山形県産果物の情報発信拠点「フルーツ・ステーション」の賛否で揺れる県議会。史上初となる委員会での「否決」を受け、山形県は新年度予算案を撤回。関連費用を削った修正予算案を再提出し、全会一致で可決された。

新年度予算案を「撤回」

農林水産常任委員会での“異例”の予算案の「否決」から2日。吉村知事が強い意欲を示していた事業であるフルーツ・ステーション実現のため、一時は議会に対する知事の「拒否権発動」もあるかとみられていたが、最終的に選択したのは…。

県議会・森田廣議長:
令和6年度山形県一般会計予算について「撤回したい」旨の申し出があった。撤回について異議ありませんか

吉村知事は予算案の“撤回”を選択、「異議なし」と認められた。

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吉村知事:
この度の予算案は、撤回した当初予算案について「フルーツ・ステーション」ネットワークの創出に向けた調査検討のための経費4,854万4,000円を削除し、改めて提案するものです

吉村知事は、自民党が反発したフルーツ・ステーション関連の予算を削った、修正予算案を議会に再提出。吉村知事が意欲を見せていたフルーツ・ステーション事業は、これでいったん白紙になり、吉村知事は悔しさをにじませた。

吉村知事:
当初予算の否決は“県民の不利益”となる。それだけは回避しなければという思いで修正案を出した

「県民の不利益」発言に反発の声

フルーツ・ステーション事業は、県産の果物の情報発信拠点として寒河江市に中心となる施設を整備し、県内各地につくる拠点とのネットワーク化を図るもの。

もともとの新年度当初予算案には、事業者の公募や、ネットワーク化に向けた調査検討などの費用約4,800万円が盛り込まれていた。

しかしこれに対し、最大会派の自民党がその「効果」や「進め方」を疑問視し、3月13日の農林水産常任委員会で自民党の反対多数で否決された。県議会で予算案が否決されるのは、県政史上初めて。

一方、吉村知事が予算案の「撤回」を表明した本会議に先立って開かれた、議会運営委員会。
この中で、自民党の議員からは、吉村知事が「予算案を撤回する理由」として、「新年度予算案がもし否決されれば“県民の不利益”になる」とコメントしたことについて反発する声が上がった。

自民党・加賀正和県議:
我々は県民に不利益を生じさせないために議論をしてきて、こういう結果(予算案撤回)になっている。知事コメントでこういう言葉を使われると、「議会が後ろ向き」と誤解される

県総務部・松澤勝志総務部長:
決してそのような意図はない。そういった誤解が生じたとすれば、今後考えていきたい

これに対して、吉村知事を支持する会派・県政クラブは、次のように反論した。

県政クラブ・石黒覚議員:
県民の利益のためフルーツ・ステーションを提案した。2年以上かけて大議論を重ねている。結果的にここに至るのは議会のルール。当たり前に受け止めないといけない。このことについて知事に「コメントの言葉を選べ」というのは、何か違いませんか?知事をコントロールする立場に我々はない

『「不利益」という発言がふさわしくない』との反発に吉村知事は、「執行部としてはそのように考えているということです」と話した。

「対立の構図」浮き彫りに

中断をはさみ、午後に再び行われた本会議では、フルーツ・ステーション事業の関連費用を除いた修正予算案が全会一致で可決された。

吉村知事:
県民のための事業者のためのさまざまな事業がたくさんあるので、当初予算案が通過してホッとしているところ。皆さんが希望を持って将来に向かって生産に取り組んでいくにはどうすべきかを、生産者・関係機関と一緒にしっかり検討していきたい

自民党県連・森谷仙一郎幹事長:
自民党県議団がこの事業について県民になかなか説明しづらい。そういう意味では県民の声・農家の声が我々の背中を押してくれた。今回の否決、執行部は賢明に判断してもらった

県政クラブ・木村忠三代表:
山形県を活性化させる予算が否決されたのは非常に残念だが、予算を撤回して可決したことは県民のことを考えたら良かった

これで一応の決着をみた今回の騒動。しかし、年明けに知事選を控える中、吉村知事と自民党の「対立の構図」が改めて浮き彫りとなる結果となった。

(さくらんぼテレビ)

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