「感染事例のうち2~3割を防げた可能性」
接触確認アプリ「COCOA」の提供が始まってから2カ月余りが経つが、思ったように普及が進んでいない。
8月20日午後5時現在で、ダウンロード数は約1405万件、陽性登録件数は335件にとどまっている(厚労省のHPより)。
こうした中、福井県が7月8日の県議会予算決算特別委員会で、「接触確認アプリの導入によって、第1波の感染を2~3割防げた可能性がある」との検証結果を明らかにした。
福井県では、新型コロナウイルスの感染者が合わせて122人に上った3~4月を「第1波」と捉えており、この「第1波」の感染状況を検証。
その結果、感染者全員が接触確認アプリを利用していた場合、「感染事例のうち2~3割が発生を防げた可能性があること」が判明したのだという。
「2~3割」はどのような検証から判断したのか? また、検証結果を受けて、新たにどのような対策を打ち出したのか?
福井県の担当者に聞いた。
防げた可能性がある“2~3割”の根拠は?
――どのような方法で検証した?
まずは、福井県内の飲食店や職場内など、感染が拡大した32の事例を分析しました。そのうえで、それぞれの事例について、全員が接触確認アプリを導入していたと想定。
感染者の行動歴などから“接触日”を推定し、感染が伝播(=伝わり、広まること)した“時系列”を作成しました。
そして感染者が、接触確認アプリによる濃厚接触者である可能性の“通知を受け取った時期”と、“他の人に感染させたと推定される時期”の前後を分析。
その結果、接触確認アプリによる通知を受け取っていれば、他人との接触を避けるなどの行動抑制がかかるため、少なくとも7件について、他の人への感染を防ぐことができたであろうと判断しました。
32の感染事例のうち、少なくとも7件は防ぐことができたということから、「2~3割の感染が防げた可能性がある」と結論づけたというわけです。
――少なくとも7件の感染を防ぐことができた可能性がある。こう判断した理由は?
感染者が他の人に感染させたと推定される時期より前に、接触確認アプリによる通知を受け取っていたであろうと判断できたためです。
これによって、行動に抑制がかかり、他の人への感染を防げたであろうと判断しています。

――今回の検証で他に分かったことは?
例えば、感染経路について、「接待やカラオケを伴う飲食店関連(飲食店での感染者を介する職場・家族内などでの感染を含む)」が85%だったことも分かっています。
また、「マスクを外している」ケースで感染が起こっていることも分かっています。
検証結果を受け、打ち出した対策とは?
――今回の検証結果を受け、何か対策はとっている?
接触確認アプリの有効性についての検証結果を受け、県民の方に対して、アプリを積極的に導入するよう、広報媒体などを通じて呼びかけています。
また、感染経路について、接待やカラオケを伴う飲食店関連が多かったという検証結果を受け、県では7月17日から、感染防止対策をとる店舗などに「感染防止徹底宣言」ステッカーを発行する取り組みを始め、県民の方に対して、ステッカー掲示店舗の利用を推奨しています。
さらに、マスクをしていなかった感染事例が多かったことを受け、県民の方に対して、マスクの着用を徹底すること、マスクを外している際の行動に十分注意をしていただくことを呼び掛けています。
――十分な対策をとる店に「感染防止徹底宣言」ステッカーを発行。発行する際に何か基準はある?
発行する基準としては、各業界団体が作成するガイドラインを遵守し、感染症対策を実施していることなどがあります。なお、ステッカーの申請に当たっては、自己申告によりチェックをしていただくこととなっています。
ただし、申請内容に虚偽があった場合はステッカーの破棄・撤去を命じ、その旨を公表する場合があるとしています。

全員が接触確認アプリをインストールし、もし通知を受け取った場合は、他人との接触を避けるなどの行動をしっかりとる。こうすることで「2~3割の感染が防げた可能性がある」ということならば、アプリを利用する効果はあるのではないだろうか。
普及が課題となっている接触確認アプリ。福井県の検証結果が少しでも普及のきっかけになることを期待したい。
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