9月29日(日)、鈴鹿サーキットで行われたスーパー耐久第5戦。
そこに、大きな夢に挑む異色のドライバーがいた。

「なんとかスーパーGT500とスーパーフォーミュラで走りたい。目標はその1点なんで、突っ走っています」
ST2クラスで今シーズン2勝を挙げている強豪チーム、KTMSでステアリングを握る奥本隼士(おくもとしゅんじ)25歳。

レース歴はわずか3年。超異色な「レース人生」を歩むドライバーなのだ。
驚くべきは奥本のレースのルーツ。それはラジコン。

「5歳でラジコンを始めて小学校5年でタミヤのワールドチャンピオンシップで優勝しました」
幼い頃からレースに憧れを抱いていた奥本が最初に手にしたのはラジコンカー。2011年には世界一の称号を手にした。

――(ラジコンは)今のレースのトレーニングになっている?
なっていますね。やっぱり反射神経とか、動体視力とか、集中力とか。車の動きも外から見て「こうやったら早く走れるんや」とか。
そんな奥本がリアルレースの世界に足を踏み入れたのは、大学卒業を控えた2021年。

幼い頃の夢を諦められず、インターネットで検索した地元のレーシングチームの門を叩いた。
株式会社HERO’Sの青合(あおあい)正博社長は語る。

「大学生で就職活動しているということだったんで、今からレースするって、お金もかかるし時間もかかるし、『プロドライバーを目指したい』って言っているから、何を言っているんだろうと思った(笑)。何を言っているんだとうと思ったんですけど、彼の『やりたい』という情熱は伝わってきました」
現状、プロのドライバーのほとんどは、幼少期からカートを始め、ステップアップしてきた者ばかり。大学卒業を控えたレース経験ゼロの奥本がプロを目指すのは、無謀な挑戦と捉えられても不思議ではなかった。

それでも奥本の情熱に共感した青合社長は全面バックアップを決意。その決断の理由の一つ、それは奥本の特別な才能にあった。青合社長は当時を振り返る。
「習得していくスピードと、あとやっぱりラジコンをやってたんで、コースサイドでこの動きこうだろ、このラインでこう走らせた方が絶対早いじゃん、というのを2人で話している時に僕よりも理解しているんですよ。3年間ずっと彼と話してずっと過ごしていると、ラジコンってすごいなと思いますよ」

奥本自身もラジコン出身ならではの感覚を持っている。
「基本的に車に乗っている時はラジコンの風景が頭の中にある。上から見ている時にこういうコーナーってラジコンで走らせる時こうやったら速かったな、基本的には頭の中にはラジコンの経験も目の情報も残っていて、その俯瞰で見ているのは今でもそうですね」

周囲のサポートとラジコンで培った力で貪欲にステップアップに挑んでいった奥本。
さらに、今年3月には、スーパーGTのGT300クラスの名門、スバルのチームに自らアポなしで突撃営業。テストを受けた末に合格、チームに帯同することを許可された。

その情熱と行動力で憧れの舞台に一歩近づいてみせた。
そして、9月29日(日)に行われたスーパー耐久第5戦の決勝5時間レース。

奥本はチームの一員として約1時間15分の走行を担当。
一気に3位から首位へ躍り出る快走を見せ、チームの今シーズン3勝目に貢献した。

「スーパーGTの500クラスとスーパーフォーミュラでチャンピオンを獲りたいという大きな夢があるので、そこに向かってこれからも突っ走っていきます」
レースを始めてまだ3年。奥本はこれからも夢を目指して走り続ける。
(映像提供:STMO・GTA)
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