2008年の北京大会以来、16年ぶりに男女が揃って五輪への自力出場を果たしたバレーボール。

男女の主将としてチームの先頭に立って戦った石川祐希、古賀紗理那の2人にパリ大会について話を聞いた。

バレーボールが大好きな古賀紗理那として

女子主将の古賀紗理那は今大会を最後に現役引退すると発表してパリ五輪に臨んだ。

現役最後の試合となったケニア戦の試合後インタビューでは

古賀:
今日はキャプテンとか、そういうのは考えずに、バレーボールが大好きな古賀紗理那として戦いました。

そう語った古賀。彼女は競技人生の集大成に何を感じたのか。

競技人生の最後にたどり着いた“原点回帰”

小学2年でバレーボールを始めた古賀。当時はうまくなるのが楽しくてうれしくて、ひたすら練習を頑張っていたという。

ところが、16歳で代表入りし、東京五輪後にキャプテンを任されると、いつしか“楽しみ”は“責任”へと変化していた。

楽しみは主将としての責任に変化
楽しみは主将としての責任に変化
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古賀:
キャプテンとなってからはチームが勝つためにどうしよう、得点を決めるためにどうしようとか、そっちの思考ばかりでした。

ポーランドとブラジルに連敗を喫したことで最終戦のケニア戦を前に予選リーグ突破は極めて困難な状況となっていた今大会。

最後となったコート上での躍動
最後となったコート上での躍動

それでもわずかな可能性に望みをつなぐ大一番を前に古賀はある思いを抱く。

古賀:
この試合が最後になるかもしれないって思った時に、小学校2年生から始めたバレーボールを最後楽しんでやりたいなっていう気持ちが最初に出てきました。

20年間のバレーボール人生の集大成で古賀がたどり着いた境地。それは自分が大好きなバレーボールを楽しむことだった。

原点に立ち返った古賀はこの試合チーム最多の16得点を挙げ、ストレート勝ちに貢献。

バレーを楽しみ、チームを励ます古賀
バレーを楽しみ、チームを励ます古賀

それでも翌日に行われた試合でアメリカがフランスを破ったことで、日本は決勝トーナメントへ進出できる上位8チームに入ることができず、2大会連続の予選敗退という形で古賀の競技人生は幕を閉じた。

どんなにつらくても私にはバレーボールが必要だった

ケニア戦から2週間あまり、引退会見で「バレーボールとは自分にとってどんな存在だったか」と問われ「バレーボールは、やっと自分はここまでできるようになったと思っても、またさらに新しい課題をくれる、成長するために必要だった大切なものだと思っています」。そう答えた古賀。

引退会見
引退会見

最後に自らのバレーボール人生を振り返ってもらうと

古賀:
つらかったことの方がたくさん。楽しかったことなんて本当ちょっとだと思っています。
でも、その悔しかった経験とかつらかった経験って、めちゃくちゃ私にとってはプラスで、そういう思いをしないためにどうすればいいかとかたくさん考えさせられることがありました。

「成功だけが全てじゃない」「悔しい思いをして成長出来た」
「成功だけが全てじゃない」「悔しい思いをして成長出来た」

古賀:
成功だけが全てじゃないと私は思っているので、全然負けてもいいし、失敗してもいいって、ずっと思っていたので、負けて成長、悔しい思いをして成長することもたくさんあったので、そこはつらかったけど経験できてよかったと思っています。

“相手に負けた”のではなく“自分たちが勝てなかった”

一方、男子主将の石川祐希が語ったパリ五輪の戦いはバレーボールを楽しんで終わることができたという古賀とは対照的だった。

メダルの期待を背負った石川祐希
メダルの期待を背負った石川祐希

昨年のワールドカップで準優勝を果たし、ネーションズリーグでも2年連続でメダルを獲得した日本は、史上最高の世界ランキング2位につけていた。52年ぶりのメダル獲得が期待された今大会、ランキング11位のドイツと対戦した初戦では第1セットを奪われるも、日本は第2、第3セットを連取した。

第4セットも熾烈なシーソーゲームとなるが、日本は一度マッチポイントを握る。

しかしそこからドイツに3連続得点を許し、このセットを失うと、第5セットも最初の2点を連取され、追いつくことなく黒星を喫した。

石川:
マッチポイントを握ったところから最後取れずにやられてしまったので、ああいう負け方をしたことが後々響いていました。

パリ五輪を振り返る石川
パリ五輪を振り返る石川

1勝2敗で予選リーグを終えたものの、全体8位に入りかろうじて準々決勝に駒を進めた日本だったが、準々決勝の相手は予選リーグを1位で勝ち上がったイタリア。

それでも日本は2セットを連取すると第3セットもイタリアに一度も先行されることなくマッチポイントを迎える。

最後の1点の重みを知った男子代表
最後の1点の重みを知った男子代表

ところがこの勝機を逃すと、そこからイタリアが世界選手権王者の底力を見せ、第3セットを奪い返すと、僅差で第4、第5セットを連取。日本は東京大会に続いて準々決勝敗退という結果で戦いを終えることとなった。

石川:
相手にやられたというよりも、自分たちで逃したっていうイメージが強いですね。

最後の1点を取りきるために足りなかったものは何だったのか、それを模索していた石川はパリ五輪である鮮烈な光景を目の当たりにする。

大スターから学んだ“自分たちに足りなかったもの”

石川:
勝負が決まる1点の時にカリー選手は笑っていて…。

石川に衝撃を与えたのはパリ五輪・男子バスケットボール準決勝。

5連覇を目指していたアメリカはセルビアに最大17点のリードを許す苦しい試合を強いられていた。第4クオーター終盤にようやく逆転するものの、試合時間8秒を残しリードはわずか2点。

この場面でNBA歴代1位のフリースロー成功率(91.0%)を誇るステフィン・カリーがフリースローを獲得する。

2本とも沈めれば勝利が大きく近づく一方、2本とも外すことがあれば相手が3ポイントシュートを決めた場合、敗退となる可能性もある状況。それでもカリーは笑みを浮かべていたのだ。

土壇場で笑みを浮かべるカリー
土壇場で笑みを浮かべるカリー

石川:
それを見た時に余裕というか、楽しんでるというか、それがすごいなと思いました。僕たちのイタリア戦を振り返るとあの場面を心の底から楽しめている自分はいませんでした。
ダメだなって思っていた自分もいたので自分を信じることは一つ大事でした。

「自分を信じる事が大事」
「自分を信じる事が大事」

極限の舞台だからこそ平常心を保ち自分自身を信じる。

世界的なスーパースターのパフォーマンスを目の当たりにして得た学びを糧に石川は4年後のリベンジを誓う。

石川:
『ロサンゼルスこそは』という思いは強いですし、オリンピックの借りはオリンピックでしか返せない。やり続ける。世界一を目指し続けるというスタンスです。
あと4年待って下さい。

石川祐希は笑顔でこう語りインタビューを締めくくった。

『すぽると!』8月31日(土)24時35分 9月1日(日)23時15分フジテレビ系列で放送中