企業のPRにTwitterを活用するケースは増えてきているが、“技術の無駄使い”を披露してバズっている投稿がある。

まずは、こちらを見てほしい!
 



信頼する経営者にツイッターを始めた事を伝えたら『ツイッターは無駄な才能を披露して盛り上がる場なので、真面目な話はウケない』と助言された」「ならば、当社の機械を存分に無駄使いした技を披露しよう

という言葉とともに、12月9日に投稿された27秒の動画では、レーザーマーキングの機械が、1枚のアルミ板にわずか2秒ほどで「Twitter」と彫り込んでいく様子を映している。

機械による鮮やかで素早い作業に、Twitter上では「無駄でない無駄遣いとはその事…」「まるで映画のワンシーンのようなカッコよさ……!」などというコメントが飛び交ったばかりでなく、「社名にした方が宣伝になるのでは?」「魔法陣のようなのをレーザーマーキングすればもっと燃える人増えるはずですよ」というアドバイスも多数登場。

12月16日時点で約1万のリツイート、約2.7万のいいねを集め、話題となっている。

投稿者は新潟県燕市にある協立工業の代表取締役社長の森下一(@kyoritsu_1962)さん。同社は1962年創業で金属プレス、溶接加工のほか、自動車や鉄道などの分野で使われるさまざまな機械部品を製造している従業員45人の会社だ。

そして、森下さんが社長自らTwitterを始めたのは11月末からで、最初の投稿から1カ月も経っていない。投稿開始後しばらくは、同社が1億円の費用をかけて導入したスイス・バイストロニック社「ファイバーレーザー切断加工機」の紹介をしていたが、それほど反応はなかったという。
 

スイスのバイストロニック社製「ファイバーレーザー切断加工機」。1億円の費用がかかり、2カ月かけて組み上げた。

しかし、レーザーマーキングで「当社の機械を存分に無駄使いした技」を投稿したところ、たちまち大きな注目を集め、森下さんは「1億円の機械動画より、ツイッターはこう言うやつがウケるのか…」と、ボヤくことに。

その後、Twitterの感覚をつかんだのか、バズったことへのお礼メッセージをレーザーマーキングで再び披露したり、「ファイバーレーザー切断加工機」を使ったステンレス飛行機を作り上げたりし、他のユーザーともやり取りを続けている。
 





こういうやり方があるのかと他の企業も参考になりそうだが、森下さんはバズった今回の投稿をどう思っているのか? また、企業のPRとしてしっかり仕事につながったのか?お話を聞いた。
 

業界では普通の技術でも一般の人にとっては面白いかもと

ーーまず、Twitterを始めた理由は?

数年前からホームページのみでのマーケティングに限界を感じていました。

「町工場であろうとSNSを使用したマーケティングやブランディングを当然行わなくてはいけない、自社商品を持っていなくとも我々ができることや考えていることを発信してファンを作らなければ、20年後、30年後の未来はないのではないか」と考え、開始に至りました。
 

ーーでは今回、「Twitter」と加工してみようと思ったのはなぜ?

Twitterを始めた頃、たまたま当社のホームページを作ってくれているクリエーターと、ホームページリニューアルの打ち合わせをする機会がありました。その席で、Twitterでの会社宣伝の話をしたところ、「Twitterはどちらかというと、分かりやすい馬鹿な話がバズります。真面目な話でバズらせようと思ってもなかなかバズりません」と教えていただきました。

しかし、「どうしたものか・・・」と考えていたところ、眠っていたレーザーマーカーの存在を思い出したのです。

「業界人にとっては普通すぎる技術のため、誰も食いつかない。しかし、ホームセンターや通販で個人が簡単に手にできるものではないから、一般の人にとっては面白いのかもしれない」と思い、気づけばなんとなく、字体も考えず、レーザーで「Twitter」とマーキングし、動画を撮っている自分がいました。
 

ーーそうなると、発案者も?

私、森下です。
 

ーーでは、「Twitter」と今回加工した機械だが、どんな技術を使っているの?

レーザーマーキング専用の機械で、20wと小さな容量の機械となります。 「F1レーザー」という機械です。
 

ーーこの機械は、どんな素材や厚さでも加工できる?

