7月の記録的な大雨で集落に大量の土砂が流れ込んだ山形・酒田市の北青沢では、8月15日から大型の重機が入り土砂の撤去作業がようやく始まった。自宅を失った住民たちは今、一つ一つ決断しながら前へ進んでいる。

重機で土砂撤去「諦められない…」

7月の記録的な大雨で荒瀬川がはん濫するなどして大きな被害があった酒田市。

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中でも北青沢の集落では、沢の濁流と一緒に流れ込んだ大量の土砂で、住宅の1階部分が埋まってしまった。

8月9日、集落につながる国道344号が復旧。そして大雨から3週間がたった8月15日、大型の重機が集落に入り、ようやく土砂と流木の撤去が始まった。

道路に1メートルほどたまった土砂を重機で撤去している様子
道路に1メートルほどたまった土砂を重機で撤去している様子

初日の15日は、重機に引っかからないよう電線などを切断しながら、道路に積もった土砂を慎重に撤去した。土砂が撤去された道路を見てみると、1メートルほど土砂がたまっていたことがわかる。

妹の家に身を寄せながら、毎日自宅の片づけをしているという丸藤百美子さんは、道路の土砂が撤去されれば「なんとか片づけも進むと思うので、ありがたい」と話す。

丸藤さんは、住むことができなくなったわが家を見るたびに複雑な気持ちになるという。

丸藤百美子さん:
毎日ここに来るのが悲しくて。住めなくなるのが一番悲しい。少しでも片づけてくれれば諦めもつくが、なかなか諦められない。

きれいに片付けてリスタートしたい

大雨の後、7月31日にさくらんぼテレビが初めてこの集落に入った時に出会った遠田憲子さんは、深刻な被害状況を目の当たりにし、「私はここで生まれ育ったのでずっといたい気持ちはあるが、『これからも災害など起きた時に住めない』と思った」と語っていた。

15日、あらためて自宅を訪ねると、泥がたまっていた家の中はきれいに片づけられ、床もはがされていた。「車が入れないので、重いものは今やっと運び出せる状態」だと話す。

自宅の片づけを始めることができたのは、大雨から2週間以上が経ったお盆休みに入ってからで、親戚や息子の友人たちの力も借りて進めているという。

遠田憲子さん:
思い出に浸りながら。42年間ここで生まれ育ったので、いい意味でリスタートできるように、しっかりと片づけて出ていきたい。

酒田市が提供する市営住宅を仮住まいとして、新たな生活を始めた遠田さん。少しずつ気持ちの整理はついてきたと言うが、今気になっていることは「住宅の敷地内にたまった土砂がどうなるか」だ。

遠田さんは、集落を出るとしても「きれいに片付けた上で」と考えているため、人力での撤去が困難な部分は「重機に入ってもらわないと」と話し、敷地内の土砂を眺めた。

敷地内の土砂撤去は時間かかる見込み

自宅の中にまで大量の土砂が入り込んだことから、すでに「住所変更届」を市に提出したという元副自治会長の相蘇隆治さんは、「個人個人の被害の状況が違う。土砂の量なども関係するので、敷地の土砂撤去は個人個人の対応になるそう」と説明する。

青沢自治会元副自治会長・相蘇隆治さん:
家の解体・土砂の撤去、費用の面で国がどのぐらい補助してくれるのか。それが心配だが、あんまり先を考えてもどうしようもない。

酒田市によると、道路や川にたまった土砂を優先的に撤去した後、住宅の敷地内についても住民に聞き取りをした上で撤去するとしている。

工事関係者に聞いたところ、道路の土砂の撤去は今週中~来週中には終わるのではないかと話していた。

北青沢では、ほとんどの住民が集落から親戚の家などに出てしまっていることから、住民へのニーズの聞き取り、確認、立ち合いが必要ということで、敷地内の土砂の撤去には少し時間がかかるもようだ。

(さくらんぼテレビ)

さくらんぼテレビ
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