実りの秋を迎えた愛媛・内子町中川地区。早朝の田んぼの脇に草刈り機のエンジン音が響き渡る。音の主は、平均年齢77歳の「よろず屋なかがわ」だ。高齢化が進む地域で活動する彼らの思いに追った。

「よろず屋」が地域の困りごとを解決

「よろず屋なかがわ」は、高齢化が進む中川地区で力仕事が難しいお年寄りらの困りごとに対応しようと、2015年に結成された。

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リーダーの相原宝さん(76)は、グループ結成の理由について「畑とか家の裏とか、お年寄りが管理できない。そういう人を助けてあげようとグループを作った」と語った。

「よろず屋」は現在9人のメンバーで構成され、その活動は多岐にわたる。
水路掃除、お墓掃除、時には重機を使って作業をすることもある。

2023年は地元・中川地区を中心に、約280件もの依頼があったという。

内子町の総人口のうち、65歳以上の人の割合(高齢化率)は41.99%だが、中川地区だけを見ると6割を超える。

相原さんは約10年前から空き家の増加に危機感を抱いていた。

「息子さんが帰ってきて草刈りする家は良いけど、帰ってこない家はカズラとか雑木とか色んなものが茂って手が付けられない状態」と、ふるさとの景色が荒廃していく様子を憂い、「よろず屋」を立ち上げたという。

元“プロ”の技術と若手も驚きの活力

「よろず屋」のメンバーには、建設業や林業などの元“プロ”がそろう。

この日の作業は、草刈り。
相原さんは「大きな草が稲の上にかぶさっていたら足元が見えない。できるだけ周囲をきれいに刈っていく」と、その重要性を説明する。

最年長の影内彰さん(91)は昭和8年(1933年)生まれの大先輩だ。

作業の大変さを問うと、「いやいや、さほどないぞな。草刈りやったら何日やってもかまん。きれいになるのが楽しみ」と意気軒昂(いきけんこう)だ。影内さんは以前、森林組合で山の仕事や木切りをしていたという。

また、松井鉄雄さん(85)は「定年になるまでは建設業のダンプに乗ったり、重機を使ったりしよったんですよ」と、自身の経歴を語る。

一方、最年少の大森誠二さん(59)は「みなさん元気な、追いつけないです僕らでも」と、先輩たちの活力に驚く。

感謝の言葉を原動力に 次の世代へ

中川自治会の中田富恵会長は「(中川地区に)なくてはならない組織で、次の世代は私たちなんですが、そういった世代が引き継いでいかないといけない」と、「よろず屋」の重要性を強調する。

地区の住民からも「草刈りとかできにくい所をよろず屋に頼む。非常に頼りにされている。80歳を過ぎた人も多いけど、できるだけ続けてやってほしい」という声が聞かれた。

相原さんは、地域の人々からの感謝の言葉を原動力に「それがバネになるというか、みんなが喜んでもらえることは続けていかないといけない。やれる間は」と、活動への決意を新たにする。

中川地区の良いところをメンバーたちに聞いてみると、「何もないけどそれがまた良いね」「人柄が良い」「横のつながりが強い」と様々だ。

相原さんは「若い人が入って、できるだけ長続きができればうれしいこと。立ち上げたかいがある」と、活動の継続への願いを語る。

高齢化という課題に直面しながらも、ふるさとへの愛情と地域のつながりを大切にする「よろず屋なかがわ」。
生まれ育った地域を愛する熱い思いが、彼らの活動の原動力となっている。

(テレビ愛媛)

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