開幕まで2週間を切ったパリオリンピックで活躍が期待される岩手県勢、北上市出身の競歩・高橋和生選手(28)。実は大谷翔平選手ともゆかりがある高橋選手は、周囲への感謝を胸に初の夢舞台に挑む。
本気の走りでもついて行けない「歩き」
競歩のパリオリンピック日本代表、北上市出身の高橋和生選手。(※高橋和生選手の「高」は「はしご高」)2024年7月15日時点は東京を拠点としていて、どんな練習が行われているのか取材した。

この日は最寄り駅から練習場所まで歩いて向かっていた。取材に同行した井上智晶アナウンサーはついて行くのに息が上がっているが、高橋選手からしたら散歩くらいの速度だという。
東京の不動産会社「ADワークスグループ」に所属している高橋選手は、都内の荒川の河川敷でトレーニングを重ね、パリへの切符をつかんだ。

高橋選手は「(五輪は)夢のまた夢の舞台だったので、本当に出られることがなかなか信じられない部分も多かったが、だんだんと自分の中で受け入れられるようになってきて、結果を出さなければという責任感を感じながら練習している」と語る。

競歩は文字通り「歩く」競技だが、まずそのスピードに驚かされる。
実際にトップスピードで歩いてもらうと、井上アナウンサーが本気で走ってもついていけないほど速かった。
ーー今のでどれくらい?
競歩パリ五輪代表・高橋和生選手:
9割くらい。ルールを守れる範囲だったら、ラストあのぐらいガーッといく。

高橋選手の20km競歩の自己ベストは1時間19分1秒。
平均時速は15.2kmとなり、いわゆる「ママチャリ」並みの速さで20kmを完走するペースだ。
先輩からの励ましと共に
今回が初のオリンピックとなる高橋選手。
小学生時代は野球少年で、2学年上に今をときめくメジャーリーガー・大谷翔平選手がいる奥州市のチームでプレーしていた。

「一緒に頑張って野球をやった選手が世界で活躍している姿を見ると、自分も世界で活躍したいと思う」と大谷選手からいい影響を受けていると話す。
その後陸上に専念し花巻北高校に進んだ高橋選手が、指導者の勧めで競歩を始めたのは高校1年の冬だった。めきめきと力をつけ、3年のインターハイ・5000メートル競歩では全国3位に輝いた。
その花巻北高校の先輩には、同じ競歩でリオ・東京と2度のオリンピックに出場し、6月引退した高橋英輝さんがいる。2024年2月に神戸で開かれたオリンピックの選考レースには、英輝さんとともに出場した。しかし英輝さんは途中棄権し、2人揃っての代表入りとはならなかった。

「選考レース後、英輝さんから『和生ならリレーの代表狙えるぞ』という励ましの言葉をもらって、頑張れたかなと思う。気持ちを切り替えて人を応援できるのが英輝さんの人柄だと思うし、英輝さんのパリへの思いも僕に託してくれたと思う」と話す。
男女混合リレーの難しさ…
高橋選手はパリ大会から正式種目となった男女混合リレーに出場する。マラソンと同じ42.195kmを、男女2人で約10kmずつ交互に歩く種目だ。

競歩パリ五輪代表・高橋和生選手:
10kmを歩いて、女子が歩く間の45分ぐらいを休憩はさんで、もう1本10kmということで体が休みかけてる固まってきているなかで、もう1本トップスピードで歩かなきゃいけないところは、対策は本当に必要。
競歩は、両足が同時に地面から離れたりひざが曲がったりするとルール違反となり、警告3つで時間のペナルティーを受け、警告4つで失格となる。

本番に向けて、高橋選手は自身のフォームの最終チェックに余念がない。
競歩パリ五輪代表・高橋和生選手:
(警告)0枚でゴールし切ることが、一番プレッシャーなく思い切ってスピード上げられるので、フォームは非常に重要。
多くの人が支える中パリ五輪へ
練習では、会社の同僚が結成した特別チームが給水や動画撮影などのサポートをしている。

ADワークスグループ同期・星野里奈さんは「世界で通用する人だと思っているので、いつも通り楽しんで歩いてきてほしい」と応援している。

高橋選手は「金メダルを何としても持って帰りたいと思うし、応援してくださる方々に笑って喜んでいただけるような結果を届けたい」と意気込みを語る。
支えてくれる多くの人への思いを胸に、高橋選手は7月27日に決戦の地へと出発する。
(岩手めんこいテレビ)