警察に届けられる「落とし物」にコロナ禍明けから、ある生き物が増えている。トカゲ、ヘビ、カメなど「エキゾチックアニマル」と呼ばれる生き物だ。その背景には、SNSでブームとなったことや、犬や猫より飼育が簡単という誤ったイメージが広まったことなどがあるようだ。

市街地に体長80cmのトカゲが

9月9日、広島・福山市の警察署が扱った「落とし物」は…体長80cmもある南米産のオオトカゲ「レッドテグー」。

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飼われていた家から逃げ出し、街中の道を歩いていたところを通りがかりの人に捕獲された。

捕獲した人は「トカゲが普通に道を歩いていた。大きかったので気持ち悪かった」と話す。

このような「エキゾチックアニマル」が「落とし物」として警察署に届けられる件数はコロナ禍が明けてから増加していて、広島県内では2023年は149件に上った。その中でも爬虫類などが急増している。

日本の自然環境の中で生息していない生物は、そもそも所有者がいることが前提のため、屋外で見つかると「落とし物」として扱われることが多い。

警察では、飼育の知識もなく、保管に苦労しているという。

広島県警 佐伯警察署会計課・二橋功課長:
生きものに関する知識も経験もないので、警察の負担が大きくなっているのが正直なところ。

イメージに反して飼育は難しい

それにしても、なぜ路上など外で発見されることになるのか。爬虫類専門店の吉田貴成さんは以下のように指摘する。

爬虫類専門店「ファインレプタイルズ」吉田貴成代表:
この子たちって見た目によらず力がすごいんですよ。しかも頭がいいので一回脱走すると、脱走したところを重点的に狙ってくる。「散歩がいらない」「鳴かない」という理由で、飼う人が多かったが、飼育自体は難しい。

13年間にわたって複数のエキゾチックアニマルを飼育してきた女性は、世話の難しさを痛感したという。

ヘビやトカゲを飼っていた女性:
大変だったのは、エサがそれぞれ違うので、それぞれに準備すること。世話の仕方も違うし、管理する温度も違う。カメレオンを飼っていたが、換気と湿度の管理が難しい。また、きれいな水じゃないとダメ。

専門知識はもちろん、電気代やエサ代などにかかる費用が膨大になるため、飼育に悩まされる飼い主もいるということだ。

在宅勤務がなくなり世話が難しく…

専門店を営む吉田さんのもとには、飼えなくなったため引き取ってほしいという相談も来るという。

爬虫類専門店「ファインレプタイルズ」吉田貴成代表:
飼えなくなったと言われる方は、大半が仕事が忙しくなったとか、今まではオンラインで会社の会議に参加できたが、コロナ禍が明けて、実際に出社が必要となったというのが理由。

中には、捨てられ、飼い主が現れないことも…。過去にはイグアナやヘビを吉田さんが一旦引き取り、最終的には店の常連客に里親という形で引き取ってもらったことも3件あったという。

飼うなら最後まで責任を

警察が「落とし物」を保管する期限は3カ月。それまでに引き取り手を探す必要がある。

佐伯警察署の二橋課長は、「引き取り手が見つからない場合は、長期間にわたり警察署で保管することもあり、ペットショップや動物愛護センターに相談して、飼育方法の指導を受けながらやっている」と「生き物」を預かる難しさを実感しているようだ。

二橋課長は、飼い主の責任感と意識の改善を訴える。

広島県警 佐伯警察署会計課・二橋功課長:
飼育する以上は、遺棄や脱走することが無いようにして、動物愛護の精神を持って終生飼育していただきたい。

命ある生き物に対して飼い主がどう向き合っていくのかが、いま問われている。

(テレビ新広島)

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