10月の出雲、11月の全日本、そして1月の箱根へと続く学生三大駅伝。そのシーズンを占う大事な初戦「出雲駅伝」が、いよいよ10月14日(月・祝)島根県・出雲市にて開幕する。
2024年夏に行われたパリオリンピック。実は、かつて出雲路を走った選手が多く出場した。
男子マラソンで6位入賞を果たした赤崎暁選手は、拓殖大4年時に1区3位と好走。また、3000m障害で東京五輪に続いて2大会連続の入賞を果たした三浦龍司は、2年前の大会で2区2位と結果を残している。
このように、学生時代に「出雲駅伝」を経験した選手が、ここから、世界の舞台で躍動してきた。
そんな「世界」への飛躍を期待させる2024年の注目の選手をピックアップし、紹介する。
國學院大學4年 平林清澄選手

國學院大學の平林選手、彼の進むべき道を決めたのが、5年前の出雲駅伝だった。
國學院大學 平林清澄選手:
頭の中に、こびりついているぐらいなんですけど、最後、駒澤大学さんを抜いて優勝したあの逆転シーンは、やっぱり一番頭に残っていて、僕が國學院大學を選んだきっかけというか、ああいうレースがしてみたい、そういうレースでした。

2019年、残り1㎞をきってからの大逆転で、出雲駅伝初制覇。國學院大學は大学駅伝、初優勝を飾った。
そんな光景を目の当たりにした平林は数ある強豪校の中で迷わず國學院大學進学を決めたのだった。
迎えた1年目のトラックシーズン。平林は、早速、全日本大学駅伝の予選会で力走。その存在感をみせつけると、大学駅伝デビュー戦となった出雲では、ルーキーながら最長区間のアンカーを託されるなど、すぐにチームの中心を担う存在となった。
そして、その後も三大駅伝すべてに出場。2023年の全日本大学駅伝では区間賞を獲得し、常にチームを牽引してきた。

平林選手について、指導にあたる前田監督は、その強さをこう語った。
國學院大學 前田監督:
特技が陸上、趣味陸上という感じですね、本当に。やっぱり体脂肪率3%はなかなかないんじゃないですかね。本当に長距離のためという男だと思う。
また、これまで移動車から走りを見守ってきた解説の金哲彦さんは、2022年大会のレース後、当時2年生だった平林選手のもとを訪ねると、思わずこう伝えた。
金哲彦さん:
マラソンで絶対成功する。自信を持ってください。本当に絶対成功するから駆け引きとかすごくうまいので、マラソンで2時間4~5分の選手になるから。僕が太鼓判押します。
彼の走りが1年生の頃から格段に良くなったんですよね。もともと細くてしなやかに走るタイプだけどブレのなさがあってマラソンにすごく向いてます。
将来日本を背負って立つマラソンランナーになることを僕は今から予言しておきます。

そんな金さんの予言から1年4ヵ月後の2024年2月。予言は見事的中する。
マラソンに初挑戦した平林選手は、なんと初マラソン日本最高記録で優勝。瞬く間に一躍、日本マラソン界のホープへと駆け上がったのだった。
しかし、最終学年の4年生、キャプテンとして迎える2024年の駅伝シーズン、彼が真っ先に見据えていたのは…
國學院大學 平林清澄選手:
やはり今チームのキャプテンとしてやっていて、チーム目標を上半期に出るレースで勝ち切ると定めている。僕の結果もひとつのチームの流れ、一部でしかないので、そう大きく捉えずにひとついい流れをチームに持って帰れたかなというようなところです
そんなキャプテンの走りに触発されたチームは上半期のレースで躍動する。
気づけば1万mのチーム平均は2024年の出雲駅伝の出場チーム、ナンバーワンとなっていた。
蘇るのは5年前のあの光景。
誰よりも陸上を愛する日本のホープが、集大成の駅伝シーズンへ、出雲路での活躍を誓う。
『箱根駅伝初優勝』を最大目標に、まずは、出雲から大学ラストイヤーの駅伝シーズンが始まる。
國學院大學 平林清澄選手:
メンバー争いが一番緊張するんじゃないかなというくらいのチームが出来上がってきている。まずは三大駅伝の最初の駅伝を取りにいくというのは、チーム全体で共有していることなので、目標を達成するために区間賞はとりにいきたいと思っています。
青山学院大学4年 鶴川正也選手
2024年の箱根駅伝を大会新記録で制した青山学院大学。2024年の上半期は、その優勝メンバーが中心となって躍動する中、エントリーすら叶わなかったひとりの選手が輝きを放っている。4年の鶴川正也選手だ。

青山学院大学 鶴川正也選手:
絶対に3冠取ることと、青学の優勝を決定づけるような走りをしていきたいと思っています。
強豪、青山学院大学に入学した鶴川は、世代のトップランナーとして、華やかな駅伝シーズンを思い描いていた。
青山学院大学 鶴川正也選手:
1年目から三大駅伝に出場して結果を残せるようにしていきたいと思います。
トラックの外でも人気を集める鶴川。アイドル顔負けのルックスは、多くのファンを虜にした。
しかし、入学後の彼を待ち構えたのは…茨の道だった。

