ホストの手で家族が壊される…。そんな事態が今も起きています。

日本一の繁華街・新宿歌舞伎町。フジテレビ情報番組「めざまし8」取材班は、大久保公園を取り囲むように立つ“売春”待ちの女性たちの多くが、ホストクラブでの高額な売掛金、いわゆる“ツケ”を発端として体を売るという実態を放送し続けてきました。

人生を狂わされた女性たちは「本当は体を売りたくない」と悲痛な声を上げます。

取材を続けると浮かび上がってきたのは、「悪質ホスト」の“性的搾取ビジネス”。今回は、ホストに娘を奪われ、絆を壊された複数の家族を取材しました。

 “悪質ホスト”から娘を救いたい

新宿歌舞伎町に拠点を構える青少年を守る父母の連絡協議会、通称「青母連」。歓楽街でのトラブルから青少年を守ることに特化した団体です。

さらに、ここは“悪質ホスト”から愛娘を守りたいと、切実な思いを抱えた親たちが全国から助けを求めにくる“駆け込み寺”でもあります。

私たち取材班は、その親たちを取材。すると、ホストの手で簡単に家族が壊されていくまでの日々について、話を聞くことができました。

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2023年11月、青母連に駆け込んだのは、「ホストに依存する19歳の娘」の母親。

依存症治療の病院などを受診させましたが、娘の“ホスト依存”が治ることはなく、歌舞伎町の駆け込み寺に来たといいます。

母親が気付いたのは3カ月前、娘の部屋で見つけた12万9700円の青い伝票、通称「青伝」がきっかけでした。青伝は売掛金が書かれる伝票のことで、多くのホストクラブに存在します。

娘は、「二十歳になる前の記念に行こう」と向かったホストクラブで、タイプのホストに沼っていくことに。母親はそんな娘の姿に思わず声を荒げて怒りました。しかし、娘は「私はほかのお客さんとは違う」と聞く耳を持ちません。ホストと出会って半年と短期間ですが、これまでの売掛金は200万ほどになります。

私たちが取材してきた被害者の中では、比較的売掛金が少額でしたが、大きな問題は他にもありました。

「娘は妊娠、中絶をしています」

母親は重い口を開きました。

出会って半年で妊娠、中絶「それでも私は特別」

19歳の娘は、大学に入学した矢先にホストとの子を妊娠、そして中絶しました。母親は当時を思い出し、声を詰まらせながら私たちに話してくれました。

娘からは「相談したことをホストには内緒にして欲しい」と言われたといいます。中絶の同意書にサインをするためだけに病院に来た憎きホストに、声をかけることさえできませんでした。

娘の中絶手術に立ち会うという残酷すぎる現実。母親の怒りと絶望はいかほどのものだったのでしょうか。私たちはあえてつらい質問を投げかけました。

「娘さんも傷つき、お孫さんの命がなくなる場面を直視した時、どのような感情になりましたか?」

母親は言葉に詰まります。そして、絞り出すように「普通ではいられませんでした。ただ、やっぱり娘が一番大変だから。自分がしっかりしなきゃいけないって…」と答えました。

思わず現実逃避したい状況にも関わらず、娘への愛であふれる母の強さ。

それでもまだ娘はホストの沼から抜け出せていません。今も「私だけは特別」と思い続ける娘。

母はこう言います。

「ホストは若い女の子の気持ちの隙をついてお金だけじゃなくて、全部を奪っていく」

なぜこのようなトラブルが相次ぐのでしょうか?取材を進める中で、私達はその理由の一端にたどり着きました。それは“マニュアル”の存在です。

入手した“悪質ホストマニュアル”

取材班が入手したのは、新人ホストがホストクラブで研修を受けた際、その内容をメモしたノート。中にはホストの心得やテクニックが書かれていて、ホスト向けのいわゆる“マニュアル”のようなものです。

