行き着く先は、「人間はすべて平等だ」という思想である。

また、20世紀の後半になって、インターネットなどのITが飛躍的に進歩すると、さまざまな情報が地域集団横断的に行き交うことになり、地理的に遠く離れた集団の成員が、個々の行動様式や思考パターンにおいて、同一の文化を共有することが可能になった。
そうなると、これまでマイノリティとして息を潜めるように生きてきた人たちも地域横断的につながることができるので、全体として無視できない勢力となる。
まさにその象徴といえるのが、1990年代以降からの、LGBTを排斥するな、とする世界的なうねりだろう。
個々の地域集団ではマイノリティであったLGBTの人たちが地域横断的につながったことで、世の中のマジョリティとの「平等」を強く意識するようになったことがその原動力となっているであろうことは想像に難くない。
つまり、昨今の「多様性ムーブメント」の要諦は、「人間はすべて平等であるのだから、あらゆるカテゴリー間の差異に優劣などつけず、すべてを等価だと考えよう」という話なのである。

池田清彦
生物学者。現在、早稲田大学名誉教授、山梨大学名誉教授。高尾599ミュージアムの名誉館長。生物学分野のほか、科学哲学、環境問題、生き方論など、幅広い分野に関する著書がある。著書に『平等バカ』『専門家の大罪』『驚きの「リアル進化論」』(すべて小社)、『人間は老いを克服できない』(角川新書)、『「頭がいい」に騙されるな』(宝島社新書)、『老後は上機嫌』(共著:ちくま新書)など多数