『山形花笠まつり』に欠かせない「花笠」。実は今、この花笠に異変が起きている。編み手や原材料の不足により、買いたくても手に入らない“花笠不足”となっている。祭りが直前に迫る中、花笠を取り扱う店では電話がひっきりなしに鳴っていた。
ズラリと並ぶはずの花笠が…
山形市の民芸品店「尚美堂」では、『山形花笠まつり』で使われる花笠の実に9割以上を作っている。祭りの開幕まであと2週間余りのこの日、例年であれば店内にズラリと並ぶはずの花笠がなかった。
この記事の画像(9枚)尚美堂・逸見良昭社長によると、例年置かれていたのは踊り用の「尺一寸」という花笠で、外での販売もしていたが「今年は全くない」のだという。
品薄状態の中、“花笠に付ける花”を求めて客がやってきた。
花を買いに来た客:
古い花を外して、付けて、修理しようと思って
尚美堂・逸見良昭社長:
いつもは花笠を買ってもらうんだが、花笠がないので花だけ
花を買いに来た客:
なかなか調達できない。古くなったものから少しずつ買い替えていたんですけど
店には、花笠を買いたいという客からの電話がひっきりなしに掛かってきていた。支払いの対応中にも何度も電話が鳴り、逸見社長は対応に追われていた。
尚美堂・逸見良昭社長:
今は「花笠が入荷したか」ということで。団体さんはお断りしているが、ある分は1枚2枚はお譲りしている
花笠作りを襲う“三重苦”
花笠の品薄の原因は、「編み手」と「材料」の不足だ。
尚美堂では、飯豊町中津川で手作りされた笠に花を付けるなどして花笠を作っている。しかし、この「笠」の仕入れられる量が年々大きく減っている。
仕入れ量減少の一番大きな要因は、高齢化による編み手の引退だという。飯豊町の笠の編み手は2023年まで11人いたが、2024年は6人と半数近くにまで減ってしまった。
さらに、笠の材料として県内で栽培されている「スゲ」という植物も、栽培面積が年々減少している。
そこに追い打ちをかけたのが、2023年の「猛暑」だ。
2024年の花笠には、2023年に刈り取って乾燥させたスゲが使われる。しかし2023年のスゲは猛暑の影響からか非常に細く、笠を作れる太さにまで育たなかった。
スゲの幅が広ければ本数は使わないが、幅が細いと本数を使う。笠に使える太いスゲが2024年はほとんどなかったのだ。
「提供できないむなしさ」代替品も検討
編み手とスゲの不足で、2024年の花笠の製造数は、2023年の4000個から1000個減って3000個になり、店の一角には竹で作られた骨組みだけが並んでいた。
逸見社長は「本来であれば楽しみに参加しようとしているのに、花笠がないのは踊り手にしても寂しい。私たちの立場からしてみたら提供できないむなしさがある」と肩を落とす。
尚美堂では今、スゲとは異なる素材を使った代替品の試作も検討しているという。
尚美堂・逸見良昭社長:
担い手を育てる・代替えも考えていかなければならない。毎年、花笠を楽しみにしている人に、花笠だけは届け続けたい
尚美堂には、7月19日の時点ですでに在庫がないという。
パレードに出る人で花笠がないという人の中には、知り合いに借りるなどして対応するケースもあるようだ。
(さくらんぼテレビ)