「闇バイト」を利用した架空出品詐欺事件をめぐり、指示役の男が逮捕された。
男は、他人名義のクレジットカードを不正使用し、275万円をだまし取った疑いが持たれている。
男は、得た資金を暗号資産に換えたが、警察庁のサイバー特捜部が追跡に成功し逮捕に至ったという。
架空出品による不正取引事件…指示役逮捕
「闇バイト」による架空出品をめぐる事件で、指示役の男が逮捕された。
暗号資産の追跡捜査で、異例の特定に至ったという。

小林雄太容疑者(26)は、フリマアプリ「メルカリ」に出品した架空の商品を、他人のクレジットカードで不正に購入し、約275万円をだまし取った疑いが持たれている。
小林容疑者は、実行役を「闇バイト」で集めた匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ)の指示役とみられている。
小林容疑者は被害金を、秘匿性が高く追跡が困難とされる暗号資産「モネロ」に交換していたが、警察庁のサイバー特捜部などが、日本で初めて、モネロの追跡に成功したという。
サイバー特捜部が追跡に成功
ここからは、フジテレビ社会部・知野雄介デスクが解説する。

青井実キャスター:
ーー首都圏で相次ぐ強盗事件では肝心の「指示役」が、なかなか捕まりません。しかし、今回、似たような構図である「闇バイト」を実行役とした不正取引事件では、「指示役」を捕まえることができました。なぜ逮捕につながったのか見ていきたいと思います。
宮司愛海キャスター:
まず、今回の事件の全体像を見ていきます。指示役の男・小林雄太容疑者(26)は、他人名義のクレジットカード情報を違法に売る人物から、クレジットカード情報を不正入手したとみられています。
他人名義のクレカ情報を入手した小林容疑者は、SNSを使って闇バイトの実行役を集めます。現在、摘発できているだけで17人いますが、この実行役にクレカ情報を提供し、秘匿性の高い通信アプリで指示を出していました。
青井キャスター:
ーー顔見知りではないということですね?
宮司キャスター:
もちろんそうです。指示を受けた実行役は、フリマアプリ「メルカリ」を使い、架空出品を担当する実行犯が架空出品します。これを実行役の仲間が、他人名義のクレカを使って不正に購入します。表向きは、出品から購入のかたちですが、実際に品物の受け渡しは行われず、存在しない取引になります。
不正に入手した他人名義のクレジットカードを使うことで、購入役からメルカリ側へ購入代金が支払われ、そしてメルカリ側から架空出品役へ入金があります。実行役たちは、そうして得たお金を、暗号資産で小林容疑者に振り込んでいました。

青井キャスター:
ーーなぜ今回、指示役の特定につなげることができたのでしょうか?
フジテレビ社会部・知野雄介デスク:
これまで、被害金を暗号資産のうち、匿名性の高い種類にされると追跡は不可能ではないかと考えられていましたが、その追跡に成功したのが最大の理由です。警察庁は、直轄の「サイバー特捜部」というものを作り、サイバー捜査に力を入れてきました。
「足跡」を見つける地道な捜査が必要
青井キャスター:
ーー暗号資産のうち、匿名性の高い1つを追跡できるようになったのは、日本のサイバー捜査にとって大きな一歩だと思いますが、闇バイトをめぐる事件で、今後も指示役の逮捕が増えてくる可能性はありますか?

社会部知野デスク:
可能性はあると思います。例えば、ルフィを名乗る男らの強盗事件では、指示役側から見れば、いわば複数の「ミス」をしたので、なんとか特定に至りました。実行犯に電話をかけた際にフィリピンの国番号を残してしまい、被害金を指示役の1人の口座に送金してしまいました。そこで金の流れが分かりました。
逆に言えば、それぞれ秘匿性の高い「アプリ」で指示し、「暗号資産」で資金洗浄する、匿名流動型の事件では、このような「足跡」を残さなければ、「完全犯罪」が可能になってしまうのが「トクリュウ」事件の怖さです。
しかし今回、サイバー特捜部などが、「暗号資産」の流れの追跡に成功しました。これは、非常に大きなことで、ほかの事件にも応用されることが期待されます。

青井キャスター:
ーー今問題になっている「首都圏連続強盗」といった、指示役がなかなか捕まらない闇バイト・トクリュウにもサイバー捜査が生かされるのでしょうか?
社会部知野デスク:
そうです。ただし、指示役を捕まえないと意味がない中で、サイバー捜査に加え、実行役は、ルフィを名乗る事件のように、どこかに「足跡」を残しているはずです。なんとかそれを見つける地道な捜査が必要です。
青井キャスター:
ーー大きな一歩とみていいですね。
スペシャルキャスター・山口真由さん:
警察の捜査手法は、「おとり捜査」や「司法取引の積極さ」、「ハッキング」など、法改正して捜査手法をもっと自由にしてもいいと思います。
(「イット!」10月22日放送より)