自由気ままな子どもたちに、いつも親はハラハラドキドキ、時にもやもや。
「笑った!困った!」…。でもウチの子はどうしてこんなことするんだろう。その行動の裏には、知られざる“子どものココロ”が隠されているはず。
元気なココロちゃんとマナブくんきょうだいの育児に追われる小木(こぎ)さん一家に聞こえてきたのは、こんなお話。
「スーパーで半額シールのついた商品を『ママ、これ好きだよね?』と持ってきたり、トイレで『ママ、うんち出た~!?』と大声で確認されたり…思わず赤面!」
そんなこと大声で言っちゃダメ~!と叫びたくなるようなことを、サラリと言っちゃう子どもたち。
これまでにも、家族の中だけの“秘密ごと”をお外で喋っちゃったり、お下品な言葉を大声で言っちゃう子どもゴコロについては考えてきたけれど、「秘密にしてってお願いしたのに!」「そんな言葉は使っちゃダメ!」というものでないという困りどころが…。
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そんな悩めるパパママはどうしたらいいの?育児に役立つ“子育て心理学”を発信している公認心理師・佐藤めぐみさんにお話を聞いた。
小学3、4年生までは“TPO”は難しい?
――言ってはいけないわけではないけれど、ちょっと恥ずかしい事を大声で…この理由は?
大人からすると「恥ずかしいからここで言わないで~」ということを、子どもが公の場で言ってしまうのは、まだ「他者目線」を獲得していないからです。
私たちがなぜ恥ずかしいと思うのかと言えば、他者の視線が気になるからです。私たち大人は様々な場面で「あの人はどう思うか」を考えますが、小さい子はまだその視点が成長過程なので、そのとき思ったことをどこでも言ってしまうのです。
――どのくらいの年齢になると、「言っちゃダメなこと」がわかるようになる?
その場で言っていいことかを判断して自らブレーキをかけるのは「客観的な状況判断」と「気持ちの抑制」という難題をクリアすることになるので、小学1、2年生でもまだまだ難しいと言えます。
小学校の半ば以降になると客観的なものの見方が備わり、だいぶ上手になってくると思います。とはいえ、大人でも言っちゃダメなことを言っちゃう人、気持ちの抑制が苦手な人はいますが…。
「相手の気持ちを考えなさい」とか「あの子どう思ったと思う?」のような言葉は、成長過程以上の話をしてしまっているので、実は小さい子には伝わりにくいんです。少なくとも、小学校入学前までの時期は「時と場合に応じて発言を変える」という発達段階の手前にいますので、その認識のもとで対応していくことが大事だと思います。
――トイレで「ママ、うんち出た?」。たとえばこの質問にはどう切り返すのが良いの?
こんなことを聞かれたらとき恥ずかしい思いでいっぱいですが、まだまだ人目を気にすることができない年齢なんだと思って「あとで教えてあげる」などと返すのがいいのではと思います。
そもそもこう聞きたくなるのも、ドアの外で待っていることへの心細さがあるのかもしれません。「次の質問は?」「別のお話しようか」とテーマを変えつつも会話を続けてあげるのも、気持ちがほぐれていいのではないでしょうか。
「信号無視だ!」ハラハラしちゃう大声にはこう対応
子どもたちが、パパママからしたら「恥ずかしい!」と思ってしまうようなことを口にしてしまうのは「こう言ったら、他人からこう思われるかも」という視点が未発達なため。
「そんな事言ったら、ママ恥ずかしいでしょ!」と怒るよりも、子どもの発言にうまく付き合ってあげるのが良いそうだ。
ちなみに「あの人、横断歩道を赤信号なのに渡ってるよ!」「あの人、行列に横入りした!いけないんだよね?」などと大声で確認されるのも、大人からするとハラハラしてしまう“子どもあるある”。こんな時どうしたらいいのかについても聞いてみた。
――ルールやマナー的には正しいけれど「余計な事は言わないで~」と言いたくなる場面ではどうしたらいい?
私の相談室でもこのようなお悩みを聞くことはありますね。見ず知らずの人に指摘してしまったり、園などでお友だちに「○○しちゃダメなんだよ」と注意してしまうこともあります。ルールを守っていること自体はいいことなのですが、それを周囲にも強く求めてしまうんです。
間違ったことを言っているわけではないので「横入りはいけないんだよね?」→「そうだね」のように肯定してあげることは大切ですが、もっと大事なのは、ルールに対する許容を少し緩めてあげることです。
これまでの相談事例を踏まえて言えるのは、親が子どもに同じようにルールを教えても同じ度合いで響くわけではないということ。ルールが染み渡り過ぎてしまう子とそうでない子がいて、もともとの性格がその度合に影響していると考えています。見ず知らずの人に指摘してしまうのはおそらく性格的にきちっとしているお子さんで、さらに多くの場合、親御さんも真摯に子育てに向き合っている方だと思います。「まじめ×まじめコンビ」ということですね。
そういう場合、引くアプローチが有効の場合が多いです。「この子は十分過ぎるくらい浸透するタイプだから、少し緩めても大丈夫」と捉え、「あれしなさい、これしなさい」を引っ込めて、子どもの自主性に任せてみると、自らきちんと動く、他者への対応はやわらかくなる、という変化が起こることがよくあります。自分とお子さんが「まじめ×まじめコンビだな」と思った方は、少し肩の力を抜くくらいがちょうどいいかもしれません。
また、相手に聞こえるくらい大きな声で指摘してしまうこともあると思います。子どもは間違ったことを言っているわけではない、でも穏便にやり過ごしたい…そんな時にとっさに「大きい声で言わないで」と注意したりすると「間違ってないもん」と話が大きくなってしまうこともあります。子どもが大きな声で指摘しはじめたら、耳に手を当てるポーズをとって“内緒話スタイル”で話してもらうようにすることなどは、すぐにできる工夫かと思います。
(解説:佐藤めぐみ/公認心理師)
英・レスター大学大学院修士号取得・オランダ心理学会認定心理士。欧米で学んだ心理学を日本の育児で取り入れやすい形にしたポジ育メソッドを考案。アメブロの「ちょっと子育て心理学」(http://ameblo.jp/la-camomille/)にて発信中。
(漫画:さいとうひさし)