静岡市で部品加工をしている町工場は従業員の8割超が女性で子育て中の人も多い。3種類の勤務時間が選べるほか、遅出・早退・中抜けなど急な予定の変更にも対応できる働き方が女性をひきつけている。
精密加工に女性の器用さがマッチ

静岡市駿河区にある中原精密。
医療機器や半導体関連の部品加工をしていて、20代から60代までの44人が働いている。
驚くべきは女性比率の高さだ。実に8割を超える37人が女性で、多くは子育てと両立しながら働いている。

彼女たちは100分の1から1000分の1程度の単位の精度を狙いながらねじ加工に従事。
鈴木徹 課長は「こぶしに隠れるくらいの製品を扱っているが、女性は器用にやってくれるので細かい部品や数もこなしてくれる点が良いところ」と、仕事ぶりを評価する。
他社とは違う正午の風景

正午になると次々と会社を後にする女性従業員たち。
「(子供が)始業式で帰りが早い」「(子供は今)下校途中かな、それに合わせて今日は半日にさせてもらった」と、早めに退社する理由を教えてくれた。

中原精密の勤務時間は主に3形態。
午前9時から午後3時の5時間と、午前9時から午後5時の7時間、午前8時半から午後5時半の8時間となっている(昼休憩の1時間を除く)。
さらに中原精密では遅出・早退・中抜けなど、ひとりひとりの希望に沿った勤務をできる限りシフトに反映。
近所の子育て女性が創業を支援

なぜ、そのような働き方を認めているのか…それは中原精密の歴史と密接に関係している。
今から40年前の1984年、先代の社長がこの会社を立ち上げた際、数台の機械と共に生産を支えてくれたのが近所に住む子育て中の女性たちだった。

中原精密・岩崎篤 社長:
子供がいる母親が働くというのが、当たり前のように(私は)育ってきた
従業員がプライベートを充実させることが良い仕事につながる。
「子供が最優先」という先代からの教えを守り、従業員に寄り添った職場環境を心掛けてきた。

女性従業員:
下の子の妊娠・出産の時もここ(中原精密)に勤めていたが、妊娠してからもありがたいことに負担のない仕事に変えてもらい、パートの皆さんも「(作業を)代わるよ」と言ってくれた
「とても働きやすい職場」

入社3年目の小林真弓さんは子育て真っ最中で、午後5時半までの勤務を終えると急いで子供たちもとへ車で移動。
「先生に園での様子を聞いたりすると、時間が(終園時刻の)いっぱいいっぱいになってしまうので、なるべく移動は素早く、間に合うように行っている」と話す。

そして、家に着くなり夕食の支度。
子供たちが自由に遊び回っている間にご飯を作る。子供たちは時々 料理や盛り付けの手伝いをしてくれるそうだ。
忙しい毎日だが、子供たちとこうした時間が取れるのも自分の生活や状況に応じた勤務体系を認めてもらっているからだと感じている。
小林真弓さん:
残業ができないことなど、こちらの要望を伝えた上で働かせてもらっている。互いに良いところ悪いところあるとは思うが、私はとても働きやすい職場と思う
女性が活躍するロールモデルに

中原精密・岩崎 篤 社長:
女性が活躍できる町工場がたくさん増え、いいものができていければいい。働きたい女性やモノづくりが好きな女性もたくさんいるので、そういったニーズに応えられるように
「今後は管理職にも女性を積極的に起用していきたい」と話す岩崎社長。
目標は日本の製造業復活に向け、女性の活力を生かしたロールモデルを構築することだ。
(テレビ静岡)