夏は帰省シーズン。例年であれば、親族らと再会したり祖先の墓参りをするため、地元に帰る人も多いはずだ。だがその習慣も、新型コロナウイルスが変えてしまうかもしれない。

全国的に感染者数が増加する中で、移動などで不特定多数の人と接触すると、当然だが感染リスクも高まってくる。そして仮に、帰省先でクラスターが起きた場合、自分だけではなく親族らにも多大な迷惑をかけることになる。

5日、新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身会長が、お盆休みの帰省について政府に緊急提言。お盆休みの帰省では、高齢者と接する機会や飲酒、飲食の機会が多くなるとして、マスクや換気などの感染防止策を徹底し、大人数の飲食を避けるなど、高齢者などへの感染につながらないよう注意を促した。

調査では約8割が「帰らない」

こうした背景からか、リサーチ会社のクロス・マーケティングが、全国の20~69歳の男女1100人にアンケート調査を7月14日にしたところ、約8割が今年は帰らないという結果も出ている。

調査では、お盆に帰省する予定はあるかを聞いていて、全体の78.2%が「帰省する予定はない」と答えている。このほかの回答は、「宿泊を伴う帰省をする予定」が10.8%、「日帰りの帰省をする予定」が10.1%、「オンライン帰省をする予定」が2.1%だった。

そして、宿泊または日帰りで帰省する予定のある人に帰省先までの距離を聞くと、「同じ都道府県内」が47.1%、「近隣の都道府県内」が29.4%、「それ以上の距離」が23.5%となった。

提供:クロスマーケティング

このほか、帰省に関する最大の心配事については、「公共交通機関で移動中の“3密”」、「知らない間に、帰省先の人にうつしてしまうこと」、「自分が感染している可能性」と答える人が多かった。さらに、お盆の帰省を心配に思う人の割合は、東京・千葉・埼玉・神奈川の一都三県がそれ以外よりも多かったという。

提供:クロスマーケティング

調査結果からは、長距離の移動を伴う都市圏から地方への帰省などは、特に帰りづらいと感じていることが分かった。一方で、それでも帰省したい、帰省しなければならないという人もいるはずだ。

コロナ禍での帰省は悩む人も多いだろうが、どう考えればいいのだろう。国内外で新型コロナウイルスの診察に携わる、総合診療医の山田悠史さんに見解を伺った。

帰省のメリットとデメリットを天秤に

――コロナ禍での帰省はどう判断すればいい?

一律に賛成、反対という意見はなく、結局はケースバイケースだと思います。悩んでいる人は帰省することでのメリットとデメリットを考えてみてはいかがでしょうか。感染者が多い東京から帰省するのなら、自身が感染している可能性がある、他人に感染を広げるリスクがある中で、帰ることにどれだけのメリットがあるか。

例えば、危篤状態となった父の死に目に会いたいのなら、それはかけがえのない瞬間で、危険を冒しても会いに行きたいと思うはずです。そこを感染リスクがあるから...となるのも、少し違う気がするのです。そうした部分を、天秤にかけて考えてみてはいかがでしょうか。

総合診療医・山田悠史さん

――政府関係者からは「GoToキャンペーンの旅行と帰省は違う」という意見もあるが?

意見を善意で捉えれば、GoToキャンペーンでの旅行はほぼ他人と接しないのなら、感染リスクはそこまで大きくない。帰省は必ず誰かと誰かが出会う旅ですので、その個人間に感染者がいれば、感染が起こり得るという意図ではないでしょうか。

ただ、GoToキャンペーンも帰省も、公共交通機関を使えばリスクは同じですし、感染が蔓延している地域から蔓延していない地域に出向いて、飲食店を利用したり、イベントに参加したりすると感染が広がる可能性はあります。本質的にはどちらも同じではないでしょうか。

「命の危険につながる可能性がある」と考えて

――帰省にはどんな感染リスクが潜んでいる?

