横浜市にある1日4000人が通行する踏切で、死亡事故が相次いでいます。
市は踏切を廃止する方針ですが、住民は利便性を訴え意見が対立。「安全性」か「利便性」か、揺れる町を取材しました。

死亡事故相次ぐ「踏切廃止」に利用者は?

横浜市・鶴見区にある「生見尾(うみお)踏切」。京急の「生麦駅」近くにあり、東海道線、横須賀線、京浜東北線のJRの3路線、あわせて6本の線路が並んでいます。

この記事の画像(14枚)

全長は、約45m。一度に渡りきれない人のために、中央に待機部分を設置するなど、複雑な構造になっています。

渡りきれない人のために、警備員が手でバーを上げる
渡りきれない人のために、警備員が手でバーを上げる

朝・夕のラッシュ時には頻繁に電車が行き交い、取材中も、警備員が渡れない人をサポートする姿や…。

警報機が鳴る中、踏切に進入する自転車
警報機が鳴る中、踏切に進入する自転車

「早く渡って」と大声で呼びかける、緊迫した場面も見られました。

この踏切で、9月29日、ベトナム国籍の飲食店店員ブオン・バン・ロンさん(26)が電車にはねられ死亡しました。

付近の防犯カメラには、ブオンさんがスマートフォンを操作しながら踏切に入り、待機場所ではない線路内にとどまる様子が映っており、立っていたところが待機場所だと勘違いして、線路内にとどまってしまった可能性があるとみています。

この踏切では2013年以降、同様の死亡事故が4件発生しており、市は「安全性」の問題から以前から人が通れる橋の整備を計画してきましたが、10月2日、山中竹春横浜市長は改めて「踏切廃止」の方針を示しました。

踏切利用者:
ちょっとここがなくなると、ずーっと向こうまでいかなきゃなんない。(危険だと感じても)ここは通りたい。

小学生の子供がいる保護者:
踏切渡るときに(渡れる)時間が短いので、心配になって一緒に通学の時に来たりはしているので、そういうふうにできるのであれば、安心になるかなとは思います。

配達で毎日踏切を利用する人:
具合悪いんですよね廃止されちゃうとね…。ここ使えなくなると他回らなきゃいけないもんね。

安心の声がある一方で、市が計画している橋では「車やバイクでの通行ができなくなる」として反対の声も上がっているといいます。

迂回路は3km…専門家「十分な話し合いを」

踏切が廃止になった場合、どのくらい不便になるのか?
迂回路を車で検証してみたところ、かかった時間は車で約7分。踏切なら45mの距離が、迂回すると、その距離は約3kmにも及びます。

「安全性」をとるのか、「利便性」をとるのか。横浜市は「めざまし8」の取材に対し以下のような回答をしました。

《横浜市の回答》
「抜本的な解決のためには、踏切廃止が不可欠であると考えています。引き続き、地域に丁寧な説明を続けていきます」

そんな現状に対し、交通政策に詳しい桜美林大学の戸崎肇教授は…。

桜美林大学 戸崎肇教授:
今の公共政策は、住民の理解なしに進めることはできません。最終的な決定をくだす前に十分な話し合いをもとに、本当に廃止するかどうかその決断をすべきではないでしょうか。
(めざまし8 10月8日放送)