8月2日、政府の地震調査委員会は近畿から北陸にかけての沿岸や沖合でM7以上の地震を引き起こす恐れがある活断層が、25か所に上るとする調査結果を公表した。この結果を元に近畿・北陸の自治体は防災計画の見直しを進めていくことになる。
日本海側の活断層“長期評価”を公表
地震調査委員会が示したのは、兵庫県北方沖から新潟県上越地方沖にかけての海域を走る活断層が引き起こす地震の長期評価だ。これによると、M7以上の地震を引き起こす恐れがある長さ20km以上の活断層や活断層帯は、合わせて25か所。最も長い活断層は、元日の能登半島地震を引き起こしたとみられる「能登半島北岸断層帯」で、長さは約94キロに上り、推定される地震の規模はM7.8から8.1程度とされている。
この記事の画像(5枚)これについて、地震学が専門の金沢大学、平松良浩教授は「能登半島北岸沖合の海底活断層は、1月1日のM7.6の地震で既に活動していると考えられますので、同じ断層帯がまたすぐに1月1日のような大地震を起こすことは可能性としては極めて低いと考えられます。あまり過剰に地震の大きさについて反応する必要はないのではと思います」と冷静に受けとめるよう促す。
元日の能登半島地震には間に合わず
一方で、今後気を付けるべき断層については「石川県に近いもの、羽咋沖東断層、羽咋沖西断層、内灘沖断層だったり、七尾湾東方断層帯、飯田海脚南縁断層といった富山湾の海域の活断層というものが特に影響が大きいのではと考えます」と話す。
地震調査委員会では全国の海域活断層について長期評価を進めている。2022年には九州・中国地方の日本海側でM7以上の地震を起こす恐れのある活断層について、将来の地震発生確率などを公表していた。しかし能登半島沖の調査結果の公表は、元日の地震には間に合わなかった。これについて平松教授は「2007年能登半島地震や新潟県中越沖地震など、沿岸部の活断層が活動して陸域に大きな被害をもたらす地震がしばしば起こっておりますので、そういう観点からは、もう少し早く取りまとめが国としてできたのではないか」と指摘する。
地震調査委員会の平田直名委員長は「一般市民の立場から言えば『もうちょっと早くやって頂きたい』ということだと思う。正直に言うと。能登半島地震、M7.6の正月の地震が起きる前にこの情報が調査委員会としてきちんと出ていれば、防災には役に立ったと思うがこれが我々の今の実力だったということで、しょうがないかなと私は思います」と公表のタイミングは致し方なかったという見解を示した。
石川県の地震想定はM7.0だった
石川県は地域防災計画に使われる地震の被害想定を1998年以降、四半世紀以上にわたって見直してこなかった。これまでの想定はM7.0、死者7人、建物全壊120棟、避難者数は2781人。県内の各市町はこの想定を基に避難所の整備や備蓄などを進めてきた。しかし実際には想定を大きく上回る大地震が起こってしまった。県はこれまで見直しを行わなかった理由について「国の長期評価が出揃っていない」ことを挙げていた。今回、その長期評価がようやく出たことになる。
石川県では、地震被害想定の見直し作業を進めているが、作業メンバーの一員である平松教授は「国の長期評価が出されれば、そういう知見を取り入れるべきところは取り入れるという方針で進めていく事が確認されているので、石川県に及ぼす影響が大きなものについては新たに取り入れることになると思います」と話す。今後、防災計画の再建を進めてほしいと思う一方で、想定の見直しが能登半島地震の前に行われていれば、備えが変わっていたはずだという無念はどうしても拭えない。
(石川テレビ)