感染リスクは、主に感染者と非感染者の接触で生まれるので、それがある全てのシチェーションがリスクと言えます。帰省に特化して考えると、お子さん世代がウイルスをご両親や祖父母に感染させてしまい、重症化や命を奪うことが最も避けたい、怖いことだと思います。

地域の感染者の割合にもよりますが、人が集まる環境はリスクになりえるので、例えば、「せっかく帰省したので親族一同で集まろう」といった行動は、リスクを高めると思います。


――帰省を控えたほうがよいシチェーションは?

帰省する側は、外出や他人との接触が多い人は控えたほうがよいでしょう。出先の営業や大きな会議に参加していると知らないうちに感染する可能性もあるので、「自分はウイルスを持っている可能性があるのでは」と十分に考えてから、行動する必要があると思います。

受け入れる親族側としては、心臓病、糖尿病や高血圧、がんの治療中、喫煙者、肥満などの持病をお持ちの親御さん、祖父母がいる場合は注意が必要でしょう。合併症の可能性や致死率は年齢を重ねるほど上がるので、親御さんが大丈夫でも、80代、90代の祖父母が同居している場合は、一度感染させたら命の危険につながる可能性があると考えて行動するべきだと思います。

家族に持病がある場合はより注意が必要(画像はイメージ)

――帰省したい場合にできることはある?

最も安全に帰省したいときには、帰省の2週間前から自身を隔離するという方法があります。移行できるなら、自宅で完全なリモートワークとし、2週間で症状が出ず、他人とほぼ接点もなければ、感染の可能性は限りなく低い。この状態でマイカーで帰省するという方法です。


――帰省中に避けたほうが良い場所などは?

場所よりは、人の多さや騒がしさで考えるべきでしょう。屋内で大声を出すようなイベント、換気の悪い場所だと感染リスクも高くなります。一方で、墓参りや自然の中でのサイクリングなどでは、密集することは考えにくいので感染リスクは低いと言えるでしょう。3密に遠ければ遠いほど、リスクは低いと考えてもらえればと思います。

可能なら「オンライン帰省」も視野に

――帰省しない場合にしてあげられることはある?

医師としてアドバイスできることではないですが、病院では感染リスクを避けるため、患者の家族に面会を控えてもらうことが多くなりました。その代わりに病院がタブレットを購入し、テレビ電話で面会してもらったり、病状の説明をする機会を増やしています。

例えば、これと同じように、実家のご両親にタブレットをプレゼントして、テレビ電話をするのはよい方法だと思います。直接顔を合わせることを避けつつ、帰省の代替方法となれます。

テレビ電話によるオンライン帰省も一つの方法(画像はイメージ)

――夏の帰省だからこそ、注意したいことは?

新型コロナウイルスに関しては、夏だからということはないと思います。ただ、コロナばかりに気を取られて、熱中症や食中毒などの病気に対する注意がおろそかになる可能性はあるでしょう。例年と同じように、夏特有の病気にも注意することも大切ではないでしょうか。


――帰省を悩んでいる人に伝えたいことは?

先が見えにくい状況ではありますが、ワクチンや治療薬の開発も研究されています。絶望して「もう帰省できないのか」とは思わず、「今年は我慢して来年か再来年には行けるかな」などと、考えを切り替えるのも大切だと思います。

それでもなお、親の体調が心配だったり、来年はもう会えないかもしれない状況で悩まれている状況では、既に感染対策をされている人も多いでしょう。これが正解というアドバイスはできませんが、帰省をしたからといって後悔したり、周りの目を気にすることもないと思います。
 

両親や祖父母の健康状態、年齢によっては一度の感染が命の危険につながる可能性もあるとのことだった。

帰省するかどうかは個々の自由だが、そこで得られるものと感染リスクを比べて、今年しなければならないことなのか、他の代替方法はないかを考えてから行動すべきだろう。

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