アメリカ大統領選挙の大きな争点の1つが、移民問題だ。
トランプ氏は9月の討論会で「移民がペットを食べている」と発言したことがきっかけで、
ハイチ移民が多く住む街では、住民と移民との分断がさらに深くなっているそうだ。
分断が加速する町を取材した。

人口6万人のうち4人に1人がハイチ移民

取材班が訪れたのは、アメリカ中西部にあるオハイオ州スプリングフィールド市。

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ここではレストランや食料品店など、至る所でハイチからの移民に出会う。

カリブ海の島国・ハイチでは国内の情勢不安が続いている。

そのため、アメリカは避難を希望するハイチ国民に一時的な滞在許可を与えている。

中でもスプリングフィールドは生活費も安く、仕事も見つけやすいことからハイチからの移民が急増。

人口6万人のうち4人に1人、約1万5000人がハイチからの移民となっている。

そんな移民の彼らは「猫やペットを食べるために、ここに来ることはありません」「時々、一部の人から『猫や犬を食べるのか?』などと聞かれます」と口にする。

トランプ氏「彼らは犬を食べている」

きっかけは9月、約6700万人が視聴したトランプ前大統領とハリス氏のテレビ討論会で飛び出した発言だ。

トランプ氏が、「スプリングフィールドで彼らは犬を食べている、猫を食べている。彼らは住民たちのペットを食べている」と発言。

ハイチからの移民を非難するこの発言に対し、司会者は「根拠がない」と指摘している。

「ハイチ人は犬を食べません。猫も食べません」

しかし、この発言以降静かな町が一変。

市役所や小学校などに爆破予告や脅迫が相次いだのだ。

5カ月前に家族とこの町に移住し、カリブ海料理店を営むケットリー・モイーズさんを取材。

トランプ前大統領の発言に「気分悪い…気分悪い…店の売り上げは落ち込み、仲間も怖がって店に来なくなりました。電話で『メニューに犬はありますか?猫はありますか?』と言われますがありません。ハイチ人は犬を食べません。猫も食べません」と被害を訴える。

ふるさとの味を懐かしむ、ハイチからの移民の憩いの場となっていたモイーズさんの料理店だが、売り上げは前の月から3割落ち込んだという。

ネット上に虚偽情報広がる

また、ネット上には虚偽動画が拡散。

「ハイチ人が町で軍隊を作っている」や「ハイチ人が猫を食べて警察に捕まった」などの、うその情報が広がり続けている。

こうしたうそ情報に「何匹かの猫が行方不明になっていました。どこに行ったか分からない」「実際に見たことはありませんが、この公園にはガチョウなどの動物がいました。『ハイチ人がそれらを捕まえている』と言う噂がありました」と不安に駆られる住民も。

ハイチからの移民の増加に伴い、町では住宅費が高騰。

黒ずくめ集団「ハイチ人に家なし」

また、彼らが起こした無免許運転による交通事故も相次いでいるため、元々住んでいた住民との分断が進んでいる。

住民は、「彼らによって8~9カ月で人口が倍増した」と話していた。

そんな中、取材中に全身黒ずくめの男たちが町を歩く異様な光景を目撃。

市外から来たという黒ずくめの集団は、「ハイチ人の家はここにはない」と書かれた幕を広げた。

そして、「アメリカ第一だ!私たちは国を守らなければならない。すべてのハイチ人を国外追放しなければならない」と叫ぶ。

すると、これを見ていた住民との間で口論が勃発した。

スプリングフィールドでは分断をあおる行為が相次ぎ、住民との衝突が続いている。

そのきっかけを作ったトランプ前大統領は、SNSに猫などと戯れる生成AI画像をアップ。
「ペットを守る大統領だ」と不法移民対策を訴えている。

トランプ前大統領の発言以降、身の危険を感じながらの生活を余儀なくされているハイチからの移民。

移民大国アメリカの大統領選挙まで、あと1カ月だ。
(「イット!」10月2日放送より)