“映える”写真が撮れるとSNSで話題になり、有名アイドルグループがミュージックビデオのロケ地として使用したことからも人気が高まっている“ひんやりスポット”が、福井・あわら市にある。福井テレビの佐々木拓哉アナウンサーが取材した。
神秘的な“ひんやりスポット”
福井・あわら市の「金津創作の森」で、案内してくれる地元ガイドと待ち合わせをした。手元の温度計を見てみると、37.3度。何もしなくても汗が噴き出してくる暑さだ。
この記事の画像(14枚)あわら市細呂木地区創成会・酒井敏雄会長が待ち合わせ場所にやってきた。「はい、これライトとヘルメット」と出会って早々、次々と道具を手渡された。さっそくヘルメットを装着し、炎天下の中、酒井会長の案内で山道を歩き始めた。
思わず「きついな」と漏らしながら息を切らして登ること20分。
到着したのは、山の中にぽっかりと空いた小さな洞窟。中からは冷気が漏れ出してくる。
「詳しいことは中でお話しますけど、30メートルのトンネルになっています。じゃあ準備がよろしければご案内します」と酒井さん。
一歩足を踏み入れると、暗闇が広がっている。ただ、外とは空気がガラッと変わり、洞窟の奥からは涼しい風が流れてくる。「気を付けてね。下滑るから」と言われ、少しためらいながらも、ライトの光を頼りに洞窟の中を注意深く進んで行く。
すると、奥の方にうっすらと光が差し込む場所が見えてきた。
見上げてみると岩の壁がそびえ立っていた。コケむした岩肌、そして木々の間をすり抜け、暗闇に日の光が差し込む様子は、まるで神殿の中にいるかのような、神秘的な空間が広がっていた。
涼しい理由は“緑のカーテン”
この場所は「宮谷石切場跡」。全体が岩山になっていて、明治20年頃から昭和20年代後半まで、石を切り出す場所として活用されていた。
この「宮谷石」は加工しやすく、火に強いのが特徴で、家の基礎をつくる建築資材として使われていたほか、地元の人たちは火鉢に加工して利用することもあった。その後、コンクリートが普及し需要が減ったため、廃坑となったが、約70年が経った今でも当時の様子がそのまま残されている。
手元の温度計を見てみると、21度。出発地点と約16度低くなっている。まるで別の地方に来たようだ。「もう外に出るのが嫌になるでしょ」と酒井さん。
なぜここまで気温が違うのかというと「ここは土の中で、岩山をくり抜いた状態なのがひとつの要因なのと、木の葉が洞窟を覆い緑のカーテンで閉じたような感じになっているので、冷気が保たれている」という。つまり、緑がある時期ならではの気温差だ。
Aぇ! groupのMV撮影のロケ地に
5年ほど前まで、この場所はあまり知られていなかったが、近年、SNSを中心に幻想的な美しさが話題になった。
最近では、アイドルグループ「Aぇ! group」がミュージックビデオのロケ地とし利用したこともあり、さらに注目度が高まった。
今では県内外から年間1000人ほどの観光客が訪れ、結婚式の「前撮り」をする人もいるという。
酒井さんは「多くの人にこの場所を見てもらいたいとは思うが、一挙に多くはならないでほしい。じっくりと、何万年もかかってできた石切り場なので、ゆっくりと永く付き合っていただけるような場になってほしい」と話す。
あわら市の「宮谷石切場跡」は、人の営みと自然の力が織りなす、壮大なひんやりスポットだった。
【宮谷石切場跡】
▼私有地のため体験には事前予約が必要
▼利用日:木曜から日曜(10人以上の団体は火・水も予約可能)
▼参加料金:1人2500円(小学生1000円)
▼アクセス:金津創作の森美術館から徒歩で約20分
▼申し込み:ウェブサイト「ぶらっと細呂木」から
▼問い合わせ先:細呂木地区創成会 090-4069-0126
(福井テレビ)