9月23日に投開票が行われる立憲民主党の代表選に4人が立候補した。「BSフジLIVEプライムニュース」では全候補者をスタジオに迎え、代表選の先に向けた戦略と党勢拡大策を中心に議論した。
吉田氏の推薦人確保に野田氏からの「貸し」はあったのか
竹俣紅キャスター:
他の候補者との政策における違い、そして政治家としての強みは。まずは野田さん。
野田佳彦 元首相 立憲民主党最高顧問:
私が特に力点を置くのは政治改革。疑似政権交代では政治を正すことはできない。今の政治資金規正法改正に抜けている企業・団体献金、政治資金パーティー、政策活動費などをきちんと位置づけ、政治状況を変えていきたい。

反町理キャスター:
有権者から「違うだろう、経済をなんとかしてくれ」という要求はないか。
野田佳彦 元首相 立憲民主党最高顧問:
要求はいろいろある。ただ、どの党の支持者も無党派層も裏金問題は決着がついてないと思っている。
枝野幸男 立憲民主党前代表:
今の国民生活が厳しい状況にあり、私は経済という切り口から「人間中心の経済」というビジョンを掲げ整理した。また私は東日本大震災のときの官房長官で、立憲民主党にとってどん底だった「希望の党騒動」の危機にも対応した。この経験は認めていただけると思っている。
反町理キャスター:
今の日本にとっての危機とは。
枝野幸男 立憲民主党前代表:
この30年間、日本がどんどん国力を低下させた結果、国民生活が疲弊している。例えば今までいわゆるゼロ金利政策でごまかしてきたが、もう世界的にはゼロ金利ができない中、急激な円安で物価高になっている。このまま円安が進めば物価は上がり続け、富がどんどん海外に出ていき大変なことになる。本当にギリギリに追い込まれている。
泉健太 立憲民主党代表:
私は粘り強さ、将来性を見ていただきたい。2021年の代表選では、党内の先輩方が「ちょっと今回はやめておきたい」という状況だった。そこから、今回の代表選に勝てば政権にチャレンジできると思っていただけるまでになった。3年間やってきてよかったが、ここで譲るわけにはいかないという思いがある。
今回、日本を伸ばすというスローガンを掲げている。立憲民主党はどうしても成長より分配の側に立つ部分が強調されてきた。だが、我が党にも産業政策、金融政策がある。「人から始まる経済再生」として、環境・エネルギー政策、医療、デジタル、観光、農業などに投資して経済を盛り上げていく。また新NISAは拡充の方向にするなど、皆さんの資産形成を応援する。
吉田晴美 立憲民主党衆院議員:
私は、今の最大の危機は少子化だと思っている。この国の力は人であり、若い世代が自分に自信が持てない、この先の日本を憂いているなど、人にエネルギーがない国はダメ。若い世代から支えていき少子化を打破すること。そのためには教育が重要。

反町理キャスター:
吉田さんの推薦人20人の中に、これまで野田さんを支援してきた千葉県選出の国会議員である奥野総一郎さん、小西洋之さん、谷田川元さんがいる。「貸し借りがあったのでは」と疑ってしまうが。
野田佳彦 元首相 立憲民主党最高顧問:
いや、貸し借りはないですよね。
反町理キャスター:
すると、このお三方が吉田さんの推薦に行ってしまったことをどう見たらいいか。

野田佳彦 元首相 立憲民主党最高顧問:
大局的な見地から(笑)。
反町理キャスター:
にっこり言われるといじりようがない(笑)。「大局」。
野田佳彦 元首相 立憲民主党最高顧問:
今回の代表選挙は、複数の人が出ていろんな立場から議論をすべきだと言ってきた。自民党には多く出てきており、我々も活気ある代表選挙がしたいと。私にとっては弟のような連中がおもんばかって、私が言い続けてきたことに貢献しようと思ったのだろう。
反町理キャスター:
なるほど。吉田さんは?
吉田晴美 立憲民主党衆院議員:
3名とも憲法審査会で議論している仲間であり、大変お世話になっている先輩方。私自身はグループに入っていないので、いろいろな立場や考え方の人からの推薦があるのがまさに多様性でよいのかなと。
候補者調整の可能性を唱える野田氏、慎重姿勢の3氏
竹俣紅キャスター:
野田元総理は民放番組で「他党が与党に勝てるなら、個別の事情でなく全体での判断が必要」と小選挙区で立憲候補者をおろす候補者調整の可能性について述べた。泉さん、異論は。
泉健太 立憲民主党代表:
今もいろんな形で各党が努力している中途の段階。その流れを丁寧にやっていくこと。また、立憲民主党としていかに勝つかという勝負をしていかないと全体像がぼけてしまう。

