福岡・中間市の保育園で、猛暑の中、5歳の園児が送迎バスに置き去りにされて死亡した事件から7月29日で3年。子どもを預かる現場では、きょうも命を守るための試行錯誤が続いている。

二重チェックで見落としを防ぐ

連日、続く“危険な暑さ”。熱中症警戒アラートが発表され、気象台は健康被害への厳重警戒を呼びかけている。

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福岡市のスイミングスクールでは、夏休みの子どもたちが練習に励んでいた。スクールに通う子どもたちが日々、利用するのが送迎バスだ。強い日差しが照りつけ、35度以上の猛暑が続く中、送迎バスを利用する子どもたちの命を守るため、関係者が行っているルーティーンがある。

スクール到着後、バスのドライバーは車内に子どもが取り残されていないか、必ず“目視”で確認する。さらに、その旨を事務所に報告。

ドライバーの報告を受けてスイミングスクール担当者が、送迎バスの中に子どもがいないか、再度“もう1人の目”でも確認する二重のチェックを徹底しているのだ。

「たまに座席の後ろや下に潜って遊んでいる子どもがいることもあるので…」とスクールの山住耕太さんは話す。

日陰でも車内は危険な状態になる

3年前の7月29日、中間市にある保育園の送迎バスで起きた園児置き去り死亡事件。

5歳だった倉掛冬生ちゃんが炎天下の駐車場に止められたバスの車内に約9時間にわたって取り残され、熱中症で亡くなった。

事故から約1カ月後(2023年8月28日)に行われた、JAFの実験では、“日なた”と“日陰”、それぞれでエンジンを停止した状態の車内温度がどのように変化するかを検証した。

実験開始20分、日なたの車は、車内温度が40度に到達。一方、日陰の車でも実験開始30分で車内が35度を超えた。日なたでも日陰でもエアコンが動いていないと非常に危険な状態になる。

子ども安全のため自腹で装置設置

相次ぐ死亡事故を受けて、2023年4月に国は、全国の通園バスに園児の置き去り防止装置を設置することを義務化している。

しかし保育園や幼稚園の送迎バス以外は義務化の対象外となるため、福岡市のスイミングスクールでは国からの補助金なしで置き去り防止装置を自腹で設置し、対応している。

スクールの山住耕太さんは「少しでも安心して乗っていただけるように安全を“お金で買う”というかたちで、装置を付けているが、どうしてもヒューマンエラーがあるので、そうした数を少しでも減らせるように」と話す。

子供の安全を守るために…

通園バスの置き去り防止装置について、こども家庭庁は「2024年3月末の時点で、安全装置の設置状況が全国で100%に達する見込み」と説明している。

しかし子どもたちの安全が100%守られるわけではない。不具合や操作ミスなど、最後は人間の問題となるのだ。

子どもを預かる現場では命を守るための試行錯誤は、きょうも続いている。

(テレビ西日本)

テレビ西日本
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