2025年1月9日に告示される山形県知事選まで約2カ月となったが、吉村知事はいまだに出馬を正式に表明していない。吉村知事の出馬は「既定路線」と言われる中、自民・共産などの対応にも注目が集まっている。

知事サイドと自民サイドで対立深まる

現在4期目の吉村美栄子知事は、これまでのところ、7月の豪雨災害への対応が最優先として、“知事選への出馬”については明言を避け続けている。

2021年に行われた山形県知事選の様子
2021年に行われた山形県知事選の様子
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「一歩一歩、状況を見ながら熟慮して判断していきたい」と述べた吉村知事は前回、2021年の知事選で自民の独自候補との一騎打ちを制した。

しかし、その後の県議会では、知事に加えて知事を支持する会派である県政クラブと自民党会派との間で、副知事の人事案やフルーツステーション事業などで対立が深まっていた。

知事が“恩返し”で自民候補を激励

こうした中、注目を集めたのが吉村知事の衆院選での対応だ。

吉村知事は、豪雨災害の対応への“恩返し”として自民3候補の事務所を訪問し、自民党県連の会長でもある遠藤利明氏の事務所では「政権中枢の大物政治家として、県の未来のためにますます力添えをいただきたい。きょうは感謝の気持ち、そして今後とも協力・支援をいただきたいとやってきた」と激励した。

これに対し、遠藤氏は「これまで長く選挙をした中で、こんなに感激を味わったことはない。これまでは距離があったせいか、県政と国政のパイプ役としては不本意なところがあった」と述べ、災害対応に加えて米沢トンネル(仮称)の整備や山形空港の滑走路延長などを挙げ、県と政府の連携が重要と強調した。その上で、「政治はその時に一番いい方を選択することだと思う。しっかり連携を取って進めていきたい」と知事の対応を評価した。

こうした動きは、知事選に向けた自民の出方をけん制する意図があるとみられている。

また、衆院選の選挙期間中に、県政クラブに所属する吉村和武県議が遠藤氏の個人演説会を開くという動きもあった。

県政クラブ・吉村和武県議:
遠藤利明候補の個人演説会。「吉村は間違って来たんじゃないか」と思う方もいるかもしれない。

集まったのは、吉村県議の支援者を中心とした約200人。マイクを握った吉村県議は遠藤氏への支援を呼び掛けるだけでなく、「遠藤先生が(山形新幹線の)1時間台を目指してスケールアップしようとしている。トンネルも“フル規格”に。これは一緒にやらないと進まない。そういう意味では、吉村知事と二人三脚で進んでいかないといけない。(山形空港の)滑走路の2500メートル化もそう。これから県と国が連携していく。これは本当に遠藤先生の力がないとだめだ」と、今後の安定した吉村県政を意識した言葉を並べた。

自民は候補擁立“見送り”に現実味

こうした中、吉村知事サイドでは「出馬は既定路線」として、水面下で調整が進んでいる。

吉村知事を支援する議員からは「大雨災害を大義名分にして自分の選挙で楽な展開にしようとしているのだろう」「表明のタイミングはギリギリまで遅らせるつもりなのではないか」といった声が聞かれた。

現在は、会見を行うか、県議会で表明するかといった出馬表明の方法や表明の時期について話し合いが続けられているという。

一方の自民党サイドでは、「この状況で、自民が独自候補を擁立することはあり得ない」「候補者を出しても吉村知事には勝てない」といった声が上がり、自民党県連も独自候補擁立の“見送り”が現実味を帯びている状況だ。

他方で、これまでの知事選で吉村知事を支援してきた共産党県委員会は、「吉村知事が就任以来掲げる『県民のくらし最優先』という理念が継続されるのかを確認したい」とした上で、「自民の相乗りになるようなら知事選への対応を協議しなければならない」としている。

山形県知事選は、2025年1月9日告示、26日投開票。

(さくらんぼテレビ)

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