土佐の伝統のお座敷遊びと言えば「はし拳」。その「全国大会」が10月4日に高知市で行われた。出場者の中には埼玉県からやってきたという男性の姿が。初体験の舞台裏を取材した。
土佐の酒文化に惹かれ「はし拳」初体験
向かい合って座る2人が互いの手に隠し持った箸の合計本数を当て合う土佐伝統のお座敷遊び「はし拳」。

10月4日、高知市で開かれた土佐はし拳全日本選手権大会では、酒の香りが漂い、土佐弁が飛び交っていた。参加者138人の中には埼玉から初出場という男性の姿があった。

埼玉・所沢市から初出場する徳永雅則さん。フェイスブックに「ひとりではしご酒」というページを作り飲み歩きの写真や動画を投稿している。

2022年、高知を初めて訪れ、その大らかな酒文化に魅了された。土佐の「おきゃく」で、たまたま隣のテーブルにいた高知市の特選呉服いしはらを営む、石原文子さんと意気投合。
石原さんは「今年の春に徳永さんが『おきゃく』に来られて。横の席に徳永さんがいらっしゃって」と出会ったときについて話す。
料亭・濱長での女将直伝「はし拳」
大会前日、徳永さんは石原さんが営む「特選呉服いしはら」を訪れ、はし拳の手ほどきを受けた。

はし拳を知らなかった徳永さんが大会に出場したきっかけは石原さんだった。石原さんは、徳永さんが高知が大好きで高知に来ると聞き、「それやったらぜひにと、はし拳体験していただいて。いっしょに出場しませんか」と、声をかけたのだ。
徳永さんは「(野球拳のように)踊るのかな?その大会かなと思ってたんですけど家に帰ってよく調べてみたらお座敷遊びだ」と誘いを受けた時の話をした。

「aiiro(あいいろ)」というチームではし拳大会に参加する石原さん。さっそく初心者の徳永さんにはし拳の手ほどきした。
石原さん:
ここにこう、箸がこう来るように。このお箸がこっちへ飛び出したりすると何本持ってるかわかるからここにこう来るように。

徳永さんと一緒にチームを組むことになった飯田祥香さん。この日が初対面だったが、「高知駅で売ってました」とべろべろの神様のストラップを見せた徳永さん。飯田さんと早くも打ち解けていた。
そして、べろべろの神様に勝利を祈りながら3人が向かったのは高知のお座敷芸が楽しめる料亭・濱長。石原さんと親交のある女将・濱口実佐子さんにはし拳の指導を受けた。

濱口さん:いらっしゃい!
徳永さん:で、どう言うんだっけ、この後
石原さん:3本! 3本しか言えないんですよ
徳永さん:あ、そうか、3本
石原さん:って言いながら、手を出してください
女将直伝!手取り足取りの指導で徐々にコツをつかみ始めた徳永さん。
その後も、先手以外の後手のルールも練習し、やっと女将に勝つことが出来た。
初出場でベスト4の快挙!
翌日、緊張した面持ちで会場にやってきた徳永さんたち3人のチーム。徳永さんは「初戦敗退をしないようにいきたいと思います」と意気込みを話す。

前日に徳永さんが指導を受けた料亭・濱長のチームは、チームの3人がすべて有段者という強豪「藝拳会(げいけんかい)」に初戦でぶつかりあえなく敗退。

徳永さんたちのチーム「aiiro」はその強豪チームと初戦を迎えたが、特訓の成果むなしく強豪の前に徳永さんは敗退。しかし続く飯田さんと石原さんが有段者を連破。

石原さん「うれしい~ すご~い 有段者に勝ってしまった」と勝利をかみしめ、徳永さんも「やった~」と一緒に喜んだ。
その後も徳永さんたちは次々と強敵を倒しなんとベスト4に進出。ブロックで勝ち上がってきた濱長チームと対決。しかし、徳永さんたちはここで敗れ4位という成績に。

石原さんは「まさか4位になれるなんて思ってもみなかったので。所沢から来ていただいたかいがありました」と話し、徳永さんも「もう胸を張ってSNSに乗っけます」と満面の笑みで答えた。
徳永さんは、「参加してとにかくおもしろかった。酔った状態でのかけひきのおもしろさに、ますます高知が好きになりました」と感想を語った。
男も女も、老いも若きも盃を挟んでふけるお座敷遊び「はし拳」。土佐の文化を守ろうと多くの人たちの歓声がこだました。
(高知さんさんテレビ)