「日本に戻ってきてから、南海ホークス、阪神タイガース、日本ハムファイターズでプレーを続け、38歳のときに現役を引退しました。
現役を続けている間は、“誰もメジャーに行かないでほしい”と思っていました。でも、現役晩年を迎え、引退が近づいてくる頃になると、“そろそろ誰かアメリカに行かないかな”という思いになり、むしろ“行ってほしい”と考えるようになりました。
自分でも理由はわかりません。でも、私だけでなく、後輩たちにもあの経験を味わってほしい。そんな思いになっていました」
しかし、村上が引退した後も、しばらくの間「日本人メジャーリーガー」は誕生しなかった。
元号が昭和から平成に変わってもなお、村上は先駆者であり続けたのだ。
アメリカでの成功に必要な精神力
現在では数多くの日本人メジャーリーガーが誕生している。
ある者は大きな成功を収め、ある者は日本での輝きを発揮することができずに悔しい思いを抱いたまま帰国することとなった。
改めて村上に問う。

――アメリカで成功する人と、そうでない人との違いはどこにあるのですか?
この問いに関しても村上の言葉に迷いはなかった。
「野球の実力が大切なのは当然のこととして、それ以上に精神的なものが大きいと思います。やっぱり、文化の異なる生活の中に自ら積極的に入っていけるかどうか?
私なんて、“入るな”って言われても、どんどん入っていっちゃうタイプだったから(笑)。そこで大切なのは言葉。私の場合は通訳なんていなかったけど、それでも会話の中に積極的に入っていった……」
それまで、笑顔を交えながら楽しそうに受け答えしていた村上の表情が引き締まる。口調にも熱が帯びてくる。