青山学院大学 鶴川正也選手:
自分の不注意で捻挫をしてしまって、駅伝シーズンをすべて走れない状態になってしまいました。自分が思い描いていた大学の陸上人生とは遠く離れた現実だったので。
入学後1年目、2年目と度重なるケガに悩まされた鶴川。
ようやく復調した出雲駅伝では最終区間を任されたが、区間7位と思い描いた結果を残せず、チームも4位にとどまった。満足のいかない走りしかできず、その後の全日本、箱根に向けた練習での無理がたたり、2023年の秋には大腿骨を疲労骨折。
青学優勝で歓喜に沸いた箱根駅伝でも、出場すら叶わなかった。
青山学院大学 鶴川正也選手:
優勝しても本気で喜べなくて、もう見たくないという感じでしたね。
鶴川は「陸上をやめたいとも思いました」と当時を振り返る。
しかし、崖っぷちで迎えた4年生ラストシーズン、目標としていた関東インカレで、名だたるライバルを抑え、見事初優勝を飾った。

さらに6月には5000mで13分18秒51の好タイムで自己ベストのみならず、青学記録を更新してみせた。
そして、勢いそのままに、日本選手権では日本人学生記録(当時)を更新。
ようやく本来の走りを取り戻した鶴川。
そんな彼の活躍を間近で見つめる原監督は、優勝への鍵をこう語った。
青山学院大学 原監督:
(鍵をにぎる選手は)鶴川でしょうね。彼が良い状態でスタートラインに立てれば、間違いなく区間賞とれる力がありますので。
少し練習すればすぐ故障というようなことがあったので。コツコツコツコツ地味なことを努力し続けることの大切さを3年間学んだ。それが4年目にして力がついてきた。
久しぶりにね、出雲駅伝は本気で優勝を狙いに行きます。
箱根を制した最強メンバーに、加わったラストピース。
2024年も緑色のユニフォームが、盤石の布陣で駅伝シーズンに挑む。
青山学院大学 鶴川正也選手:
個人としては任された区間すべてで区間賞をとることです。
出雲駅伝の個人的な目標は、やっぱり僕は一区を走りたいので、青学の優勝を決定づけるような走りをしていきたいと思っています。
駒澤大学4年 篠原倖太朗選手

2023年の出雲駅伝。3年の篠原倖太朗選手がスタートの1区を任され、他を圧倒する区間賞の走りを見せると、そのままチームは一度も先頭を譲ることなく、 大会新記録で連覇を達成した。
さらに、続く11月の全日本大学駅伝でも 区間日本人トップタイムで、チームの二冠に貢献。
駒澤大学は史上初の2年連続三冠へ、王手をかけた。
そして迎えた箱根駅伝では、 1区歴代2位のタイムで区間賞を獲得。
チームに勢いをつけたが、結果はまさかの総合2位。偉業達成まで、あと一歩届かなかった。
そんな篠原は4年生、キャプテンとしてチームを牽引する一方で目指すべき姿があった。

駒澤大学4年 篠原倖太朗選手:
自分が今回したいのはエースの走りというか、自分的にはもっと絶対的エースの走りがしたくて。
自分が見てきたエースって区間が決まっていたというか、田澤さんだったらもう絶対ここの区間だよねとか、芽吹さんだったら絶対ここだよねってなってたんですけど。
それはチームの絶対的な「エース」になること。
これまでの駒澤のエースを見てみると2学年先輩の田澤廉は、エース区間の3区を2回。
1学年先輩の鈴木芽吹は 2年連続で最終6区を任されている。
駒澤大学4年 篠原倖太朗選手:
自分はどこでも行ける準備しててねという感じだったので不動じゃないというか。
なので、今年(2024年)は不動のエースになりたいなと思います。

絶対的な信頼のもと、重要区間を任されるのが、駒澤の「不動のエース」だった。
受け継がれる駒澤のエースの系譜へ、その決意は、9月下旬のレースで現れた。
歴代の駒澤エースに並んで出走した5000mレース、 最後まで先輩の鈴木芽吹(トヨタ自動車)と競り合い、 自己ベストを10秒以上縮める、13分15秒70をマーク。屋外の日本人学生新記録を塗り替える「不動のエース」たる走りを見せたのだ。
駒澤大学4年 篠原倖太朗選手:
出雲のための5000mとして出場したんですけど、ここまでうまく走ることが出来たのは、自分の地力がついたかなっていう印象です。
最高のコンディションで迎える駅伝開幕戦。
「不動のエース」が、強い駒澤の復活に向け、ラストシーズンに挑む。
駒澤大学4年 篠原倖太朗選手:
出雲で勝つと箱根で失った自信というのを取り戻せると思うので、まずは出雲を勝つってところが目標です。
出雲駅伝は、2024年の箱根駅伝でシードを獲得した上位10校に加え、各地区の選考レースを勝ち抜いた7校、そしてアメリカ・IVYリーグ選抜など、選抜4チームを加えた計21チームが参加する。
14日(月・祝)午後1時5分の号砲とともに、戦いの幕が上がる。
「第36回出雲全日本大学選抜駅伝競走」
10月14日(月・祝)午後1時~ フジテレビ系にて生中継