原佑輔特派員:フランス・パリにある日本大使公邸です。これから、KURAMASTERの授賞式が行われます。
【動画】フランスで日本酒?フランスのソムリエたちの評価は!日本酒、世界へ
この記事の画像(15枚)仏の食のプロフェッショナルがSAKEを品評
8回目の開催となったKURAMASTERコンクール。
その特徴は、フランスの国家最優秀職人章(MOF)を受賞するなどフランスの第一線で活躍するソムリエや、バーテンダーといった、日本人ではない食のプロフェッショナルが日本酒などを味わい評価する点だ。
農林水産省によると、日本酒の国内出荷量は減少の一途をたどっていて1998年に113万リットルだったものが、2023年には39万リットルとなっている。
一方で、日本酒の輸出量は、じわじわと増えていて、1998年の8000リットルから2023年には2万9000リットルと、3倍以上となっている。
ただこのうち7割以上をアメリカや中国、韓国が占めていて、欧州での消費増はまだこれからだ。
ワインの本場でSAKEは受け入れられる?
ワインの本場、フランスで日本酒はどの程度受け入れられているのか。
国家最優秀職人章の称号を持つソムリエのグザビエ・チュイザさんは、高級料理に合わせて認知度を高める段階から、一般の消費者に届ける段階にステージが変わったと話す。
Qワインショップの人たちはあなたのところに来ていますか?
ソムリエ・国家最優秀職人章 グザビエ・チュイザ氏:ますます増えています。それが私の喜びでもあります。
私はスパークリング酒の発展に非常に期待しています。これは、より広い層にアピールできる飲み物です。
少なくとも、消費者が酒の世界に足を踏み入れるきっかけとなるでしょう。そして、次第に吟醸や大吟醸など、より高度な酒に進んでいくのです。
最高賞は「白雪伊丹諸白大吟醸」
この日は、応募総数1223点の日本酒の中から最高賞であるプレジデント賞が選ばれ、兵庫県伊丹市の小西酒造の「白雪伊丹諸白大吟醸」が受賞した。
チュイザさんは、この酒を「香りはエキゾチックともいえる柚子の皮や青りんご、乾燥した植物、刈りたての干し草、さらに、白胡椒のような繊細なスパイスなどと、伝統的な要素が見事に融合し、豊かで複雑な香りがあります。余韻は長く、後味には洋梨やドライローズのつぼみのニュアンスもあります」と評した。
小西酒造・小西新右衛門社長:日本の方じゃない方たちがこのお酒を選ばれるという意味はすごく大きいと思います。
やっぱり日本は日本の日本酒として日本酒を大事にしないといけないと同時に、今、せっかくこうやって世界の方に認められつつある日本酒というのがもっと、どうあるのかなというのを探る意味でも、こういう賞に出品するのはすごく大切だといつも思っております。
下川眞樹太・駐フランス日本大使:フランスなんかを見ても、若年層を中心にアルコールをどんどん飲まなくなっていまして、例えばフランスは今ワインが売れなくなって非常にブドウ畑を減反しているとか、そういう現象も見られます。
やっぱり日本酒というのは日持ちの問題とか種類が非常に多いので、仕入れをどうするかとか、まだまだそういうところで課題があるのかなと思いますので、そういうものを乗り越えて皆さんが日常的に喜んでもらえる、楽しんでもらえる。そういう環境になったらいいのかなと思います。
「伝統的酒造り」をユネスコ無形文化遺産に
実は今年、日本酒は大きな転機を迎えます。
日本政府は「伝統的酒造り」をユネスコ無形文化遺産として登録するよう提案していて、12月に審査が行われるのだ。
加納雄大・ユネスコ日本代表部大使:無形文化遺産というのは、やっぱりその条約の仕組みとしてですね。食べ物そのものというよりは、作るプロセス。それ自体が保護に値する文化だという説明をする必要があるのです。
お酒を通じて日本の各地の豊かな文化というのを知るツールになるんだろうと思いますので、もちろんそのお酒そのものを楽しむというのがあるんですが、酒の造りに関心を持つ方というのは、潜在的には非常に多いと思います。結果としてお酒自体への関心消費につながるのではないかと期待しています。
世界の美食と共にSAKEは広がる
日本の食卓を彩ってきた日本酒が、世界の舌を潤すまで、先人たちの重ねた努力が、今、少しずつ実り始めています。