元日の能登半島地震によって甚大な液状化被害があった石川県内灘町の西荒屋地区。住宅への被害は内灘町の中では最も多い約300棟に及んだ。行政による調査も時間がかかり復旧に向けた道筋はいまだ明らかになっていない。地震から8カ月が経とうとしている今、住民は何を思っているのだろうか、取材した。

甚大な液状化被害の内灘町の今

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タバコや生活用品を扱う南ストア。店の奥に入ると地面に大きなひび割れが。さらに建物を支える柱は沈み、天井が落ちてしまったと言う。店主の南さんは「この柱がやられたら終わりだ」と肩を落とす。

液状化とは地震による強い衝撃で地盤全体がドロドロの液体のような状態になる現象だ。西荒屋地区はかほく潟の北にあり、内灘砂丘から干拓地側にゆるく傾斜した土地。高台から流れる地下水は地表から地下に1メートル前後と、比較的高い位置にあり、液状化が起こりやすい条件がそろっていた。

地震と液状化で大きく形が変わった店。南さんはこの店の廃業を決めた。理由はこの地区にほとんど人がいないため、このままでは店を再開してもどうしようも無いからだという。と言うのも、西荒屋地区に住む住民は地震前の270世帯から2割ほどに減った。

地盤改良で自宅は無事だったけど…

地震後も西荒屋地区に住む太田和弘さん。太田さんの自宅は2001年に完成した。その際、地下の水位が高いことがわかっていたので、地盤改良したという。このおかげで自宅は無事。しかし、敷地には液状化の爪痕があった。

太田さん:
液状化でここに亀裂があるんですけれど、土地がそのまま後ろにずれた。隣の畑も庭にあがれる
状態じゃないんです。

地震前は1メートルほど下にあった隣の畑が、隆起したと言う。地盤改良をしていなかった部分の土地が、液状化で横方向にずれ込み、その結果、敷地内を走る水道管が切断されてしまった。地震の発生から8カ月がたとうとする中、工事業者が見つからず断水が続いている。太田さんは、3日に一度、地域の小学校に水を汲みに行っているという。

「人間ってよくできている…慣れちゃった」

ようやく復旧のめどが立った太田さんは「あと少し我慢しようかなと。8カ月我慢したんだからもう10日ほど我慢しようかな」と話していた。8カ月続く水が無い生活。それでも太田さんは「人間ってよくできているもので慣れちゃうんです」と言うのだ。

それでも太田さんは別の面で懸念している。近所のコミュニティがなくなっているからだ。液状化で近所の人たちは皆、この地を離れてしまった。太田さんは、被害が甚大な奥能登6つの市と町と同じように行政にも動いてほしいと願う。内灘はそれに比べるとワンテンポ遅れているのが歯がゆいという。

8月25日。内灘町で地震発生後2度目の地区説明会があった。内灘町の川口町長は、今後の液状化対策工事に向け、10月中に国の調査結果を発表すると説明した。川口町長は「過去にあった側方流動(内灘町の液状化現象)で、内灘町は全国でも一番ひどい状況だと聞いている」と述べ、「大変な思いをしている住民が1日も早く復興復旧できるように頑張っていきたい」と改めて復興への決意を示していた。

説明会に参加した太田さん。町側の説明に「今日現在では、これで納得しましたって感じ。何年かかるかわからん、来年、再来年の話ではなく10年15年後の話。今やっと動いたって感じやし行政が」と話していた。

今後、どのような暮らしを築いていけるのか。西荒屋地区の住民たちは今も生活再建に向けた確かな道筋を見い出せずにいる。

(石川テレビ)

石川テレビ
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