福島県双葉町で、9月28日に震災後初めての花火大会が開かれた。東日本大震災・原発事故で避難を経験した花火師は、自身が感じた花火の感動を被災地の人たちにも感じてほしいと願い、当時5歳で避難した大学生は改めてふるさとの良さを実感していた。あの日から13年半あまり…それぞれが願いを込めて夜空を見上げた。

町へ帰る・訪れるきっかけに

2024年7月、花火の魅力を生かした一大イベントが開かれることが発表された。
花火師で作る福島煙火協会が企画した「双葉花火」は、2022年に復興拠点の避難指示が解除された福島県双葉町で1万発の花火が打ち上げられる。

双葉花火開催に向けての会議
双葉花火開催に向けての会議
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会議に参加した双葉町民の高倉伊助さんは「震災後、帰りたくても戻れない地域。その場所で開催されれば、年一回でも家族で住んでいたところに戻ろうという気持ちになってくれるのでは」と期待を寄せる。

双葉町民の高倉伊助さん
双葉町民の高倉伊助さん

町民が集まり、町の復興を伝えるきっかけになってほしいというのは、花火師も同じ思いだ。福島煙火協会の糸井秀一会長は「いろいろな状況のある町だが、たくさんの人に集まってもらって、そしてみんなで夜空を見上げて笑顔になってもらえたら、それで満足」と話す。

福島煙火協会の糸井秀一会長
福島煙火協会の糸井秀一会長

自身も避難経験 花火師の思い

福島県須賀川市の糸井火工。特別な思いで大会用の花火を作っていたのは、花火師の青山浩士さん。原発事故があった時は小学生で4年生まで山形県へ避難していた。青山さんは、当時見上げた花火の感動を今も覚えているという。

花火師の青山浩士さん
花火師の青山浩士さん

「花火師を目指した一番のきっかけは、郡山市で花火を見て勇気づけられたというか、そういうのをすごく感じた」と話す。
入社2年目にして、各地の大会で打ち上げの演出を任される青山さん。「双葉花火」では、あの時の思いを見る人にも感じて欲しいと願っている。

「自身が感じた感動を同じ境遇をもつ町民にも」思いを込めて制作
「自身が感じた感動を同じ境遇をもつ町民にも」思いを込めて制作

「お客さんの歓声を聞くと、やりがいをすごく感じる。震災にあって苦しんでいた方も少なからずいると思うので、双葉花火では勇気というか、そういうのを感じてもらえたら」と青山さんは話した。

2024年9月28日 双葉花火当日

2022年に復興拠点の避難指示が解除された福島県双葉町。この日、開催された故郷の姿を見てもらいたいと町が企画した「ふるさとを、見ようプロジェクト」には、県の内外から双葉町出身の18歳から20歳の若者たちが集まった。

若者たちが故郷の姿を見て回る「ふるさとを、見ようプロジェクト」
若者たちが故郷の姿を見て回る「ふるさとを、見ようプロジェクト」

「双葉で知っている人がいれば、もう一回再会できるかなって思って参加しました」と話すのは、宮城県の大学に通う脇坂玲名さん。震災当時は5歳。原発事故の後、家族で福島県いわき市に避難した。

震災当時は5歳 脇坂玲名さん
震災当時は5歳 脇坂玲名さん

震災当時のままの景色

「3月11日は、お別れ会があって幼稚園から早く帰った。母親と私は車の中にいて、それで周りを見たら地割れが起きて…」と脇坂さんは地震のときの記憶を話す。
当時のまま、変わらない場所…離ればなれになっても、長い時間が過ぎてもここが、大切なふるさとだ。

通っていた幼稚園で 友人と
通っていた幼稚園で 友人と

双葉っていいな

再会した友人たち、そして会場に訪れた約4500人の人と見上げた双葉町の夜空。打ち上げられた1万発の花火が、何度もふるさとを照らした。

2024年9月28日に開催された双葉花火
2024年9月28日に開催された双葉花火

「双葉っていいなと改めて思いました。私たちの年代は震災前のことも”覚えてないけど覚えている”一番下の世代なので引き継いでいかないと」と脇坂さんは語った。

夜空を照らす花火に決意を新たにした脇坂さん
夜空を照らす花火に決意を新たにした脇坂さん

脇坂さんは、双葉町で働くために一生懸命勉強をしているということ。震災当時の子どもたちが、大人になって双葉町をさらに発展させてくれることを願う。

(福島テレビ)

福島テレビ
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