全国最多の原発が立地する福井県。原発敷地内にたまり続ける「使用済み核燃料の県外搬出計画」で、関西電力が計画の主軸にしていた青森・六ケ所村の再処理工場の完成目標が2年半遅れることになった。
今回の計画見直しは原子力政策に大きく影響する可能性があり、福井県は関電に対し「不退転の覚悟」を求める姿勢だ。

策定したばかりの計画を見直しへ

8月30日、関西電力原子力事業本部の水田仁本部長が福井県庁を訪れ、関西電力が2023年に策定したばかりの「使用済み核燃料の県外搬出計画」を見直すことを報告した。水田本部長は「できるだけ速やかにロードマップの見直しに着手する」と述べた。

この記事の画像(13枚)

40年を超える原発の再稼働の条件として、2023年10月に関西電力が県に提示した“約束”を、自らがわずか1年足らずで反故(ほご)にしたことになる。

関電の報告を聞いた杉本知事は「大変遺憾。2023年の10月にロードマップで合意していたが、それがなくなった状況に立ち戻っていることをしっかりと受け止め、不退転の覚悟を示していただく」と、これまで関電が幾度となく繰り返してきた「不退転の覚悟」という発言を引き合いに出し、「確実に実行できる搬出計画の提示」を強く求めた。

発端は再処理工場の完成延期

そもそも搬出計画の遅れは、青森・六ケ所村の「使用済み核燃料再処理工場」の竣工の遅れに端を発する。この再処理工場の運営を担う日本原燃は計画当初、2024年9月末までの完成を目指していたが、国の審査が間に合わず延期する事態になり、完成目標を「2026年度中」に変更した。

当初の完成予定は2024年9月末、それを「2026年度中」に変更していた
当初の完成予定は2024年9月末、それを「2026年度中」に変更していた

2023年10月に関西電力が示した搬出計画では、2024年に再処理工場が完成することを前提に「2026年度から県外に搬出する」としていた。搬出先は、六ケ所村の再処理工場の他に、▼再処理の実証研究を行うフランス ▼2030年頃の操業を目指す中間貯蔵施設(場所は未確定) の2カ所が示されていた。

しかし、フランスへの搬出は「再処理の実証研究」を目的にしていて、2027年からの3年間で搬出量が200トンと少ない。一方の中間貯蔵施設への搬出は2030年頃としているものの、現時点で施設の場所も決まっていない。
つまり、搬出時期や搬出量ともに“計画の要”となっていた「六ケ所村の再処理工場」の完成が延期したことで、関電の搬出計画は頓挫したのだ。

県から「不退転の覚悟」を求められたことを報道陣に問われた水田事業本部長は、「重く受け止めている。社長を含む関係役員と相談し、どう対処していくか考えたい。再処理工場は見直しになるが、使用済みMOX燃料の搬出や中間貯蔵についてはしっかり進めている」と強調した。

繰り返される延期・方針変更

関電が示した「使用済み核燃料の搬出計画」は、「2023年末までに中間貯蔵施設の県外候補地を示せなければ、40年を超える原発の稼働を停止する」とした県との約束の“代替案”で、県や地元自治体は、この計画をもって40年を超える原発の稼働継続に「合意」した。
この経緯を考えると、関電の信頼性に大きな疑問符がつくことになった。

関電の「使用済み核燃料の県外搬出」をめぐっては、これまでも幾度となく「延期」や「方針変更」がされているが、この間も県内には使用済み核燃料がたまり続け、貯蔵可能量はリミットに近づいている。

2024年7月末現在の各原発の運転状況では、使用済み核燃料の貯蔵プールが満杯になるまで、美浜原発と大飯原発が約5年、高浜原発は約3年の見込みで、このまま県外搬出が進まなければ貯蔵プールが一杯になり、原発の運転を止めざるをえない事態も生じている。

貯蔵プールが一杯になれば原発の運転を止めざるをえない
貯蔵プールが一杯になれば原発の運転を止めざるをえない

一方で、関西電力が新設を検討している「乾式貯蔵施設」が建設されれば、物理的な貯蔵量は増えるが、関電は現在のところ、貯蔵プールから乾式貯蔵施設に使用済み核燃料を移しても、プールの空いたスペースは使わず「貯蔵容量は増やさない」と県に約束している。
さらに、この乾式貯蔵施設の建設には、国の審査の他に地元自治体の同意も必要で、今回の「使用済み核燃料の県外搬出計画」の遅れが同意に向けた今後の議論にも影響を与えそうだ。

原発には、立地地域の多くの人や企業、予算が関わっている。関西電力は、立地自治体の発言を重く受け止め、「確実に実行できる搬出計画」の提示が求められている。

(福井テレビ)

この記事に載せきれなかった画像を一覧でご覧いただけます。 ギャラリーページはこちら(13枚)
福井テレビ
福井テレビ

福井の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。