埼玉県越生町、周囲を山に囲まれた静かな街に流れる「橋戸川」の上に、“無断で建てられた建物”が、40年以上、近隣住民を悩ませているといいます。
「めざまし8」の取材スタッフを案内してくれたのは、建物のすぐ近くに仕事場を構える男性。
この記事の画像(16枚)周辺住民:
ここの川は、私らが子供の頃はここに橋があったんですよ。(水害とか)そういうのはないです一切。これができてからですよ、(水害が)始まったのは。
建設会社が所持しているという白い壁の巨大な建物。周辺には無造作に建設資材が積まれています。
近くを流れている川の流れをたどると、建物の前で途切れているようにも見えますが、この“下”に川が流れているといいます。
――建物の下はどうなっているのですか?
周辺住民:
(幅)1.2mくらいかな、ふたつの管になっているんですよ。コンクリート管が2つあるんですけど、右はもうふさいであるんですよ。実質(水が)流れているのは左だけ。
男性によると、40年ほど前に、建設業者が無断で川を埋め立て、その上に建物や資材置き場を作り、今のような状態に。
4mほどあったという川幅は、建物下にある1.2mの管2本になり、しかも、その管の片方はふさがれて機能していないといいます。
これまで、大雨の度に流れてきた土砂や木材で管がつまり、川をせき止め、何度も冠水被害をもたらしてきましたが、2023年7月の大雨では、周辺の地域が広い範囲で冠水。
周辺住民:
ここにせき止められた水が集まって、水かさがあがって、一気にここまで…。
みんな流されてダメになっちゃったから。すべてのものがダメになった。(飼っていた)ニワトリも全部、かわいそうに…死んじゃった。
男性の仕事場も、大きな被害を受け、その被害総額は3000万円以上に及ぶといいます。
周辺住民:
(心配なのは)やっぱり人命ですよね。私含めて近隣の方は、とにかくこれを原状に戻してほしいと、それが最大の願い。
業者「以前の町長から口頭で許可」指導応じず裁判に
本来、河川の所有権は越生町にあり、現状は“不法占有”に当たります。
ではなぜ、40年以上にわたってこのような状況が放置されてきたのでしょうか?
越生町の新井康之町長に話を聞くと…。
埼玉・越生町 新井康之町長:
何回も何回も言ったんですけどもね。(業者側は)「何代か前の町長の許可を得ている」と主張したんですけども、(町側は)許可はしていないし。
普通、河川管理条例の河川占用許可申請書を出して、それに基づいて書面で許可証を出す。そういうことは、全然しておりません。
町側は1982年(昭和57年)からこれまで、直接指導34回、文書でも27回、合計61回にもわたり指導を行ってきましたが、当該の業者は「以前の町長の許可を取っている」と主張し、撤去に応じなかったといいます。
そんな現状を打破すべく、新井町長は2021年の就任後、撤去に向けて本格的に動きだしました。
2023年7月には、業者に対して建物の撤去と土地の明け渡しを求める裁判を起こし、今月6日に、さいたま地裁川越支部は業者に対し、「建物や資材などを撤去し、不法占有している土地を明け渡すよう命じる」判決を言い渡しました。町の「全面勝訴」です。
しかし、近隣住民の不安は拭い去れません。
周辺住民:
これから先(判決に)相手が従って撤去したりするかは、まだ分かりませんでしょ。そこがいま一番心配しているところ。
「めざまし8」は建物の持ち主である業者に取材を試みましたが、事務所の電気は消えており呼び鈴を鳴らしても誰も出てきません。電話もかけてみたものの、つながりませんでした。
近隣住民を苦しめる川の不法占拠は、今回の判決で解消されるのでしょうか?
(「めざまし8」11月14日放送より)