アメリカのプロスポーツチームはすべて「独立採算」だ。チームの収益で運営している。

魅力あるチームになって、ファンやスポンサーなどを獲得できなければ脱落し、最後は消えていく運命にある。だから「メリットがあること」「やるべきこと」は即座に決断し、実行するのだ。

NPBは「安全運転」が第一

驚くべき情報化は、そうしたMLB球団が置かれた競争環境の下で進展した。

NPBの場合、広島カープを除く11球団には資本で連結する「親会社」がある。赤字になれば親会社が補填してくれる。

球団経営者の多くは「親会社からの出向」であり「安全運転」が第一になる。

親会社も「リスクのあることをしてほしくない」という意識が強い。だから「情報化」のイノベーションが進展しない。

日米の「情報格差」は、こうした「経営環境」の違いによって生まれていると言ってよいだろう。

スタットキャストによる異次元の進化

2015年、MLBは、従来の「PITCHf/x」に代わって、傘下のMLBアドバンスト・メディア社が開発した「スタットキャスト」を導入し、Gamedayで表示することとした。

「スタットキャスト」は、ミサイルの追尾システムを応用した弾道測定器「トラックマン」と、複数の光学カメラを組み合わせた画像解析システム「トラキャブ」によって、試合中の選手の動きやボールの位置・方向・速度などのデータを瞬時に記録する。

「PITCHf/x」が主として投球に関するデータの記録にとどまったのに対し、「スタットキャスト」は投球、打撃、守備に関するボール、選手の動きを記録することができる。

さらにそれらの膨大なデータを瞬時に分析、数値化した。打者の打球速度が何キロで、打球角度は何度で、飛距離は何メートルだったかが、その打席の直後に表示されるようになったのだ。