瀬戸内海で水揚げされた魚に漁師の“こだわりのひと手間”を付加価値として価格で評価する“新しい形のセリ”の実証実験が広島市の市場で始まった。
「瀬戸内さかな」のブランド化
早朝3時の広島市中央卸売市場。続々と魚が運び込まれ、その一角では「新たな形のセリ」の実証実験が行われている。
この記事の画像(9枚)広島県は瀬戸内海で水揚げされる魚介類を「瀬戸内さかな」の名でブランド化に力を入れている。
その一環として、魚の付加価値を高めるための試みとして新しい形のセリが導入された。
漁師の“こだわりのひと手間”を付加価値に
市場には、普段とは違うゾーンが設けられ、並ぶ魚にはQRコード付きの“こだわり漁師”のカードが添えられている。
QRコードを読み取ると、漁師のこだわりが表示される。その中には、江田島の鹿川漁協の野村幸太さんが説明するハモへのこだわりもある。
エサを完全に吐き出させてから出荷することで、鮮度と品質を保つという丁寧な“こだわり”だ。
威勢の良い掛け声とともにセリが始まり、いよいよ“こだわり漁師の魚”が競りにかけられる。従来は鮮度や大きさが評価の軸だったが、新たなセリでは漁師の“こだわり”が評価の中心となる。
セリ人が「生き〆、神経〆、氷水での冷やしこみなど丁寧な処理を徹底したサワラ」と紹介し、5000円の価格がつけられる。
次に野村さんが取ったフグは8000円で競り落とされた。さて、新しい形のセリでの価格は通常のセリとどのくらい違うのだろうか…。
通常の2倍から3倍の価格
野村さんのフグを買った仲買人は「思いより3000円高く買っている。漁師のモチベーションが上がれば、食卓に良いものが並ぶ」と語る。
今回のセリでは、kgあたりで通常の2倍から3倍の価格がついたという。広島魚市場鮮魚部の右近浩二次長は「個人的には1週間に1回が妥当。市場もだが、漁師ももう一段階工夫して、みんなで努力していかなければならない」としている。
「瀬戸内さかな」というブランドで魚介類の付加価値を高め、人手不足や高齢化に悩む地域の水産業を支える取り組みの一環としての “新しい形のセリ”だが、消費者の口に入るときには、今までとどのような違いが出るのかが気になるところだ。
(テレビ新広島)