのようなことを思ったか)

「私たちは姿を初めて見た。想像していたわけではないが、普通の青年だった。ただ、この運転さえなければ、私はこの裁判に来ることもなく、私の日常が壊されることも無かったという思いはあった。存在を否定するわけではないが、存在と行為については、きょうは残念に思って姿を見た。謝罪については、誰に謝罪しているのかというのが率直な気持ち」

大分地方裁判所
大分地方裁判所

(Q被告が冒頭、謝罪をしたことについて)

「私たちの方をまったく見ていないので、誰に対して謝罪したのかなというのが率直な意見。言葉の中に、ご遺族と言っていたが、私たちのことを一瞬も見ていないので、謝罪には聞こえなかった」

すごく長い時間だった 今月でこの日々に一段落付くのだろう

(Q車両の写真やドライブレコーダーの映像などもあったが)

「事故当時、夜間だったので、目撃情報もあまり無かったのではないかと思っていた中で、ドライブレコーダーの提供、非常にありがたく思っている。それが証拠として私たちも見ることが出来て、その瞬間は衝撃はあるが、改めてこの事故の大きさ、衝撃は感じるものであった」

(Qようやく裁判が始まったことについて)

「弟が事故に遭った時は、裁判があるとか何も分からない状態。ただ悲しみに暮れ、家族の中でも悲しい話はずっと出来ず、自分の思いはだんだん自分の中に秘めた。
3年半以上経つが、すごく長い時間だった。今月で、この日々に一段落付くのだろうと思っている。不安もあったが安堵する部分もある」

弟は見てくれている

事故で亡くなった小柳憲さん
事故で亡くなった小柳憲さん

「弟が亡くなった一報を聞いた時は、本人の苦しみより私自身の悲しみの方が大きくて、寂しい気持ちだった。それがだんだん、本人はどうだろうと。どこにも発信出来ずにこの世から去ってしまった。きょうの裁判も実際に見ることなんて出来ないがどこかから見ていてほしい。彼の無念というものが必ずある。私が少しでも晴らしていきたい。弟は見てくれていると思う」

15日の裁判で検察は「危険運転致死罪」にあたると懲役12年を求刑。一方、弁護側は「過失運転致死罪で処罰されるべき」と主張。時速194キロの車による死亡事故は「危険運転」か「過失」か。判決は28日に言い渡される。

テレビ大分
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