米軍普天間基地の移設先とされる名護市・大浦湾。200を超える絶滅危惧種が生息するホープスポット ”希望の海”を次の世代に残そうと埋め立ての中止を訴える人々がいる。

変わりゆく故郷の海

名護市瀬嵩(せだけ)に住む渡具知武清(67)さんは、「幼年期の時によく海に潜って魚を獲り、それをおやつ代わりにしていた場所だからね」と語り、幼いころから生活の一部だった大浦湾の光景が変わりつつあることに胸を痛めている。

名護市瀬嵩に住む渡具知武清さん:
ああいうのを見ていると、常にもう心が荒んでしまうからこれ以上進んでほしくないというのが一番の願いですね

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普天間基地の移設先とされる大浦湾を含む名護市・辺野古の海域。政府は軟弱地盤が見つかった大浦湾側の地盤改良工事のため、設計変更申請を代執行という形で自ら承認。2024年7月、新たな護岸工事に向けた杭打ちの試験作業を開始した。県が求める事前協議にも応じず、8月にも本格的な工事に着手するとしている。

名護市瀬嵩に住む渡具知武清さん:
この自然が無くなってしまって、そこに人たちが住めなくなってしまうんじゃないかってことがすごく心配です

沖縄防衛局が移設工事前に実施した環境アセスの調査では、辺野古・大浦湾一帯にジュゴンや262の絶滅危惧種を含む5300種余りの生き物の生息が確認されている。

世界有数の”希望の海”

2023年、沖縄テレビのカメラが大浦湾の海中を撮影した際には、絶滅危惧種のアオサンゴなどさまざまな生き物たちの姿が見られた。ジュゴンの保護などに取り組む吉川秀樹さんも、その豊かな生態系を守るべきだと訴える。

ジュゴン保護キャンペーン(国際担当) 吉川秀樹さん:
生物多様性という側面において、とても貴重な場所である。そこが認められて、ホープスポットというふうに認定されました

ホープスポットとは、アメリカのNGOが世界中のさまざまな海域の中から「保護すべき希望の海」を認定するもので、日本で初めて認められたのが辺野古・大浦湾一帯である。

ジュゴン保護キャンペーン(国際担当) 吉川秀樹さん:
皮肉にも沖縄防衛局が調査をして、(大浦湾に)5300種の生物がいるうち262種がジュゴンであったり、アオサンゴであったりが絶滅危惧種になっている。この環境が世界的にも見て、沿岸一帯海域が環境を保護するに値する価値があるということです

大浦湾一帯は国の天然記念物ジュゴンの餌である海藻の藻場が広がり、貴重な生息場所として知られていた。しかし海での工事が始まって以降、生息が確認されていた3頭のうち1頭が姿を消し、2019年には別の1頭が今帰仁(なきじん)村の港で死んでいるのが見つかった。

2020年にはジュゴンの鳴き声と思われる音が防衛局の機材で確認されるが、国の環境監視等委員会は2024年5月、「3年間の調査でジュゴンが生息する実態はない」と結論付けた。

ジュゴン保護キャンペーン(国際担当) 吉川秀樹さん:
世界に誇れる生物多様性というのが失われていくということ。こういう豊かな海が埋め立てられてしまうことが、本当に情けないし怒りを感じますしので、ぜひ止めていきたいと思っています

さまざまな意見がある それでも・・・

「生まれ育った故郷の海を残したい」渡具知さんは毎週土曜日、ろうそくを灯して工事の中止を訴える「ピースキャンドル」を行っている。

名護市瀬嵩に住む渡具知武清さん:
毎週のことだが一人でも関心を持ってもらえればということで、大きい声で喉が枯れるくらい言っているけどなかなかです。それでもやっぱりやり続ける意味は強いし、こういう人たちがいるよということを少しでもわかってくれるだろうと

普天間基地の辺野古移設にさまざまな意見があることは知っているし理解できる。それでも基地に頼らずに平和な世界を目指すべきだと渡具知さんは訴える。

名護市瀬嵩に住む渡具知武清さん:
武力で平和を守る、平和を作っていく考えの方の人たちもいるんだけどやっぱり私たちはこういうことをやって基地に頼らなくて、平和を集めるんだよということを見せなきゃならないからね

世界に誇る希望の海を軍事基地にしてはいけない。”希望の海!を守ろうと人々は、諦めることなく声を上げ続ける。

沖縄テレビ
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