枝野幸男 立憲民主党前代表:
野田さんがそんなことを思っているわけがないのはよく知っているが……。
反町理キャスター:
えっ、野田さん嘘ついてるの?
枝野幸男 立憲民主党前代表:
いやいや。だがミスリードの可能性があり、まずは「自力で戦う」。2017年に政権を担うため前原さんが全体の判断をした結果、野党は大変なことになった。党としての大きな動きを無理やりやろうとした結果、この再来になるのを恐れる。

吉田晴美 立憲民主党衆院議員:
候補者調整はセンシティブで、丁寧にやらなければ。地域で頑張ってきた候補者には、家庭や仕事などいろんなものを差し置いて政治活動している方もたくさんいる。上から「調整だから」というのは乱暴かも。
野田佳彦 元首相 立憲民主党最高顧問:
私は一般論として申し上げており、あくまで今回の目標は自公の過半数割れ、そして野党の議席の最大化。やはり自民党と公明党が組んでいるところはとても強く、なるべく候補者を調整して一本化をしていくということに尽きるということ。無理して候補者を出して他の政党にぶつけることをやってはいけないという意味も込めた話。
泉氏・吉田氏の「食料品への非課税」実現可能性は
竹俣紅キャスター:
他の候補者の政策・考えについての確認や疑問などは。まず野田さん。
野田佳彦 元首相 立憲民主党最高顧問:
政策は財源の確保の見通しがあって話すのが基本。そこで泉代表の「食料品のゼロ税率も検討の可能性」という話。5兆円の減収になると計算できるが、どう他で補う見通しか。

泉健太 立憲民主党代表:
検討するという表現をしている。党内に食料品の税率を下げることについて非常に大きな声がある。党として掲げてきた給付付き税額控除についても真摯に議論をするべきだが、制度としてわかりにくく、シンプルに食料品の税率を下げる方が良いという意見もかなりある。実は、給付付き税額控除のほうが4〜5兆円ですまない可能性もある。何をどれほど還元するのか議論すべき。
枝野幸男 立憲民主党前代表:
総選挙が10月〜11月にあるかもしれない中、党として決めた戻し税の方式があるのに代表自らが食料品のゼロ税率について言うと、政権を取ればすぐにでもやってくれると世の中をミスリードする心配がある。だが、税率は法律を変えなければ下げられない。野党・自民党が参議院でこれに乗ってくれる見通しはあるのか。給付なら衆議院だけでできる。
泉健太 立憲民主党代表:
政権を取っても全部をすぐにやることはできないと私は繰り返し言っている。ミスリードになるとは思わない。また、給付付き税額控除の話を取り下げているわけではない。

枝野幸男 立憲民主党前代表:
気持ちはわかるが、選挙が終わってから党内でゆっくり議論すべきでは。
野田佳彦 元首相 立憲民主党最高顧問:
打ち出した以上は責任が発生する。「税は国家なり」。他の政策テーマより深い洞察のもとで発言しなければいけない。
吉田晴美 立憲民主党衆院議員:
「私は税額控除の対象者なのか」という点を国民の皆さまにどう伝えるかが重要。エンゲル係数の高い学生時代に食料品に税がかからないイギリスに住んでいたが、消費税は高くとも痛税感がなかった。食料品の非課税は大きい。
野田佳彦 元首相 立憲民主党最高顧問:
感情的にはよくわかる。だが高級食材も非課税でいいのか、といった根本的な問題がある。
憲法改正についてどう考えるか
竹俣紅キャスター:
吉田さんからどなたかにご質問は。
吉田晴美 立憲民主党衆院議員:
野田議員に、憲法と自衛隊に関して。2021年の総選挙の選挙公報を全部調べたが、憲法に触れた議員の割合は18%だった。それで今、憲法かと思う。立憲主義の観点から問題があると感じるが。

野田佳彦 元首相 立憲民主党最高顧問:
異論ない。立憲主義の観点で「論憲」が必要。一字一句変えるべきではないとか、不磨の大典だとは思わない。私は昔出した本で、自分たちで新憲法を作るなら自衛隊をきちっと位置づけるべきだと議論した。ただ、今9条を変えて自衛隊を位置づけることに多くの国民は必要性を感じていない。現実的な外交や安全保障の政策をもっと詰めていくべきという立場。
反町理キャスター:
枝野さんはホームページで「専守防衛を逸脱し、立憲主義を破壊する、安保法制を前提とする9条の改悪には反対」。この立場は今も変わらず?

枝野幸男 立憲民主党前代表:
そう。憲法9条も良い方向に変わるならありだが、今自民党が議論しているものは全部悪くなる。要するに自衛権の範囲について、どこまで可能なのかわからなくしようとしている。政局的にこれをやろうとしている自民党の姿勢とは明確に戦う。
泉健太 立憲民主党代表:
例えば他の政党が立憲民主党に対して、憲法を条件に一緒にやろうと言ってきたとき、それはないと思う。国民の皆さんからしても優先順位は高くはないし、政権第一期目で本当に憲法改正をやるのか。まずは国民生活、政権の安定、政治改革だろうと言いたい。
(「BSフジLIVEプライムニュース」9月10日放送)