自由気ままな子どもたちに、いつも親はハラハラドキドキ、時にもやもや。
「笑った!困った!」…でもウチの子はどうしてこんなことするんだろう。その行動の裏には、知られざる“子どものココロ”が隠されているはず。
今回、元気なココロちゃんとマナブくんきょうだいの育児に追われる小木(こぎ)さん一家に寄せられたのは、こんなエピソード。
「この間、パパがママに怒られてた!」「ママの体重は〇〇キロなんだよ!」
見たこと聞いたことをお友達やご近所さんに全て喋っちゃう…おしゃべりな我が子に困ってしまう!
「これは秘密だよ!」「内緒にしてね!」とお願いしても、気がついたら広まっているちょっと恥ずかしいおうち情報。
SNSでは「子どものおしゃべりで、先生が我が家の秘密を知っている…」という悲鳴も聞こえてきたが…パパママが秘密にしてほしい事をついつい喋っちゃう子どもゴコロって、どうして?
育児に役立つ“子育て心理学”を発信している公認心理師・佐藤めぐみさんにお話を聞いた。
――「おしゃべり」になっちゃう子どもゴコロの理由は?
これまで、このコーナーで様々な子供のココロについて解説してきましたが、今回の「何でもしゃべっちゃう」というお悩みは、おそらく育児をしていたら100%経験する“苦笑い”であり、まさに育児のあるあるだと思います。
まず年齢についてですが、3歳くらいの子はおしゃべりがだいぶ上手になってきていますが、それでもまだまだ親子間でのコミュニケーションが中心ですし、語彙も多くはありません。なので、年齢的には幼稚園のあたりからが顕著だと思います。
思わず言ってしまう理由としては、基本的には「まだ言っていいことと控えるべきことの境界が分からない」、これが一番でしょう。
お家のお菓子は食べていいけれど、お店のお菓子は食べてはいけない。
お家の冷蔵庫は開けていいけれど、お友達のお家の冷蔵庫は開けてはいけない。
こんな風に「お家の中では○○してOK、だけどお外ではダメ」ということはたくさんあり、それをしつけを通して教えていきますが、そもそもなぜ教えるのかと言えば、その境界がまだ分かっていないからです。
小さい子ほど、1つのルールをあそこにもここにも当てはめる傾向があります。その方がシンプルですし、理解しやすいからです。そのため「お家では~~だけど、お外では~~」という条件や例外つきのルールというのは、基本的に子どもが理解するのが難しいので、今回のおしゃべりの件も単純にTPOが理解できていないことが大きな理由です。
あとは、友だちとおしゃべりしているときに、みんなが注目してくれそうな話題は、子どもとしては話さずにはいられません。「ママがすっごい大きいおならをした」みたいなトピックは格好の餌食になってしまうのです。
――「これは喋っちゃダメかな…」ということがわかるようになるのはいつ?
人の立場に立った物の見方ができるようになるのは、小学校に入ってからなので、それ以前は、「これを言ったらママがどんな風に思うか」と考えるのはまだまだ難しい年頃です。
ただ、小学生になったらできるのかというと、まだそうでもありません。この時期は友達の重要性が高まってきている時期ですが、実際にはまだまだ家庭とのつながりや親への依存度が高いので、友達同士の会話の中にパパ、ママ、きょうだい、ペットなど、家族の話が出ることが多く、境界線なくぺらぺらと話してしまう可能性は大きいです。
思春期になると、友達が第一で親と距離を置きたがる時期なので、自然と友達との話題に親のエピソードが出る頻度が減ってきます。
そう考えると、なんでもしゃべられてしまうのは困りものだけれど、友達といるときも心のどこかでパパやママを思い出してくれている証と思えば、少し心穏やかになるのではないでしょうか。
ついつい「おしゃべり」になってしまう子どもゴコロの正体は、「これは話してもOK」の境目がまだまだ曖昧だから。
幼稚園くらいの年齢の子どもたちはおしゃべりが多くなる一方で、「これを話したらママがどう思うかな…」と考えられるようになるのは小学生以降。「おうちではいいけど、お外ではダメだよ!」というルールをじっくりと学んでいく時期の子どもたちは、どうしても「おしゃべり」になってしまうものなのだ。
「内緒だよ」は効果なし?
お友達に話したい「面白おうち情報」がいっぱい…というのは子どもにとって楽しいに違いないが、パパママにとっては「いつどこで誰が聞いているか…」とハラハラドキドキしてしまう…子どもたちに「これは内緒だよ!」を分かってほしいけれど、どうすればいいの?
――子どもの「おしゃべり」に親はどうするべき?
ママが子どもに「内緒にしてね」「これは秘密だよ」と言っても、それを丸ごと友達に言ってしまうこともよくあるものです。たとえば、「ママの体重は〇〇キロなんだよ。でもこれ内緒だって。ママが言ってた」のように。
基本的に、子どもに家庭内の話を「これは言っちゃダメだよ」と言っても、その効力は期待しない方がいいです。上記のとおり、まだその境目やTPOが分かっていない以上、言わずにいてくれたらラッキーというくらいに捉えておくのがいいと思います。
あとは、内容的に見て、避けられるものと避けられないものがあるように思います。たとえば、
「パパはいびきがすごいんだよ」「だからパパとママは別の部屋に寝てるんだ」
このような見たままの状況に関するおしゃべりは、子ども目線で捉えた事実を口にしてしまうため、なかなか避けるのは難しいかなと思います。
一方、
「あのお店のケーキ、いまいちだよね。あ、でもこれ内緒だよ」
こういう主観的な会話は、子どもに言わなければ、子どもも話すことはないので避けることができます。パパやママが内心思っている不満や愚痴、これらは自分の中、もしくは大人だけの会話に留めておくことをおすすめします。
子ども経由で他のご家族の意外な事実を知るのは、育児のあるあるですが、お互い様とも言えるので、ある程度は「仕方ない」とあきらめるのも肝心。あと10年も経てば、もう話題にもしてもらえないかも……と思えば、ちょっとおおらかに構えられるかもしれません。
「聞きコミ PRIME online」では皆様からの「育児あるある」エピソード投稿をお待ちしています。
・「もういらない」と言ったから代わりに食べたおやつ。「やっぱり食べる!」と言われて大慌て…同じものを用意しても「さっきのがいい!」と泣かれて大苦戦!
・無くしたと思っていたスマホを冷蔵庫の中から発見!なんでここに入れちゃうの!?
などなど、あなたの「育児あるある」に隠された子どもたちの気持ちを探ってみませんか?
※入力された内容は記事で紹介させて頂くことがございます。
※改めて取材をさせて頂く場合もございます。
(解説:佐藤めぐみ/公認心理師)
英・レスター大学大学院修士号取得・オランダ心理学会認定心理士。欧米で学んだ心理学を日本の育児で取り入れやすい形にしたポジ育メソッドを考案。アメブロの「ちょっと子育て心理学」(http://ameblo.jp/la-camomille/)にて発信中。
(漫画:さいとうひさし)