長崎県内21市町を巡りながら知られざる街の魅力を発掘し、おすすめのグルメを紹介する。長崎県時津町で、新たな特産品として注目を集めているのが「キクラゲ」だ。栄養価が高く、多様な料理に活用できるこの食材が町の新しい産業として育ちつつある。その魅力と可能性を探る。

麺が見えないほどのキクラゲが…

栄養豊富なキクラゲが、ラーメンの具材からヘルシーな一品まで、時津町の食卓を彩っている。

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町内のラーメン店「屋台みそラーメン市」では、地元産のキクラゲをふんだんに使ったラーメンが人気を集めている。店主の木下雄市郎さんは「時津にこんなおいしいキクラゲがあるということが全国に広まってくれたらうれしい。同時にうちのラーメンも」と、キクラゲの魅力とともに自店の味にも自信を見せる。

栄養価の高さが魅力

キクラゲはキノコの一種で、クラゲのようなコリコリした食感が特徴だ。日本食品機能分析研究所によると、ビタミンDが豊富で、カルシウムは牛乳以上、食物繊維もキャベツを上回るという。

この栄養価の高さに着目したのが、「かわはら農園」の川原貴光さんだ。しかし中華料理以外に使われる機会は少なく、低価格の中国産におされ国内での生産量はわずかで、長崎県内は時津町を除くと1.7トンだ(2023年度)。

川原さんは6年前からキクラゲの栽培を始めた。きっかけは意外にも子どもたちの柔道だった。「うちの子どもたちに柔道をさせていたんですが、減量が成長期にかわいそうだったので、何かいい食材がないかな、カロリーが無くてと探していてキクラゲがいっぱい出てきて、なんじゃこれというところから始まった」と川原さんは語る。

こだわりの栽培方法

川原さんの農園では、約110平方メートルの農業用ハウスでキクラゲを育てている。1500の菌床があり、10人がかりで200kgを収穫する日もあるという。

この日は特別に川原さんがすすめるキクラゲ料理をつくってもらった。

キクラゲの刺身
キクラゲの刺身

準備してもらったのは「キクラゲの刺身」と「キクラゲの天ぷら」だ。

KTN記者:刺身はごりっという食感がしたがぷりぷりっとしつつもシャキシャキ感もあってとてもおいしい。キクラゲの天ぷらもサクッという食感とキクラゲのぷりぷりという食感の2種類を楽しめておいしい

おいしいキクラゲをつくりたいという川原さんには2つのこだわりがある。1つ目は水だ。川原さんは「山水がせっかくあるので、ミネラルたっぷりの山水を全部にかけている」と説明する。

天井からの水はキクラゲの生育に適した60~80%の湿度に保つ。

もう1つが無農薬栽培だ。このため小さな虫がついていたり病気になったりすることもあるが、安全性の高い製品を提供できる。

さらに収穫したキクラゲは丸一日太陽の光を浴びせる。「天日に干すことでビタミンDが30倍以上増える」そうだ。こうしたこだわりが「きみみちゃん」というブランド名で親しまれる高品質なキクラゲを生み出している。

地域の新産業として期待が高まる

キクラゲ栽培は、力仕事が少なく、年齢に関わらず始められることから、地域の新たな産業として注目を集めている。時津町きくらげ生産者組合のメンバー20人のうち、半数以上が70歳を超えているという。

時津町きくらげ生産者組合・川原組合長は「特別難しい作業ではないので、90代でもできる仕事かなと思っています。また、社会的立場の弱い方、例えば身体障害者の方とか、知的障害者の方、こういった方々でもできる作業だと思うので普及していこうかと思う」と、キクラゲ栽培の可能性を語る。

「時津町きくらげ生産者組合」は地元の製薬会社と共同で手軽に料理に使えるキクラゲを粉末状にしたパウダーも開発した。

時津町もキクラゲをふるさと納税の返礼品に加えたり、SNSで栽培風景を投稿したりとPRに力を入れている。川原組合長は「まずは栄養価を知っていただいたうえでの活用を見出してもらいたい。全国的にもあまり国産のキクラゲがないかと思うが、まずは時津町からの発信ということで時津=キクラゲという代名詞になれればいいかと思う」と、将来への展望を語った。

栄養価が高く、多様な料理に活用できるキクラゲ。

時津町の新たな特産品として、そして地域の新産業として、その可能性は大きく広がっている。キクラゲを通じて、町の活性化と新たな雇用創出が期待される中、時津町の挑戦は始まったばかりだ。

こんなまちメモ<時津町>

長崎市や長与町にと隣り合う時津町は、人口約2万9000人でベッドタウンになっている。大型の商業施設や娯楽施設、工場なども多く立ち並ぶ。

(テレビ長崎)

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