まだテスト中ですが、素材に関しては制限がありそうです。加工を実証できている素材は鉄、ステンレス、アルミ。現在確認中ですが、おそらく銅や真鍮も可能かと思います。カラーは対応していません。
 

ーー実際のビジネスでは、この技術をどんなことに使っている?

実は、まだ何に使うか決めていません。我々の本業は金属プレスの深絞りや、それに使用する金型の製造、販売、レーザー切断機械を使用した切断加工であり、この機械の技術を工業部品の一行程として受注することは考えにくいです。

また、先ほど話したとおり、マーキングは製造業ではあまりにも普通すぎる技術のため、比較的どこでもできます。ですから、BtoCの展開をする時に使用していきたいと考えています。
 

「びびりました。」

ーーTwitterを初めて1カ月足らずで、大きくバズったことについて、どう感じている?

びびりました。とても嬉しく思っています。
 

ーーこんなに反響を集めるなんて、当初想像していた?

まさかです。いいね!が100くらいついたら、「おお、見てもらえているじゃないか」と思っていたので、こんなことになるとは思っていませんでした。
 

ーー「当社のホームページアクセスの10年分を、Twitterは僅か一瞬で超えた」とも言っていたが、どういうこと?

当社のホームページのアクセスは年間2万から3万くらいです。ところが、この動画を上げた直後に、Twitterアカウントのインプレッション数は370万を超えました。
 

ーーだとすると、フォローの人数も投稿の前後で変わった?

全く違います。勢いがまるで違います。そして、個人アカウントではありますが、社名を出してやっているため、全てのメッセージやメールに対し対応していますが、追いつきません。申し訳なく思っています。
 

ーービジネス上の具体的な成果はすでに上がっていたりする?

当社は、機械を使って加工賃をいただくサプライヤーですので、加工相談は多く受けております。しかし本ケースでは、Twitterを見て相談される方に個人のお客さんが多く、また「〇〇のようなことができますか?」というご相談があくまで多いため、今のところ具体的な受注には至っておりません。

だた、今はそれでよいと思っています。まずは今回のようなレーザーマーキングで、多くの人に協立工業を知っていただき、その後にプレス加工、金型、ファイバーレーザー切断を本業としていることをご理解いただけたたらと思っています。

こちらは大手企業のアカウントではなく、町工場の経営者の個人アカウントでしかありません。広告臭を出さず、単純にものづくりの面白さを発信していければと考えています。
 

協立工業が「ファイバーレーザー切断加工機」で加工制作したステンレス飛行機

「求める人がいなければ、スベって終わり」

ーー「1億円の機械動画より、ツイッターはこう言うやつがウケるのか・・・」とあったが、正直複雑な気持ち?

まぁ、確かにそうですね(汗)。

ただ、これが正しい反応だと思うんです。我々企業は、つい難しいこと、他の人ができないこと、他社がやっていないことを難しくPRしてしまいがちです。しかし、求める人がいなければ、スベって終わりです。

今回の反応を見て、「いかに簡単に、いかに面白く伝えることが、どれほど重要か」という、本当に大きな学びがありました。
 

ーー宣伝効果としてのTwitterは予想以上だった?

絶大ですね。さらに言えば、これほど多くの人の声を聴けるマーケティング、ブランディングルーツは無いと思うので、上手く使っていきたいです。
 

ーー先の投稿で、多くのユーザーから投稿上のアドバイスなどももらっていたが?

とてもありがたいですし、大変参考にしています。
 

ーー今後も、Twitterはこの方向性でいく?

そうですね。宣伝臭ではなく、あくまで素人感を出しながら、まずはしっかりとファンを作っていきたい。

そして、これだけバズるきっかけになった最初のフォロワーは、私の趣味である機械式時計愛好家の方々も多いので、あまり企業企業したアカウントではなく、たまに趣味の話もしながらやっていきたいと思っています。
 

ーー自身がTwitterに向いていると感じる?

難しい質問ですが、この反響を見る限り、向いていない訳でもないのかなと…。どうなんでしょう。
 

ーーこの先、「こんな動画を次に披露したい」など具体的にある?

今考えているんですけど、難しいです。ここまでバズってしまうと、次も期待されますからね。どうしようかな、考えてみます。
 

 

これからの時代、いわゆる町工場の確かな技術をTwitterの特性をつかんで発信することは、結果的に“技術の無駄使い”ではないのかもしれない。