「ホストクラブに来る理由 心の空洞を埋める」と書かれていたほか、「マインドコントロール」と書かれた文字は重要であることを意味するのか、赤字で書かれていました。

また、具体的な方法ついては「他店に行けなくする 『好きな担当がいるのに他店に行く女の子ってなんなんだろうね』と姫に言う」と書かれていました。

これはホストの間で「地雷を置く」と呼ばれているテクニックです。客の女性との会話の際にそれとなく自分の「嫌いな女性像」を伝えることで女性の行動を制限し、ホストの理想の女性に仕立てていくのだといいます。

「日常から地雷を常に言葉で発する」

女性からお金を引っ張り続けることができるようにホストはマニュアルの手口を実践しているのです。こうして女性を沼らせていく悪質ホスト。

ホストのために娘が風俗嬢になったという母親に話しを聞くと、恋人関係と思わせて沼らせていく手口の詳細も明らかになりました。

ホストのために風俗嬢になった娘…

「娘は最初、彼氏ができたようなことを言っていたんで、本人としては彼氏ができたつもりだったと思うんですね。それが、『俺の働いている店に行かないか』みたないな話になって引き込まれていくので。最初はそのお店に行って、風俗の仕事につながってるというのは想像もつかないことだった」

ホストと娘が“恋人関係”になったという母親。

異常に気付いたのは部屋にあった“婚姻届”でした。

「これはホストクラブの名刺ですね、担当を決める時の名刺だと思います」

そう言って見せてくれた名刺の裏面には「婚姻届」という文字がありました。これを発見した時、「娘はものすごくまずいところに足を踏み入れたなと思いました。これはもう緊急事態だなって。大変なことが起きるなって…」と思ったといいます。

母親の悪い予感は的中します。

娘はホストクラブに通い続けるために風俗嬢に…。

母親は言います。

「私はなんとか子供の命を守りたい。商品価値がなくなったらホストに捨てられる。捨てられた後どうなるかというと、大体精神疾患、髪も心もボロボロになってしまうと話を聞いているので。私はもうこれ性的搾取ビジネスだと思っています」

“性的搾取ビジネス”という闇…。同じように娘が風俗嬢になったという別の母親は、「ホストは娘を金づる扱いしている」と話します。

娘が“風俗嬢” 父“うつ病”で母“売掛金肩代わり” 

「夫の方が少し娘の生活に病んでしまって。うつ病と診断されました」

娘は電車で2時間かけて歌舞伎町のホストクラブで遊び、何事もなかったかのように家に帰る生活を続けていたといいます。次第にバイトではお金が足りなくなり、風俗の仕事もするようになりました。

父親がホスト通いをやめるよう説得しても娘はやめることができず、説得に疲れた父親はうつ病になってしまいました。

娘がホストで作らされた多額の売掛金を肩代わりした母親もいました。

手元にたくさんの領収書を持つ母親は、「500万、234万、438万…」と金額をつぶやきます。

「娘は本当に思い詰めているし、『払わないと私は死ぬ』って言うんですね。払わなかったら本当に娘はホストに殺されるかもしれないなと思いましたので、期限も迫っていましたので仕方なく払ってしまいました」

総額1800万もの売掛金を娘の代わりに支払ったといいます。

「マッチングアプリで知り合って恋人のような関係になった時にホストクラブに誘われて。そこからあっという間に…」

使う金額は跳ね上がっていったといいます。

「洗脳に近いことが行われていると思いました。色んなスキルが組み合わされていて」

入手したマニュアルにもあるように、ホストは女性を“マインドコントロール”して、あっという間に女性の心に取り入ります。巨額の売掛金の支払い、風俗への斡旋など、悪質ホストは女性を性的搾取ビジネスの歯車として使い続けます。

青母連の玄秀盛代表によると、歌舞伎町では売掛金が廃止になったものの、都内の他の場所では売掛金は依然として横行していて、被害相談は増え続けているといいます。「悪質ホスト」が絡んだ家族崩壊は今も続いています。

「めざまし8」が追い続け、その後国会でも議論されることとなった「“悪質ホスト”問題」。

なぜ女性たちはホストに通うため体を売るのか?そして、売掛金廃止の動きの中、ホスト側の本音は?

日本特有の社会問題を日本一深く取材したフジテレビの番組が「令和の日本の夜」の実態を描き出します。

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