「年率換算で27.8%マイナス」
今日発表された今年4~6月期のGDP=実質国内総生産は、戦後最大の下げ幅となった。

マイナスの理由は、いわずと知れた新型コロナウイルスだ。感染拡大を阻止するために「経済を人為的に止めた」(西村経済担当相)ことが、あらゆる経済活動に急ブレーキをかけた。
GDPの半分以上を占める個人消費は、外出自粛や店舗の休業で急減。また、先行き不透明感から企業は設備投資を先送りし、世界が同時に経済を止めたため輸出も大きく減少した。
世界的な感染拡大で、欧米主要国もマイナス幅は軒並み最悪。では今後日本経済と株価はどうなるか?マネックス証券チーフ・ストラテジストの広木隆さんに聞いた。

「GDPは過去の話」市場は7~9月V字回復期待
――きょうの日経平均株価は反落したものの、“戦後最悪のGDP”のわりには市場の受け止めは冷静でしたね。
広木氏:
8月に入って1500円程度上がり先週は2万3千円台を回復したこともあって、利益確定の売りが出やすい水準だったと思いますので、反落は予想の範囲内ですね。
市場がGDPの数字を冷静に受け止めた理由は2つです。まず、「もう終わってしまった過去の話」だということ。もう1つはマイナス幅が予想の範囲内であったことです。アメリカのGDPも32.9%のマイナスでしたが、むしろ株価は8月から上昇していましたね。
――「7~9月期は4、5月を底に持ち直す」との予想は、市場ではどう見ていますか?
広木氏:
市場には7~9月はV字回復になるという期待感があります。実際にデータでみても、総務省が発表した6月の家計調査では、2人以上世帯の実質消費は大幅に回復していて、コロナ前の水準まで戻っています。GDPの大半は家計の消費ですから、消費が戻っているのは市場にとってV字回復の根拠になりますね。
4~6月期は消費をしたくても出来なくて、一時的に需要が止まっていただけなので、その反動で消費が大きく戻るのは自明の理です。アメリカや中国もそうですし、7~9月期はV字回復になると市場が思うのは当然です。
感染拡大に市場はテレビのワイドショーより冷静
――7月以降も感染者数は増加を続けていますが、感染拡大について市場ではどう見ているのでしょうか?
広木氏:
市場の受け止めはテレビのワイドショーなどに比べれば冷静です。感染者数が増えているのは検査数を増やしているからであって、実際に重症者や死者が爆発的に増えているわけでは無いと。医療現場にもまだ余裕があり、医療崩壊にも繋がっていないから、政府は緊急事態宣言を発出せずに経済活動を維持している。感染者の増加はもちろん注意すべきことですが、経済再開を止めるほどの状況では無いということですね。

――今後の株価の動きをどう見ていますか?
広木氏:
いま2万3千円台半ばを目指す動きになっていますが、その理由は4~6月期の企業決算の内容が3社に2社が赤字であっても、当初想定した落ち込みよりは悪くないと市場が考えているからです。実際、トヨタ自動車が、世界の自動車メーカーが軒並み赤字になる中でも黒字を維持しているとか、ソニーや任天堂の好決算とか、各企業が予想以上に奮闘しています。
リーマンショックの後は上場企業全体で赤字になりましたが、今回は全体で赤字になっておらず、企業業績に対する打撃はそんなに大きくないと市場はみています。企業業績が思ったより悪くなかったことを確認できたので、株価は戻っているのですね。
秋の決算発表と大統領選で2万5千円を目指す展開
――そうなると秋に向けて、株価は上昇基調にあると予想されますか。
広木氏:
アメリカでは議会が夏休みなので、景気対策で合意できない状況にありますが、9月のレイバー・デー明けには合意するでしょう。そうなるとアメリカの株高につられて、日経平均株価も2万4千円ぐらいになるだろうと思います。そして7~9月の決算が発表され、アメリカ大統領選挙が本格化する秋には、2万5千円を目指す展開だろうと思います。
――ありがとうございました。

西村経済再生相はきょうの会見で、感染の状況や経済の動向を注意深く見ながら、予備費を含め引き続き財政出動を行っていく考えを示した。また、デジタル化や新しいビジネスの支援を行い、社会変革を進めて経済回復につなげる姿勢を強調した。
果たして政府の景気の舵取りはうまくいくのか?個人消費や企業業績は、市場の期待通りに進むのか、今後注目だ。
【執筆:フジテレビ 解説委員 鈴木款】