夏休み、多くの人でにぎわった宮崎市の青島海水浴場。ここには、海辺の安全を守り、海水浴客の命を守る人達がいる。この夏、大けがを乗り越えた元競輪選手がライフセーバーとして新たなスタートを切った。そこには、命の狭間を経験したからこその強い使命感があった。

元競輪選手のライフセーバー

にぎわいを見せる青島の海を静かに見つめる男性。

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青島ビーチセンター「渚の交番」のライフセーバー、宮崎市出身の平田大毅さん(48)。元競輪選手だ。

平田さんは1997年にプロデビュー後、競輪選手としてキャリアを築いていた。

平田大毅さん:
趣味の延長戦でしたね。結局、その趣味が仕事になっちゃったんで、「休みの日に何やっているの?」と選手時代に聞かれたら「そういえば僕、趣味ないわ」という感じ。

人生を変えた事故

選手生活21年目の2018年5月。平田さんの人生が一変する。落車した前の選手を避けようとした矢先の事故だった。

平田大毅さん:
ちょうど立とうと思ったときに、足が動かなかったんですよ。それこそ金網越しのお客さんが「あの子死んでるんじゃない」と話す声が聞こえてきて、「生きとるわい」と思いながら。

この事故で、平田さんは脊髄を損傷し、腰から下の感覚を失った。

けがをして引退することにはなったが、競輪選手にならなきゃよかった。という気持ちは「1ミリもなかった」という。

さらにその後、コロナ禍に突入。なかなか外に出る勇気を持てず、気分も沈みがちだったという。

平田大毅さん:
リハビリを受けて、あとはもうずっと自宅にいるという形が何年も続いちゃったので、その生活が根付いちゃって。

新たなスタート

「車いすでできることなんか、何もないって思っていたが、背中を押してもらって」と平田さんは話す。

平田さんはこの夏、青島で新たな挑戦をすることを決めた。海水浴シーズン、青島海水浴場の「渚の交番」では、ライフセーバーが約10人体制で海水浴客の安全を守る。

平田さんの仕事は、水難事故を未然に防ぐための「監視」。遊泳範囲を超えて泳いでいる人がいないかなど、双眼鏡を覗いてくまなく監視し、見つけたらすぐに報告する仕事だ。

競輪選手時代からトレーニング指導などで付き合いがあった、渚の交番の小玉センター長は「ライフセービングって、溺れて助けるのではなくて、溺れる前にどう予防するのかがポイントなので。命に関わることを経験したので、やっぱりそういう気持ちも分かるだろう」と話す。

取材したのは、平田さんがライフセーバーを始めて1カ月というタイミング。

平田大毅さん:
けがが原因で、ここから下の汗がかけなくなっちゃっていて、始めたばかりのときは、ご飯も入らないくらいしんどかったんですけど、徐々に休み方とか覚えてきて、ちょっとずつ自分の体力も上がってきていると思いながら続けさせてもらっています。

命に関わる大けがを経験した平田さんだからこそできることもある。

平田大毅さん:
命の狭間というか…。そういうことを経験したので、誰よりも一番、命の大切さを伝えるべき立場なのかなと思っていて、間近で人の危ないところを未然に防ぐというのは自分の中では使命感がある。

これからの目標を聞くと…

平田さんは「これからも出会いがたくさんあると思う。その出会いを大事にして、ハッピーに生きていければいい」と望む。

次なるゴールに向けて、平田さん自身の新たなレースがスタートしている。

(テレビ宮崎)

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