「危険な運転」をどう処罰するか、その在り方が全国的に議論される中、注目の裁判が大分地裁で始まった。
2021年に大分県大分市で起きた時速194キロの車による死亡事故の裁判員裁判が5日から始まり弁護側は「危険運転致死罪は成立しない」などと争う姿勢を見せた。
遺族「同じような事故の被害者遺族のためにも、勝ち取らなければならないものがある」

5日朝の大分市内。裁判が始まる前に、亡くなった小柳憲さんの姉・長文恵さん遺族が胸の内を明かした。
「とても緊張しているのと不安もあるが、待ちに待った裁判なので意気込んでやってきている。今後、同じような高速度で起きる事故の被害者遺族のためにも、勝ち取らなければならないものがあると思っている」
時速194キロで運転していた男「買ったばかりの外車で何キロ出るか試したかった」
2021年2月、大分市大在の交差点で当時19歳の男が運転する時速194キロの車が右折してきた車と衝突し、車を運転していた小柳憲さん50歳が亡くなった。

捜査関係者によると、男は「買ったばかりの外車で何キロ出るか試したかった」などと話していたという。
大分地検は、男を法定刑が懲役7年以下の過失運転致死罪で起訴。
しかし、その判断に納得が出来なかった遺族は約2万8000人分の署名を集め大分地検に提出。
その後、法定刑が20年以下のより刑の重い危険運転致死罪に起訴内容を変更した。
弁護側は「危険運転致死罪ではなく、過失運転致死罪が成立する」などと争う姿勢

事故から約3年9か月。遺族の思いなどで起訴内容が変更されたこの裁判、初公判には傍聴券を求めて多くの人が並んだ。
法廷に姿を見せた被告の男。
裁判の冒頭、罪について問われた男は「そのようなことについてはよく分かりません」などと述べた。
また「小柳さんとご遺族の皆さんに心より謝罪します」と話していた。
その後、弁護側は「危険運転致死罪ではなく、過失運転致死罪が成立する」などと争う姿勢を見せた。
冒頭陳述で検察側は「現場の県道にはわだちや凹凸があり時速194キロで走行した場合、車体が大きく揺れハンドル操作を誤るおそれがあった。また、県道は右折車両が来ることを想定出来る場所で、時速194キロでの走行は通行を妨害するものだった」などとして危険運転致死罪が成立すると主張。
一方、弁護側は「現場の県道には直進する上で危険が生じるような凹凸や障害物は無く、被告も車線からはみ出ることなくまっすぐに走行出来ていた。また被告に、他の車の通行を妨害する積極的な意思は無かった」などと主張している。
そして危険運転致死罪ではなく過失運転致死罪にあたると主張。
遺族「一瞬の事故で腰から下は粉砕」「うっかり過失なわけない」

一方、初公判を終えた遺族などは会見を開き、事故から今日までの思いなどを述べた。
「長い月日がかかってこの日を迎えたが、どのような感じなのかわからなくて、初めて裁判に臨んでいます」そう話すのは、小柳憲さんの遺族姉・長文恵さんだ。
そして事故そのものについては怒りをにじませながら、次のように語った。
「一瞬の事故でシートベルトがちぎれて車外に放り出されて腰から下は粉砕ですよ。飛ばされて路上にたたきつけられるような事故って何キロの衝撃からそういうことになるんだろうって。最高速度194キロの事故がうっかり過失なわけないんです」
また、法廷で初めて対面した被告人について長さんは…
「私たちの方を全く見ていませんので、誰に対して謝罪しているのかなというそれが率直な意見です。謝罪というふうには私たちには聞こえませんでした」と話した。

全国的にも行方が注目されているこの裁判員裁判。5日を含め6回にわたって審理が行われ11月15日に結審し、28日に判決が言い渡される。
(テレビ大分)