大学と企業、それぞれのメリットにつながる「ネーミングライツ事業」。広島大学では多くの学生が出入りする講義室の入り口や食堂の看板に“企業名”が記されている。命名権にお金を出す企業側のねらいは何なのか?
23の事業者が“命名権”獲得
広島大学の東広島キャンパスで開催された記念のテープカット。
この記事の画像(9枚)東広島市に本社を構えるプラスチックメーカー「ダイキョーニシカワ」と大学側がネーミングライツ契約を締結し、その記念式典が行われた。
大学の講義室の入り口。通常であれば部屋番号のみが表示されるが、今回の命名権の契約で番号だけではなく企業名も一緒に記されている。
広島大学では4年前の2020年から施設を有効活用しようとネーミングライツ事業を進め、今回が23件目。講義室のルームプレートには、広島県内に拠点を置く製鉄会社、地元の機械メーカー、食品トレー容器の製造会社など様々な企業が名を連ねる。
広島大学・矢吹彰広工学部長は「建物の建設から約40年、老朽化が進んでいる。整備していくことが学生の研究や学習意欲につながるということで、そういうものに資金を使っています」と話す。
工学部が人気! 契約の約7割占める
施設の運営や維持のために大学側が始めたネーミングライツ事業。一方で企業側のねらいは何だろうか。
ダイキョーニシカワ・杉山郁男社長は「弊社に興味を持って入社してもらうことが大きなねらい。2025年度の予定人数の採用はできていますが、やはり年々厳しくなっています」と人材確保につなげたい意図がある。
ネーミングライツの取り組みは講義室だけではない。多くの学生が利用する食堂の入り口にも企業の大きな看板が設置されている。
広島大学では、これまでのネーミングライツ契約のうち約7割にあたる16件が工学部での契約。大学と共同研究を進める企業もあり、大学との関係を深めたい考えだ。ダイキョーニシカワ・杉山社長は「大学と一緒に共同研究し、大学で学んだ学生が弊社に入って引き続きもっと幅広い研究をして実現につなげていけたら」と思いを述べた。
大学側はネーミングライツ事業で得た資金の活用法についてまだ検討段階だが、例えば女性エンジニアのニーズが拡大して工学部の女子学生が増えた場合、女性用トイレの整備などに活用できるのではないかと考えている。
一方、企業側は認知度を高めるチャンス。社会情報学が専門の広島大学大学院・匹田篤准教授によると、学生は構内で企業名を目にするだけでなく、講義室を企業名で呼ぶこともあるようで「耳から覚えられるメリットもある」という。その上で「ネーミングライツを通じて産学連携がさらに進み、学生と社会との接点が密になっていくのはいいことだ」と強調した。
(テレビ新広島)