2023年11月、宮崎市のスーパーの駐車場で生後9カ月の赤ちゃんがはねられ、死亡した事故の初公判で、73歳の男は事故の責任を認めた。安全確認を十分に行わずにバックしていた時の事故だった。スーパーの駐車場は人や車の往来で危険が潜んでいるものの、目的地についてドライバーにとっては気が抜ける瞬間でもある。痛ましい事故を二度と起こさないための取り組みを取材した。
「今でも受け入れられない」
起訴されているのは、宮崎市の73歳の無職の男。起訴状などによると、被告は2023年11月、宮崎市のスーパーの駐車場で、車検が切れ・自賠責保険に入っていない乗用車を運転していた。

安全確認を十分に行わずに車をバックさせたところ駐車場を歩いていた母親をはねて、母親が抱きかかえていた生後9カ月の赤ちゃんを死亡させたとして、過失運転致死傷や道路運送車両法違反などの罪に問われている。

初公判で被告側は、親子をはねて死傷させたことを認めた一方、乗用車は金を貸す担保として知人から譲り受けたもので、車検証や自賠責保険を確認しておらず、故意ではなかったとして車検切れなどについては無罪を主張した。
検察側は、亡くなった赤ちゃんの父親の陳述書を代読し、「あまりにも理不尽な別れを今でも受け入れられません。」「法律上許される限りの厳しい処罰を望みます。」などと遺族の感情を述べた。
店内アナウンスで注意喚起
この痛ましい事故をきっかけに、警察や宮崎市のスーパーでは、駐車場での安全を確保するための対策を進めている。

店内アナウンス:
ドライバーの皆さまにおかれましては、細心の注意を払い、徐行運転で走行いただきますようお願い申し上げます。小さなお子様をお連れのお客様は、必ずお子様と一緒に、車や自転車の横断をご確認いただき、ご通行いただきますようお願い申し上げます。

事故の現場となった宮崎市のフーデリー霧島店。このスーパーでは、事故が発生した翌日から、開店時と夕方の1日2回、店内アナウンスで駐車場での事故を防ぐための注意喚起を行っている。


3カ所ある駐車場の出入り口には「徐行」と標示し、各所に注意喚起の看板を設置したほか、店の入り口付近に車止めも設置した。さらに、特売日には警備員を増員するなどして、二度と痛ましい事故を起こさないよう取り組んでいる。

フーデリー霧島店 新田敏秀店長:
こういう事故をなくす取り組みを今後も疎かにしないことだったり、できるところはやっていって事故を防いでいきたい。
警察も安全対策の徹底を呼びかけ

警察も対策に乗り出している。事故の翌月には駐車場の管理者向けのガイドラインを作成し、県内のスーパーや新たにオープンする店などに、駐車場の安全対策を徹底するよう呼びかけている。
県警交通企画課 近藤圭課長補佐:
例えば駐車場内にハンプと呼ばれるようなものを設置して、物理的に速度を落としていくとか、速度を落として下さいというような看板の設置を依頼している。
警察によると、2024年1月から先月末までに、店舗や自宅などの駐車場で起きた人身事故は126件に上っていて、このうちおよそ2割が人が車にはねられた事故となっている。これは道路上の事故の割合のおよそ3倍で、「駐車場は公道での運転が終わったあとで気が緩みがちな場所」だと警鐘を鳴らしている。

県警交通企画課 近藤圭課長補佐:
駐車場内を走行する速度も、基本的には低速なので、低速だから安全だと誤解も招きやすい場所と思っている。公道と同じように、もしくはそれ以上に緊張感を持っていただきたい。

夕方や客が多い時間帯のスーパーは、車も多く、人もたくさん歩いていて混雑している。このような痛ましい事故を起こさないために、ドライバーは自分の運転を過信せず、車が止まる瞬間まで、気を緩めずに安全確保に努めてほしい。
(テレビ宮崎)