毎年のように、日本各地で大雨による浸水被害が起きている。だが大きな被害の原因が、必ずしも大きな川とは限らない。むしろ小さい川や用水路こそ危険なのだ。その理由と注意点を子育て防災アドバイザーの髙良綾乃がまとめた。
小さい川が危ない理由
2022年に静岡市清水区に大きな被害をもたらした巴川流域の河川も、2023年6月に沼津市原地区で約300棟もの浸水被害を出した沼川も、どちらも川幅が100ｍ近くあるような大きな川ではない。
しかし一度氾濫を起こすと、こんなにも大きな被害をもたらすのはなぜだろうか。
水位が上がるのが早い
小さい川は川幅も狭く、そもそものキャパシティが少ないため、油断していると、あれよあれよという間に増水してしまう。
その水があふれて市街地に流れ込んだり、市街地に降った雨で道路が川のようになったりするのが「氾濫」だ。
「氾濫」には2種類ある。川の水が街中に流れ込む「外水氾濫」と、街に降った雨がたまってしまう「内水氾濫」だ。
■外水氾濫
川の土手が決壊したり、土手を乗り越えて水があふれたりして、川の水が市街地に流れ込むのが外水氾濫。
川の水は一気に流れ込むため、平坦な土地でも濁流が起きやすく、歩行者は足をとられて危険だ。
水は土砂を含んでいるため、氾濫後も土砂や汚泥が蓄積して復旧に時間がかかる。
■内水氾濫
一方、内水氾濫は市街地に降った雨の排水が追いつかず、道路や建物が水につかってしまう状態だ。
特に都市部では、土地の多くがアスファルトやコンクリートで覆われているため、雨水の浸透能力が低く、振った雨水はそのまま下水道や河川に流れ込む。
内水氾濫が起きやすい地域では、市街地にたまった雨水をすみやかに河川に排水するために「樋管（ひかん）」という排水扉の開閉を行う。
多く排水するためにはなるべく長時間、樋管を開けておく必要がある。だが川の水位が上昇すると、水が排水路を逆流してしまうため、そうなる前に樋管を閉じなくてはならない。
小さい川は水位が上がるのが早いため、開閉のタイミングの見極めが非常に難しいのだ。
樋管の開閉以外にも、排水ポンプ車などを使って川に排水することもある。
樋管にせよ排水ポンプ車にせよ、市街地を内水氾濫から守るために、自治体職員や消防団、水防団、地元の防災担当者のみなさんが、暴風雨の中、危険と隣り合わせに作業してくれているということを忘れてはならない。
合流する先の大河川も増水
市街地の水を無事に排水できたとしても、まだ安心できない。
小さな川は大概は大きな川の支流のため、いずれは本流に合流する。しかしながら、その本流もいくつもの支流の水を引き受けて、水位が上昇しているのだ。
ちなみに、伊豆半島を流れる全長46kmの一級河川「狩野川」は、流域面積852平方㎞（6市3町）にも及ぶ。
途中、狩野川放水路（伊豆の国市）へ一部の水を逃がしながらも、その流域の雨水をすべて引き受けて駿河湾に流れ込んでいるのだ。
本流の水位が上がると、支流からの流れがせき止められ、行き場を失った水が逆流して支流の堤防を決壊させるなどの現象がおきることがある。
これを「バックウォーター現象」と言う。
実際に2022年の清水区でも、巴川の支流でこのバックウォーター現象が発生し、大きな浸水被害を出している。
このように、小さな川の運命は、合流先の川の状況に左右されてしまうのだ。
（テレビ静岡）
