美しく奥が深い螺鈿の世界

医療現場だけでなく、経済的にも大きな影響を与えている新型コロナウイルス。
新型コロナの影響で4月以降売り上げがほとんど無くなってしまったという螺鈿職人の野村拓也さん(33)。野村さんが働く老舗の伝統工芸のピンチをTwitterが救ったと話題になっている。

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螺鈿(らでん)とは、貝の内側の光沢を持った部分を漆に加飾する漆工芸の伝統技法。

野村さんは、1910年に京都市で創業した「嵯峩螺鈿 野村」の螺鈿職人で、大学卒業後、スポーツメーカーで5年間勤務した後、家業に戻り2016年、29歳で螺鈿職人となった。現在は野村さんの父親が三代目を務めている。

嵯峩螺鈿 野村
嵯峩螺鈿 野村

そんな歴史ある店だが、新型コロナウイルスの影響で4月以降売り上げがほとんど無くなってしまったという。何とかしないといけないと思い、7月15日から野村さんが始めたのがTwitterだった。

角度が変わると色味が変化する螺鈿のシルバーリングを投稿すると早速反響があった。

「Twitterで一目惚れしました!」とのコメントと共に商品を購入する人や、遠方から店舗まで商品を買いに来る人が出てくるようになったという。
そして、約1カ月後のTwitterでは…

コロナの影響で4月から売上がほとんどなくなってしまい、なんとかしないとと思いTwitterを始めました。 今では「Twitterで一目惚れしました!」とご購入いただけたり、わざわざ遠方から店舗まで買いに来ていただけるようになりました。 本当に世界が変わりました。皆様とご縁を頂けて本当に感謝です。

螺鈿の技術をTwitterで発信することで世界が変わったという。Twitterを始めてから売り上げはどのように変化し、どれほどの反響があったのだろうか。また、美しい螺鈿の技術についてもお話を伺った。

野村拓也さん
野村拓也さん

オンラインストアでの売り上げは1000倍超に!

ーー新型コロナウイルスの影響で売り上げはどのくらい減った?

4月からはほとんどゼロになりました。

ーーTwitterを始めてから売り上げ面や反響などどのように変わった?

オンラインストアの販売が急激に伸び、Twitterを見て来店するお客様がとても増えました。オンラインストアは昨年同月比1000倍を超えてます。オンラインストアは3年前からありましたが、そこまで力を入れておらず、月に1つか2つ売れていたくらいでした。

一つ一つ貝の輝く方向を見極めて貝を置いていく

ーー現在お父さんが3代目だが、拓也さんは4代目となる?家業はどのような歴史がある?

姉も事業に参加してますので、4代目の話はまだ具体的にはありません。父と母と姉と私の4名で活動しています。 私の祖父は香炉や燭台など和室用のインテリア商材に螺鈿の技術を用いて製作していましたが、ライフスタイルの西洋化に伴い売上が減少しました。そこで祖母が自分用に作っていたアクセサリーを店頭で販売したところ好評で、現在も螺鈿アクセサリーを主に製作しています。

ーー拓也さんは元々螺鈿職人になりたいと考えていた?

なりたいとは考えていませんでしたが、昔から手先は器用でした。 大学卒業後はスポーツメーカーに就職して営業をしていましたが、帰省するたびに当時は海外のお客様が増えていまして、大学生のときに留学経験があったので語学力を活かして力になれるのではと考え家業に戻りました。

ーー螺鈿の技術はどこの部分が難しい?

貝には全方向に光り輝く訳ではなく、実は光る角度があります。一つ一つ貝の輝く方向を見極めて貝を置いていき、正面から見たときに一番綺麗に見えるように調整する作業が1番大変で、経験が必要です。

ーー螺鈿職人として心がけていることは?

螺鈿の専門店の職人として製作させていただいているので、貝の妖艶で美しい色と輝きを、もてる技術で最大限に引き出すことを心がけています。

ーー思い出の作品は?

螺鈿のシルバーリングは、私が初めて自分でデザインしたのでとても思い入れのある商品です。 最初は技術的に難しくて上手く作れなかったりお客様によって欲しいサイズがバラバラで対応できなかったりと大変でした。 製作を重ねるごとに技術の精度を高めることができたり、受注生産にすることで幅広いサイズの選択肢が好評をいただき、いまではオンラインストアで1番人気になりました。

螺鈿のシルバーリング
螺鈿のシルバーリング

ーー新たな発信源となったTwitterを通して、どのようなことを伝えていきたい?

市場には螺鈿と名のつく商品はたくさんありますが、実はイミテーションだったりシールだったりします。 それらが決して悪いわけではないですが、貝本来の自然が生み出す真の美しさを表現した螺鈿製品を伝承していきたいです。

Twitterを始めてわずか1カ月ほどで、オンラインストアの売り上げは、昨年同月比の1000倍超と驚きの数字になった。SNSで発信することで日本の確かな伝統技術に改めて気づかされる、こうした取り組みは有効なのだろう。
 

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プライムオンライン編集部
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