静岡県藤枝市に住む91歳の男性は毎日、ラジオ体操や自転車、さらには山登りに励んでいる。そのハツラツとした姿は地域の中でもちょっとした有名人だ。自宅でも趣味の機械工作に熱中し、オーディオ機器なども自分で作った。男性が毎日を懸命に生きるのはワケがある。
ラジオ体操は10年間で休み2回

藤枝市に住む伊藤和美さん(91)。
10年前から近所に住む人たちと共にラジオ体操を始め、これまでに休んだのはわずかに2日だという。
伊藤和美さん:
ただこうやってボーとしていてもしょうがない。貧乏育ちなのでボーっとして立っていられないんですよ

ラジオ体操を継続している証が足元にあった。
伊藤さんの定位置だけ、雑草がなくなっているのだ。
伊藤さんは「この頃気づいたんですよ。別に僕が草を取ったわけではないけど、定位置がこうなっちゃって」と笑う。
「病院がどこにあるか知らない」
91歳とは思えないほどハツラツとした伊藤さんは地域の中でもちょっとした有名人だ。

近所の人は「長い間、町内会長としてすごく一生懸命に私たちのために働いてくれて、お父さんみたいな感じ」「”化け物”ですよ。医者(病院)がどこにあるか知らない、薬を飲んだことがない。ここ(公園)へ来るのに休まないんだよ」と、伊藤さんのハツラツぶりに驚きを隠せない。
自転車や山登りも日課

ただ、元気の秘訣はラジオ体操だけではない。
“相棒”の自転車に乗って、ほぼ毎日、市内の蓮華寺池公園へと向かう。
清水山に登るのが日課となっているからだ。

記者が「ちょっと休憩しませんか?」と懇願しても、伊藤さんは「え?休憩?」と笑い飛ばし、すました顔で登っていく。
この日は最高気温が30℃を超える真夏日だったが、伊藤さんは休むことなく登頂した。

伊藤和美さん:
気持ちいいですよ。だってずっと見えるじゃないですか、向こうの伊豆半島から。遠いけど下田の方まで見えますからね。いくら長生きしていても、寝ていたらしょうがないですからね。やっぱりこうやってここへ登って来たりして、健康が一番幸せじゃないですか
オーディオ機器なども自作
屋外で体を動かしている分、自宅ではゆっくり休憩と思いきや…。

伊藤和美さん:
これは自作のコンピューター、全部手作りです。これはデータでね、こっちでいろいろやる
実は自らプログラムしたコンピューターやオーディオアンプを作ることが趣味で、自身が手掛けた作品で音楽を聴くことが「何よりも癒しになっている」と話す。
伊藤和美さん:
(Q.作るのは大変では?)大変なところがおもしろい。何でも自分で作らないと気が済まないんですよ
モットーは「何かおもしろいことを」だ。
亡き妻の分まで生きる

「楽しい人生だった」とこれまでの91年間を振り返るが、一方で悲しい別れもあった。
今から10年前、半世紀以上連れ添った妻が心筋梗塞により突然他界。
伊藤和美さん:
もう線香はね、3度3度あげています。「しょうがねえ旦那だ」と(妻は)思っているでしょうね。それはやっぱり寂しいですよ。女房は同じ学校を出て、何でもいろいろね、いい女房だったからね

それでも、妻の仏壇の前で胸を張って日々の報告ができるよう懸命に生きることを誓ったという。
伊藤和美さん:
(Q.奥様の分まで?)そう、(妻の分まで)生きなければいけないと思って。元気で長生きするしかないですよ。元気で続けられたらそれが一番です
これからも1日1日を満喫することが伊藤さんの今の目標だ。
(テレビ静岡)